cupcakes (250字)

画像1 ケーキを選んでいるあいだに人生が終わってしまった。たぶん私はこの精密な世界に現れた一瞬のバグで、最初から19歳の姿で登場し、設定されていた個人史に従って思考し、設定されていた恋人のためにケーキを選び、選びきれぬままおよそ2分間の生涯を終えた。ただの点滅みたいな現象だったんだと思う。でもありふれた言い方で本当に申し訳ないけど、誰の人生だって宇宙的尺度の前では一瞬の点滅にすぎない。惑星の画素数の範囲内できらめく無意味な光点。私たちが食べるはずだったカップケーキの電気的な甘さも。舌の上にひろがる幻も。 #小説