例のプール

友情・下

男女の友情って成立すると思いますか。

どうもグレーさんです。前回の記事に続き、『友情』がテーマの話です。豪華二本立てって言ってたうちの二本目ですね。

ちなみに私は男女の友情は成立すると思います。そもそも同性間での友情の成立の定義ってのも曖昧だしね。今回はそんなわけで男友達との友情にまつわる話になります。

※女性の月のモノの話とかガンガンでてきます。食事中の方、苦手な方はまたのお話でのご来店をお待ちしております。

今回のエピソードでご紹介する男友達はご存知、ライス定食さんである。

知らない方に説明すると、彼もまたネット界隈で知り合った長い付き合いの友人である。私がまだニコ生でお絵描き放送などをしていた頃に知り合った。普通に飯を食ったり遊んだりもしているが、作家方面でも彼のキャラクター『ジョンと鮫次郎』のスタンプの作画を担当させてもらったりイベント出展でパワータイプが必要になったときに手伝いを頼んだりしている。

ちょいちょいツイッターでも話題に出すし、時々「付き合ってるんですか?」「夫婦ですか?」的なことも聞かれたりもするが、断じてそんなことはない。ただの友人である。

今回のお話は彼の友情に助けられたお話です。

話は数年前に戻る。前回にも書いたように私は持病の悪化で入院することになったのだが、どうにも地元の病院では対処しきれず症状は好転しなかった。そして新しい治療を受けるために、関東にある専門的な病院へ転院することになった。

ちょうど転院して間もない頃だった。

ハッと違和感を感じてトイレへ駆け込んだ。
赤。女性の月イチのだるさMAXイベント、例のアレを迎えたのである。体調の悪さと相まってもうだるだるである。個人差にもよるが大体一週間は暑かろうが蒸れようがあのオムツのような物体…いわゆるナプキンをつけてひたすら耐えるしかないアレである。

とにかく、私はとりあえず緊急事態に備えて持っていた普通の日用のペラいナプキンを装備した。女性はともかく、男性諸君も勝手に目に入ってくるテレビCMで知っているかと思うが、まあ出血が多い日あったりするのだ。これも個人差だが大体初日から2日3日が山場パターンの人が多い。普通の日用とは、一般的に山場を過ぎた頃に使えるくらいの紙装甲なのだ。ナプキンだけに。

生理の出血には我慢とかそんな膀胱とか肛門括約筋みたいなシステムは備わっていないので、ペラい普通の日用では血みどろの山場は防ぎきれない。ましてや入院中はどうしても横になっている時間が長い。せめて山場を過ぎるまでは常に夜用(長時間・多量の出血に耐えられるデカいナプキン)をつける必要があった。

私はすぐさまナプキン確保のため病院の売店へ向かった。日用品、衛生用品コーナーに直行し、夜用を…。

無い。

商品名の書いてある札が陳列棚の下についてはいたので、存在はした痕跡はあるのだが、夜用は1つもなかった。かろうじて隣に普通の日用が1つだけ残っているだけだ。嫌な予感を覚えつつ、店員さんに在庫があるか聞いてみた。

「あー、棚にないならもうないですね。来週の月曜日まで入荷はないです

いや待て待て待て待て。待てと。

その時点での状況は実はこうであった。
週末の土曜日、そして売店は実は内装の工事の真っ最中であり、廊下脇の空きスペースでの臨時営業に近い状態であった。在庫が置けないため商品数がめっちゃ少なかったのである。

しかし非常にまずい。悪あがきで残っていた普通の日用を購入したものの、これで防ぎきれるわけはないのだ。残る手段は外に買いに行くことだが、体調も悪く、また入院中の外出はいちいち書類を書いて、主治医の許可をもらわなくてはならない。そして病院からドラッグストアやコンビニのある駅前までは結構な距離がある。その一連の行動を今から…?

その瞬間、私は思い出した。

今日はライス定食さんが午後にお見舞いにくると。

もちろん葛藤した。長い付き合いとはいえ男友達である。あまりにも気まずい。それに世の男性諸君が実際どうなのかはわからないが、男性が生理用品を買うことは結構な勇気がいるはずだ。それを…。

私は意を決してLINEの画面を開いた。

『すまん、ライスさん。ちょっと頼みたいことがある…』

私は心のなかで土下座をしながら状況をLINEで報告した。こんなところで記事として大公開しておいてなんだが、当時は本当に恥ずかしいと思っていた。

だが、状況を把握した彼は嫌がるでも、悪ノリするでもなく、

『わかった。どれ買ってくればいいかわからないから、商品画像をくれ』

と一文だけ返信してくれたのだ。
ありがとう!ありがとう!と感謝をしながら私はネットでいつも使っている生理用品の商品画像をググり、送信した。転院前にも入院中の生理は経験していたため、横になっていることが多い自分に必要な量は大体わかっている。週末の山場を乗り切るため、「念のためこの夜用を4つ買ってきてくれ」と頼んだ。

『了解』

短く、頼もしい返信が返ってきた。彼の本来の紳士的な性分からの、最大限の配慮だった。ありがとうライス定食。

一時間後、そこには両手に紙袋でパンパンになったデカいレジ袋(計4つ)を下げたライス定食の姿が!!

太宰治の『走れメロス』のメロスが走ってくるのを見つけた親友セリヌンティウスはきっとこんな熱い感動を覚えたのだろう。私は、両手の4つのレジ袋で新種の動物の威嚇ポーズのような物凄い迫力になっているメロス(ライス定食さん)に駆け寄り、本当にすまない、ありがとうと叫んだ。(病院では静かにしましょう。)

だが同時に違和感もあった。夜用4つとは言ったが、そんなにでっかい紙袋にパンパンでレジ袋4つになるほどだったけ?と。駅から結構な距離を歩いてきてくれたライス定食さんを労いつつ、紙袋をあけた瞬間、私は理解した。

私が想像していた「夜用4つ」は、あくまで売店やコンビニのような小さな店舗用のナプキンの入り数が少ないタイプのものだったのだ。

それなのにライス定食さんに参考画像として送ってしまったのは、同じ商品名でもスーパーやドラッグストアなどの大きな店舗で扱っている入り数が2倍近いタイプのものだったのである。みんながイメージするフランスパンとかはみ出てそうな大きな茶色の紙袋、あれにすっぽり1つ入って、レジ袋1つを埋める大きさになるのだ。

そんな、誰がどう見ても「生理用品」が入っているとわかってしまう巨大なレジ袋×4を前にして、ライス定食さんもさすがに気圧されただろう。それでも、彼は血を流し待っている友のために、それをブンブン振りながら歩いてきてくれたのである。

本当にごめん、そして心からの感謝を。ありがとう、ライス定食さん。病室のロッカーが生理用品でパンパンになったよ。あと後から考えたら看護師さんに言ったらもしかしたらもらえたかもしれないね。夜用。

ともあれ、この友情に対しての恩もまた、死ぬまでに返さねばと心に誓っている。

だから私は、いつかライス定食さんに彼女ができて、いざ一戦交えようというときにゴムがない、などという状況に陥ったらすぐに連絡しろと言っている。今度は私がメロスのごとく駆けようではないか。ゴムを買って、なんならローションボトルの1つもつけて届けるよ。そう何度か伝えているのだが、

「何度も言っているけど、男にとっての生理用品の代替品はゴムじゃねーよ!」

とよく怒られる。そうなんですか。
なにが生理用品の恩返しとして正解なのか、答えはいまだ模索中です。そんなグレーさんでした。