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献身

キシロカインゼリーというものをご存知だろうか。

雑に説明すると「塗る麻酔」です。薬品ですね。皮膚に直接塗ったり、内視鏡とか胃カメラの検査でも使われているらしいですよ。

はいこんなスタートとタイトルですが、先に言っとくと今回またアダルト寄りです。すみません。でも親しくない相手から下ネタとか飛んでくるとそこそこイラつくグレーさんです。面倒くさいとか言うな。

私がキシロカインゼリーのことを知ったのは少し前、持病のあれこれで外科治療を受けることになったときだ。局所麻酔での施術…という予定に私は若干ブルーだった。

局所麻酔を受けたことがあるひとはわかると思うが、局所麻酔の注射はめちゃくちゃ痛い。そのあとの本番の手術で切ったり縫ったりの痛みを無くすための注射だから大事なのはわかるのだが、痛みを無くすための注射が痛いってどういうことや。私自身も何度か受けたことがあるが、看護師さんやお医者さんの手前、THEやせ我慢で真顔を通していたが、あとから聞いた話によると大人でも泣いちゃう人もいるらしい。そんなレベルなのである。(もちろん受ける場所にもよる。当然神経が集まっている部分のほうが痛いそうだ)

そんなわけで、またあの痛みかー…と私は怯えていた。ましてや年々いろいろとかましてくる持病のせいで、私のメンタルもフィジカルもすっかりふてくされていて、痛みに弱くなりつつあった。今回は泣くかもしれんな…と情けない覚悟と諦めをしていたところ、担当医の先生からキシロカインゼリーのことを教えてもらった。

今回は局所麻酔の注射の前に、あらかじめキシロカインゼリーを塗っておき、皮膚の感覚を麻痺させるという。すると、局所麻酔の注射の痛みがマシになるというのだ。先生いわく、小児科での処置などでも使われる手法らしい。

そんなんあったの?と驚くと同時に、少しでもマシになるなら是非!とお願いした。

マシになるのレベルはいかほどか。期待と不安の入り混じったまま迎えた外科手術当日。マシどころか、局所麻酔の注射はほとんど痛みを感じなかったのである。これにはめちゃくちゃ感動した。今までの怯えはなんだったのか!

この外科手術のあと、私はキシロカインゼリーについてネットで検索して調べてみた。今後、また別の先生になにかしら局所麻酔ありきの治療を受けるときにはこの方法をお願いしたかったからだ。あくまで使うか使わないかの判断はプロである先生側に任せるつもりだが、患者側もちょっとは知識を持っておいたほうがいいと思うからだ。

みんな大好きグーグル先生に「キシロカインゼリー 効果」で検索をかけた。ずらっと検索結果にメディカルサイトや質問掲示板系のサイト、さらに輸入サイトもでてくる。それらを眺めていたときだった。表示されるサイトの下には、検索ワードにひっかかったサイト中の文章が一部表示されているわけなのだが、そのなかに衝撃のものが混ざっていた。

「効果効能については、痛みを和らげるだけでなく、早漏も改善させることが可能なので…」

あぁ…?

ここからのことはやや省くが、とりあえずそのときの私のスマホはあまり人に見せられない検索履歴になった。気になったら調べずにいられない。たとえ検索履歴がアカンことになろうとも。

大人の諸君はもう察しがついているだろうが、結果として前述の一文から予想できるキシロカインゼリーの使い方が存在しているらしい。夜の営みで男性側がスピードスター過ぎてパートナーが満足できないまま試合終了してしまう…というお悩みに、男性側がキシロカインゼリーを使用し、感覚を麻痺らせて長期戦に持ち込むということだ。一応メカニズム的にはキシロカインゼリーの主成分であるリドカインで、脳内のセロトニンの分泌をどうこうという話で、かならずしも感覚麻痺がメインではないようだが、それでもやっぱり感覚は麻痺るらしい。うっかりすると相手側も麻痺るからちゃんと塗ってから防具つけてねと書いてある。特に海外では愛用している方が多いらしい。
と、そこまで調べたわけだが。

いや…どんな献身…?

なんともいえない切なさと虚しさが去来した。なんかもうちょっと泣きたくなるわ。だってつまり、感覚ないんだぜ。たしかに試合は長期戦になるけど感覚ないんだぜ?どんな献身?
やっていることとしては人魚姫と同じである。愛してしまった王子へ会いに行くために足を得る代わりに、愛を伝えるための言葉を失った人魚姫と同じように、パートナーとの愛の営みの時間を長引かせるために、代償として繋がる感覚を失ってしまうのである。

男性の世界はよく知らないが、少なくともそういった方面の機能性については女性の世界よりもステータス(?)として重要視されているらしい…というのはなんとなく察する。健康サプリや栄養剤のコーナーでも「スッポン!ニンニク!マムシ!マカのパワーで元気に!」とパワーオブパワーみたいな商品が結構な推され方をしている。

そういった、男性としての意地を示さねばという部分と、相手を満足させてあげたいという優しさの部分とが入り混じった末に、試合中の己の感覚すら無くそうとも…!という覚悟である。実際使用している方に聞きにいったわけでもなく、ネット情報オンリーなので想像でしかないが、その覚悟には賞賛を送りたい。いやマジで。

こんな書き方だが決して馬鹿にしているわけではない。女性がいくつになっても肌ツヤや体のたるみを気にしてエステや化粧水にこだわることや、子供が身長を気にして一生懸命に牛乳を飲むこと。いくらまわりに「いい歳して…」や「そんなの気にしなくていいのよ」と言われても、ひとにはどうしても譲れないものがあるものだ。
さらにそれが自分のためのみではなく、誰か大切なひとのための努力だとしたら、まさしく愛じゃないか…!

うん、自分でここまで書いててちょっと自分に引いている。みんなもちょっと引いてるね、わかるわかる。いつのまに下の話をこんなに真面目に書くようになってしまったんだ自分よ。いやでも本当にすごいと思うんだよね…。まさかこの記事から「よっしゃ!使ってみよ!」とかいう人もでないとは思いますが、場合によってはアレルギーショックとかもあるらしいし一応にも医薬品なので取り扱いは要注意だそうですよ。でも実は使ってますねんという人にはちょっと話を聞いてみたい。使い始めた経緯とか実際どないですのんとか。セクハラやないか。

まあともかく、モノっていうのはたまに自分の予想外の使用方法もあるよねって話でした。あとこんなこと言ってるけどまた下系のネタ書いちゃうんだろうなあと自分で予想できる、そんなグレーさんです。今後ともよろしくお願いいたします。