名前のない役者達『おきながら見るほうの夢』の話。

 相も変わらず稽古の日々である。排気口新作の台本は目算残り20~25ページの所まで書き上げた。ラストスパートには入っているがまだまだ難航中である。腰痛の症状も痛くなったり楽になったり毎日の様に振り回されている。指の痛みと腕の痛みはもう慣れているので完全に無視している。是非とも差し入れではロキソニンテープを下さい。

 鳥は飛べる形 空を飛べる形 僕らは空を飛べない形 腰痛の形 ロキソニンの即効性とアザラシ体操で 僕らは空を飛ばないかわり 月にロケットを飛ばす。プラモデルのジオラマで 兵隊にバンテリンを渡す 翼を持って生まれるよりも 僕はこの両手が好き

 オレ腰が痛てえから、オレ腰が痛てえから、キス キス キス キス キス キス キス 頭の先からキスの雨 これならお金もかからない

 うんざりなんてしてて当たり前 絶望なんてしてて当たり前 諦めるのは簡単だ 簡単すぎてつまらない イェー 腰は大丈夫

 8/11(木)-21(日)北池袋新生館シアターにて名前のない役者達『おきながら見るほうの夢』が公演される。役者主体で作る新しい演劇と銘を打たれた演劇祭の1プログラムだ。私は作・演出をしている。排気口では公演していない去年のワークショップ公演の台本を書き直した新作短篇だ。私の他にかるがも団地の藤田恭輔氏も別のチームで参加している。『ホワット・ア・ワンダフル・キャンプ』という作品だ。ゆるキャン△にハマっていた身からすれば、私もキャンプの話にすれば良かったと悔やんでいる。どちらも出来れば観て欲しい。どちらか片方しか観れないという方には、逆にどちらも観ないでクーラーの効いた部屋でフジロックの配信を観るという選択肢もある。あるというだけで推奨はしない。

 私はチームハックルベリーフィンという名前で15人の役者の方々と作品を作っている。チームハックルベリーフィンという名前は私が付けた。マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』に因んで。他の候補にマーク・フィッシャーの名著から取ってチーム資本主義リアリズムというのもあった。本当はたまたま家のスピーカーでハックルベリーフィンを聴いていたので、それで良いやと決めた。由来とか何でもよい。

 『おきながら見るほうの夢』は2020年の10月から12月までやった3ヶ月連続排気口ワークショップのラストは12月に書き下ろした台本を元にしている。話がそれるがこの3ヶ月連続ワークショップ毎月新作を書き下ろしていた。過去の自分を死ぬほど褒めてあげたい。

 さらに話が逸れるが、排気口のワークショップは毎回私が20分~25分の新作を書き下ろす。ハッキリ言ってワークショップの収益は全部排気口の公演予算に吸い込まれる。大体参加費も1000円なのでそこまで収益自体ない。往々にして割に合わないのだ。なのにそれでも書き下ろすには訳がある。

 排気口でワークショップをしようとなった昔、参考にしようと色んな演劇のワークショップに参加した。1つ2つを覗いてホントにガクなワークショップであった。まず最初のシアターゲームが嫌だった。知らない人とゲームなんてしたくないし、それがどう演劇に繋がるのか全く分からなかった。聞いても誰も説明してくれなかった。どこ行ってもシアターゲームばっかやるので煙草を吸いに行っていた。大体、シアターゲームでググれば沢山紹介されているので、それだったら友達とかとプライベートでやるわ。と、思っていた。そして即興をさせられる。それも嫌だった。即興なんて家で出来る。テーマを与えられて即興させられてコメント貰って「ありがとうございます」とか言ってる自分は端的に糞ダサい。と、思っていた。大体、そのコメントをする演出家(兼劇作家)のアンタはナンボのもんじゃいと思っていた。何でこっちばっか色々言われなきゃいけないんだ。何でこっちばっか汗流して動かないといけないんだと。アンタの力量を見せてみろと心の中で何度叫んだか。今思えば、私は演劇のワークショップを天下一武道会か何かと勘違いしていた。悪いのは私だ。ごめんなさい。(全て私個人の感想です。とかいう注釈つけなきゃいけないの家でジャック・ジョンソン聴いて4.4milk飲んでたいだけなのにバリめんどい!)

 しかし排気口でワークショップをやる場合は自分の嫌な事はやりたくなかった。自称役者としてワークショップに参加した時に感じた違和感を無視する事は出来ない。なので書き下ろすのである。ワークショップ毎に新作を書けば、参加者の方も今の私を面白いやつまらないと評価できる。つまらなかったら参加を辞退出来る。お金も当然かからない。お互いに同じ土俵に立つ。私は新作を書く。参加者はそこで判断できる。面白いと思ったら当日めちゃくちゃ楽しみにすればいいし、どんな役にしようか考えてもいい。つまらなかったらメール送って他のワークショップを探せばいい。なんてお手軽なんだ。わーい。と、このような理由なのです。台本を書く大変さ別ですが。

 勿論、シアターゲームもやらない。8時間や7時間で新作の台本を元に作品を作らないといけないのでそんな事をやっている暇がないのだ。他にもいい事がある。1つの作品を作るというシンプルな内容なので演技経験が無い方にも7時間で大体の演劇のさわりを体験できる。フラっとやってみたい気軽な感じで参加しても作品が立ち上がる充足を感じる事が出来る。ワークショップは場である。その場の仕組みだけを排気口が整えればいいのだ。単純に演劇をやりたい方にはうってつけなのだ。

 私は面白い時は面白いという。見ていてアイディアが浮かんだらこんなのはどう?とアドバイスする。台詞も変える。役名とか勝手に変えて良い。つまらない時は面白がり方が分からない時なので一緒に考える。こうしなさいとかあーしなさいとかもううんざりだよ。何が正しいか知らない。何が楽しいか知ってるのスタンスなのだ。なにより私は演技指導なんて出来ない。演技のノウハウは別のとこで学んで欲しい。自由にやればいい。ワークショップぐらい。

 と、いう訳でそんな排気口ワークショップで書き下ろされた台本を元に公演される8/11(木)-21(日)北池袋新生館シアター名前のない役者達『おきながら見るほうの夢』の詳しい話は、なんと、後半へ続く。



 

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