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モビリティの変化について②

前回の投稿に引き続き、モビリティ業界の変化について、関連書籍の未来予想図からズレが生じていないかを検証していく。

今回は、2019年に刊行された『モビリティ3.0』について中身をみていきたい。

本書は副題をディスラプターは誰だ?しているだけあって、既存のピラミッド型の自動車産業の業界図がビジネスモデルの変化に合わせて形を変えていくことを予期している。

本書でも前回の投稿で述べた『Beyond MaaS』同様、その筆頭はやはりGoogleだ。

本書でも、Google傘下のサイドウォークラボのトロントでの都市開発に注目している。

前述の通り、この計画は今年5月に頓挫したが、本書ではサイドウォークラボからスピンアウトしたCoordに大きな期待を寄せている。

CoordはワシントンD.C.、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴでは複数移動手段混合ルート検索アプリ「Multi Modal Router」を、さらにニューヨークとサンフランシスコでは、「Curb Explorer」というGoogleマップ上に路肩状況を色分けして表示されるアプリを提供している。

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トロントの都市計画と、これらのアプリによって、サイドウォークラボひいてはGoogleはあらゆう交通インフラを統合したプラットフォームの構築を目指している、と本書では述べられている。

2020年7月現在、Coordのホームページを見てみると、北米15都市でサービスを提供という記載があり、上述した本書の2018年の情報からはエリアを拡大しているようだ。

とはいえ、Google USAで検索をかけてみても、スピンアウトしたときが最大のニュースであることは、変わらないようで、検索のトップにはスピンアウトした際のものが並ぶ。

現時点では、シェアは拡大しつつあるが多大な効果はもたらしていないといったところだろう。


続いて本書では、コネクテッドカーの躍進にも大きく期待している。

車両に通信機能を持たせてクラウドや交通インフラなどといった“車の外側“とつなげた「コネクテッドカー」は、

V2X(Vehicle to X)と言われる新たな事業機会を生み出す。

具体的にV2Xには、4種類あり、

1 V2N Vehicle to Network 

車両とネットワークの通信。欧州では、カーナビの地図をクラウドから受信する際に利用される。

2 V2I Vehicle to Infrastructure 

車両と道路の連携。ETCが代表例。赤信号無視への警告や信号待ち時間の表示といった機能もある。

3 V2V Vehicle to Vehicle

車車間通信のこと。対応した車両間で、進行方向、速度、ブレーキ操作の情報を共有し、衝突や渋滞の緩和・軽減を行う。

4 V2P Vehicle to Pedestrian 

車両と歩行者の連携。スマートフォンやウェアラブルデバイスと車両が通信することで衝突リスクの回避を図る。


これらV2Xに対する本書の見方はこうだ。

・最も普及しつつあるのはV2Nである。

・V2N以外は、各自動車メーカー間の連携など課題が多く、方針が具体化していない。

・V2N技術を利用したeCall(緊急通報システム)が欧州で義務化され、日本でも実証実験が開始されている。

・テレマティクス自動車保険が登場し、運転特性に応じた保険料の設定が行われるようになった。

※eCallとは、事故等の発生時に迅速な救助を実現するためのサービスのことである。交通事故等でエアバックが作動したり、緊急速報ボタンが押されると、GPSによって位置情報と車両情報が発信されるようになっている。

さて、現在の状況ですが、eCallは日本でも今年(2020年)から義務化される予定です。


テレマティクス自動車保険については、トヨタ自動車とあいおいニッセイ同和損保が今年(2020年)3月からサービスの提供を開始しました。

“コネクテッド“については、本書で述べられた内容が実現していると言える。


本書では、EV家庭用充電(V2H,Vehicle to Home)についても、述べられている。

電気料金が安くなる時間帯の電力や、再生可能エネルギーで自家発電した電力を車載蓄電池に充電し、電気料金が高くなる時間帯に貯蔵しておいた電力を家庭で使用することで、充電時と使用時の電気料金の価格差によって電気料金を削減するビジネスモデル

NissanのリーフのLeaf to home systemが2017年7月時点で6,800台以上販売されていることが併せて述べられている。

現在もLeaf to homeは販売されており、プリウスPHVも同様のサービスを提供している。

電気自動車は動く蓄電池として、災害対策にもなる。補助金が出ているのは、その点もあるだろう。

個人的に気になるのは、リーフやプリウスPHVのユーザーが災害などの緊急時に、電気を独り占めせずに他の人のために使うことができるかということである。

補助金には、災害対策の側面もあるため、補助金を受ける限りはそのような姿勢でいて欲しいものである。


今回、内容を確認した『モビリティ3.0』は前回確認した『モビリティ2.0』より内容の精度は高いように思えた。やはり、先端の分野では変化が早いので、最新の情報を当たることが重要だと感じる。

随時最新情報を取り入れるように意識していただきたい。









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