排気口の殺人

「排気口の殺人」の解説を、と頼まれどうにも断りづらかったものの有耶無耶に引き受けてしまった。では。

すいません、本当にすいません。
今日も遅刻してすいません。
という「排気口」の日常から物語は始まっていく。
1章稽古期間を経て、2章小屋入り期間になり、劇場では仕込み、舞台稽古やらで大忙しの駆け回る風体がよく描かれている。3章の千秋楽で物語は解決に向かってゆく。

1章の稽古期間では、話切り替わるごとに、遅刻する演出家、それに巻き込まれていく座組の面々の関係性ができる限り簡潔に書かれているにもかかわらず、登場人物11人の表情までもが見えるようであるのは本書が人気な理由ではないだろうか。

ここからはもちろん「排気口の殺人」を読んだ方からスワイプ願いたい。

2章の小屋入り期間に入ると、話は大きく不穏に傾いていく。まず舞台セットの打ち合わせが一切なされなかったことから素舞台に変更される話では、みなが下を向いて晩飯を考えるだけの時間が過ぎていった。という回想のみで済ませたのは、端的に奇跡と言ってもいいのではないだろうか。
暗転チェックの際、おしくらまんじゅうをしていたグループの1人が怪我をして、一時作業が中断する時の一言が終盤になって効いてくるとは誰も予想はできなかったであろう。
そして、ゲネプロが無事終了した時、事件は起きた。
役者は全員が1F舞台袖付近にいて、2F音響照明ルームには2人、受付スタッフが入口に2人。
全員集合となる時、1人だけ姿が見当たらないことに気がつく。
そう、劇場のひとつしかない楽屋の中、モニターでゲネを見たいんだと駄々をこねた演出家が殺されていた。しかもその楽屋は更衣室も兼ねているため内側からも鍵が掛けられるようになっている。もちろん鍵はかかっていたのだが。
このゲネ中に起きた密室殺人が大目玉である。
そして、この事件に挑んだのが死んだ演出家の友人でもあり、ミステリー小説にハマっている佐藤である。今回の座組の1人でもある彼がなぜ急に探偵モードになったのかはさまざまな解釈ができて読んでいてシンプルに楽しかったでしょうなと思う。

3章千秋楽では、読者のみなさまが読んだとおりであるため、今更能弁を垂れることは望ましくないだろう。ただここだけはフェアかアンフェアか分かれる部分であるのだが、あの照明の不具合と音響がアドリブで入れたバズーカの爆音を役者が全く把握できなかったのは単にバカだったからなのではないかと私の考えを残しておく。

ではまたなにかの機会でお目にかかれるらことを楽しみにしております。

佐藤暉


排気口新作公演『暗愁行尸』
【日時】
2024年8月
15日19:30
16日15:00 19:30
17日15:00 19:30
18日13:00 17:30
【料金】
予約3500円・当日4000円
18歳以下は予約・当日共に1000円
【場所】
荻窪小劇場

予約
https://shibai-engine.net/prism/webform.php?d=nk16bt7f

約90分 途中休憩無し

出演 
中村ボリ 佐藤暉 坂本ヤマト 倉里晴 坂本恕 
広野健至 東雲しの

作・演 菊地穂波
音響プラン Mana-T
音響操作 小山都市雄
照明   中村仁
宣伝美術 福西想人 ボリボリ先生
制作   排気口


読者への挑戦
ヒントはすべてでたかもしれないし、でてないかもしれない。しかし推理を推理することはできるのではないだろうか?だれがあの演出家を殺したのだ?

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