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MaaSは私たちにどのような影響を与えるのか

私の住む愛知県は自動車大国と呼ばれ、自動車の保有台数が多い。
国交省の平成30年3月31日現在のデータによると、
登録者数は東京都の310万台を上回る340万台で、全国一位である。
トヨタ自動車を中心に自動車産業の存在感の大きいこの地域で、自動車での移動が住民にとって重要な移動になっていることは確かである。

東京から来た知人に言わせると、名古屋市は
「外で歩いている人は全然いないのに、道路は混んでいる」という印象だそうだ。

数年前からCASEやMaaSといった言葉を耳にすることが多くなった。
MaaS(Mobility as a Service)とは、ドアツードアの移動に対して複数の移動方法(鉄道、バス、カーシェアリングなど)の中から最適な経路検索、
決済、環境への影響度合いの低い移動手段を選んだ場合の割引、などのサービスを一つのアプリで受けられるものと考えると分かりやすい。

名古屋市のような街で、MaaSが取り入れられるとしたら、
「自動車以外の手段がないので、仕方なく自動車で移動している」という人々に対して、
鉄道、バス、カーシェアリング、自転車、キックボード、乗り合いサービスなどの移動方法をMaaSアプリで提供し、
ドアツードアの移動を実現するということだろう。
自動車の稼働率については、東京などでは、自動車は完全に「遊休資産」になっており、稼働率は1~2%だそうだ。

名古屋市郊外に住む私からすると、駅まで(から)のラストワンマイルこそが、MaaSに解決してほしい課題となる。
駅までのラストワンマイルの移動手段がないと、家族単位での移動などにおいては自転車を使うわけにもいかず、結局は車での移動となる。

このようなニーズを満たすためにカーシェアリングや乗り合いサービスが考えられる。
これらが充実すれば、名古屋市街地まで鉄道を使わずにたどり着けるという可能性も出てくる。
乗り合いサービスやバスの充実は、輸送力という観点から見ても、交通渋滞の緩和につながるだろう。

とはいえ、まだまだカーシェアリングや乗り合いサービスなどは地方郊外には行き届いていない。
私の場合でも、最寄のカーシェアリングサービスの駐車場は隣駅周辺で自宅から5kmほどの距離がある。
現状はどこの地方郊外も同じようなもので、暮らしの中で実感することは少ないと思われる。

一方で、積極的にMaaS実装に向け進んでいる企業もある。

国内では、東急グループはMaaSに向けて実証実験を開始している。
https://www.bcnretail.com/market/detail/20200116_154551.html
このサービスでは、電車、バス、電動自転車の乗り放題(移動)を映画・食事と組み合わせたサブスクプランを提供する予定だ。
*現在は新型コロナウィルスの影響で休止

このようなサブスクプランでは、プランの組み合わせによっては、
グループが持っている、駅に隣接する商業施設などの集客も期待できる。
鉄道会社としては、運賃以外の部分でも利益を増やす狙いである。
ユーザーからしても、乗り放題によるコストの見える化やバスや電動自転車によって、細かな移動も定額の中でできるというメリットがある。


海外では、私が昨夏米国デトロイトを訪れ驚いたのは、市中を入る電動キックボードの多さだ。

トップの写真は昨夏デトロイトで撮影したもの
Limeという会社の提供しているこのキックボードはスマートフォンのアプリで開錠・決済ができ、
乗り捨てが可能だ。
https://www.li.me/en-us/home
Limeは日本市場への参入も検討しているそうだ。
https://dime.jp/genre/815114/

MaaSは時間のかかる取り組みだと言える。
流行語のように、ブームになり消えていくものとしてとらえるのではなく、腰を据えて産官学で取り組んでいくべき課題だ。
特に民間が行っている日本の交通事業は、各々自社の利益を確保しながら取り組んでいかねばならず、データの共有など大胆な施策は打ちにくい。
その部分を指揮できるのは、やはり地方自治体や国ということになってくるだろう。

まずはMaaSを利用するコスト・利便性をユーザーが、自動車保有によるコスト・利便性と比較し、
メリットを感じてもらわなけらばならない。また、日用品のかさばる買い物などでAmazonのような定期便宅配サービスが利用者を増やすことも必要かもしれない。

MaaSが当たり前に利用される世の中になると、自動車の在り方も変わってくるだろう。
極端な話、これまで個人がお客さんだった自動車メーカーからすると、お客さんが変わることになる。
つまり、カーシェアリングや乗り合いサービスを提供する企業になる。
そうなると、自動車のニーズは現在の個人に対しての豊富なラインナップから二極化する。
一方はMaaS用の燃費が良く、安全で、広い車。
一方で、車を好きな人、趣味としても保有したい人のための車。
その意味では、フェラーリやランボルギーニなどはMaaS時代でも変わらず、ブランドを維持できるのではないか。

今回、考察したのは先進国におけるMaaSについてである。
今後、人口増とさらなる経済発展が見込まれるインド洋沿岸のアフリカ・アジアの国々においてはこの限りではない。
現在、バイクの需要は2極化している。そのような国々においての生活の足としての需要と先進国における趣味的な意味の高性能を求める需要である。
かつての欧米や日本が経験したような、必需品としての自動車の需要(バイク→自動車)が豊かになるつれ高まっていくだろう。
つまり、豊富なラインナップを取りそろえ個人のニーズを満たしたものが勝者となる時代である。
しかし、そのような時代は欧米や日本のそれのように長くは続かないだろう。
これから大きく発展して国々では、MaaSを前提とした都市開発ができ、先進国でのMaaS事例から多くを学ぶことができる。
おそらく、現在の先進国の過渡期が大幅に短縮にされ、早々とMaaSが実現する社会がくるはずだ。

いずれにせよ、今後フィンランドやアメリカといった先行事例となっている国々がどのような結果を迎えるのかが非常に重要である。
MaaSの大枠の流れは世界を、各自治体の抱える個別の課題についてはローカルな交通サービス・自治体の動向を注視して追っていきたいと思う。

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