見出し画像

【4】迷求空間〜フラット・シティとランドスケープ・アーバニズム

人間を含めた生物の暮らす場所が温暖化等を起因とする自然災害に脅かされる中、気候変動に対する具体的な対策として、都市や土木、建築の変革が求められている。
「都市は高密度の建物、交通インフラ、開発、それに伴う混雑、汚染などの影響、さらに様々な形の社会的ストレスで満たされている。」おり、ランドスケープは、人間に「公園、緑道、街路樹、遊歩道、庭といった形で、都市化の悪影響からの一時的な非難と安らぎの場を提供するもの…」※5 とみなされてきた。
現在は、緑や水辺を整備するだけでなく、その地域の生物多様性を担保し、生態系の一部となること、そこに人が介在し、賑わいや出会いの場となること、自然と人間のアクティビティが風景となり得る場所が重要とされている。
ニューヨーク市のザ・ハイラインは「都市のやすらぎの場所」を提供するだけでなく、都市環境に合ったニューヨークに自生する植物を取り入れ、鳥や虫などの小動物の生育環境を整えたグリーン・インフラとして機能する。つまり、人間の経済活動環境と動植物の生育環境を統合したエコシステムそのものをデザインしようとする野心的な試みで、廃線となった貨物列車の高架は「インフラ」の壮大な読替えによって誕生した。

離散的都市であるフラット・シティにおけるランドスケープは「(自然の)環境システムと(エンジニア化された)インフラのシステムとの間に起こる統合、融合、そして流動的な交換といった作用を促す。」※5

具体例として、富山市の常願寺川砂防施設や東山円筒分水槽などがあり、どちらも人間がそこに安全に暮すために整備されたものだが、自然との調和と生態系の保護を両立させながら都市に水辺の風景を作り出している。また、日本の里山文化においては田畑などの食料生産の風景として「フード・スケープ」の発展が考えられ、私たちの健康と暮らしを支えている第一次産業をより身近にさせる可能性がある。

※5ランドスケープ・アーバニズム 著者:チャールズ・ウォルドハイム 訳:岡昌史(2010年12月)

Illustration by Genta Inoue


最後まで読んで頂きありがとうございます!あなたのサポートが執筆の活力です。応援よろしくお願いします。