マスクと親の葛藤

新型ウィルスの影響から、イベント中止の夏を過ごすことになった今日この頃、暑い中マスクを着けなければならないのがつらい。
大人はまだ我慢できるが、3歳の息子がマスクをいやがってしまう、もちろん、まだ子どもだからと厳しい目を向けられたことはない。

ただ、お店に入ってマスクをしていないお客さんに、別のお客さんが注意して口論になったという話を聞いてしまうと親としては不安になる。

そして、最近気付いたことは、幼くてマスクをしているお子さんは、手作りマスクをしていることが多いこと。マスクの下の方に、今人気のキャラクターの刺繍やアイロンで布につけるシールタイプなど工夫が素晴らしい。

だからといって、自分の家で作れるかといわれるとそれも難しい。妻も僕も、裁縫は小学生以下のレベルで、息子のために作れるほどの自信はない。

お店で息子ぐらいの子がマスクをしていると、その子の親の努力を垣間見た気がして落ち込んでしまう。息子はのんきなもので、お菓子を持って買い物かごに入れようとする。

キミがマスクをすれば全部解決なんだけどね、と一言いいたいが、どうせ外すからと何もいわない。お菓子は、元の場所にバレないように返しておく。

ある日、僕の母が子供用のマスクを作って届けてくれた。さすが、時代を長く生きてる人はすごい!

感謝と誠意を見せるために、息子がマスクをつけた姿を動画に残して送ってあげようとスマホを取り出す。

「ばぁばが、キミのために作ってくれたんだよ」

いつもいやがる息子が、その一言でマスクをつけた。

「キミは本当に、ばぁばが大好きなんだね」

マスクをした息子を動画におさめて、送ろうとスマホに目を向けた瞬間、妻の悲鳴が聞こえた。

パッと頭をあげるとマスクをしたままの息子が、コップからオレンジジュースを飲もうとして全部衣類に流れていくところだった。

床に滴り落ちるオレンジジュース、黄色くなっていくマスク、何があったかわからない息子。

すぐにマスクを手洗いをしに洗面所に向かい、妻は息子を着替えさせている、ベビーベットの娘は急に騒がしくなった家族をニコニコして眺めている。

待望のマスクを手に入れても、我が家の平穏はまだまだ遠いと実感する一幕であった。


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