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おしごと貴族であるということ

ぼくが長らく「おやすみ貴族」を名乗っていたことを、このあいだアパートメントの連載で書いた

どんな日々を過ごしていたのか。

長いお休みの中で、ただご飯をつくって食べ、本を買っては読む生活。
たまにお皿やインテリア、観葉植物を少しずつ集めては、ひとりの部屋を組み立てていく毎日。そして時折誰かが部屋を訪れる。


それで不思議と退屈することはなかった。

「おやすみ貴族」を自称したのは、深く考えたわけではなく、言葉の響きのよさやかわいさ、それだけだったのだけれども。

最近「暇と退屈の倫理学」についての、国分功一郎さんのインタビュー記事を読んだんだ。

「アレ」vol.7の特集「休ーrest,break,in-active」の巻頭記事だ。

今話したことを踏まえて、では暇倫がそれに対して何を提示できているのかということになりますが、あの本の思想は「皆で貴族になろう」ということなんです。
貴族といっても、生まれながらの血筋によるものではありません。
楽しむための勉強をしていて、暇の中でも退屈せずに楽しめる人のことです。そういう生き方をぼくは「貴族の生き方」と呼ぶことができると思っています。

僕がこの文章を読んだときの驚きが、あなたにも伝わるといいな。

語感のたのしさと、ほんの少しの自分への蔑みをこめて「おやすみ貴族」を名乗っていたら、まったく違う場所から「あなたこそ貴族だ」と名指しされたように感じたんだ。

どうだ、すごいでしょう。

とはいえ、ぼくがおやすみ貴族を名乗り始めたのはけっこう前だけど、ほんとうに貴族の態度に近づいてきたのは最近なんだ。

貴族とはつまり「自分で自分を満たせること」であると思うのだけど、ぼくはこれまで「誰かを喜ばせるために」部屋をかたづけ、食事をつくっていたんだ。

誰かが部屋にくる。だからきれいに掃除するし、おいしい料理をこしらえる。
逆に自分のことはどうでもいいから、ひとりの食事は冷凍食品だし、脱いだ服は片付けないし、使った食器もためておく。花も枯らしてしまう。

凝った食事や部屋の写真だけをみると、ぼくが「ていねいな暮らし」の人であるとすら思えただろう。

でも実際には「ていねいなその日暮らし」をしていたんだ。

人を喜ばせることと、自分をおろそかにすることは、どこかでつながっている。

それがね、近頃はだんだんと、生活を自分のために整えることができるようになってきたんだ。

ニラとひき肉のかんたんなスープをつくって飲む。薄めの味でおいしい。
料理をしている間に、洗える食器は洗ってしまう。
少し手が空いたら、こまめに部屋を掃除する。
観葉植物のお店に通い、店員さんと相談しながら、部屋のグリーンをどう増やしていくか考える。

誰かのためではなく、ひとつひとつの行動が、自分を満たす。

ひとりで暮らすことを、ようやく自分のために調整できるようになってきたという実感がある。

ようやく「おやすみ貴族見習い」くらいにはなれてきたのだろう。

さて、この連載は、仕事とひとの関係について色々考えてみよう、というものだったね。
長々と僕のおやすみ貴族遍歴について語ってきたのは、もちろん次のことを考えるためだ。

「ひとは、おしごと貴族となることは可能なのか?」


仕事で自分を満たす、とはどういうことだろう。

ちょっと難しそうだけど、考えてみようか。

仕事において、働くということにおいて、人を喜ばせることに執着せず、自分をおろそかにせず、つまりは自らを満たすこと。そしてお金もばっちり稼ぐこと。

おやすみ貴族のときにヒントになっていたのは「既製品-レディメイドで満足しない」ということだ。

コンビニやうーばーいーつの食事もわるくはないが、できる限り自分の体の声をきいて、ぴったりくる味噌汁なんかをつくったり。

お皿なんかを自分でつくったりは流石にできないけど、ひとつひとつを、できる限り考えて選んだり。
逆にぴったりくるものが見つかるまで、家具を揃えるのを焦らないで、ダンボールだらけで暮らしたりすること。

となると、おしごと貴族の条件は、「既製品で満足せず、オーダーメイドのしごとをつくり実践すること」になりそうだ。

はあ、ちょっとうすうす気がついていたけど、やはりこの結論になってしまった。

既製品のしごとで満足しない、というのは、ちょっと不安だよね。

いろんな人が通って、踏み固められた、あるいは舗装された道を歩かない、ということなのだから。
先のわからない、けもの道を行くということだから。

それは例えば転職マーケットやスタートアップ界隈なんかでは、全く評価されない仕事をしていくことだ。
それでいて、ばっちりお金を稼ぐという、難解なパズルに挑戦しつづけることだ。

なんだか大変そうだね。

でもまあ、誰かの言葉を借りると、きっとそれは、薔薇色の茨の道だろう。

まずは「おしごと貴族みならい」からはじめていくことにしよう。
貴族という響きのもつ優雅さを忘れずに。

皆で、おしごと貴族になろうよ。

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U2plus→CAMPFIRE→I………
コメント (1)
おやすみ貴族、素敵ですね。私も、最近、自分の為に生活を整える事が少しずつ出来始めるようになりました。
そして、私もおしごと貴族なれたらなぁ…ゆるゆると目指してみようかしら?
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