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又吉の「火花」を読んだ

僕、本名「山下」っていうんですけど「山下」っ文字を見るとどんな人か想像しちゃうんですよね。
別に山下って特別感のある苗字でもないし、全国に何十万人といるだろう。サイゼリアの受付名簿に、テレビ中継されていた国会の映像に、なんでもいい。一日一回くらいは「山下」って見ると思う。

火花の中にも「山下」という文字は出てくる。しかも1ページ目から。

中央のスタンドマイクは、漫才専用のものではなく、横からの音はほとんど拾わないため、僕と相方の山下は互いにマイクを頬ばるかのように顔を近づ唾を飛ばしあっていた

又吉 火花

山下は主人公ではなかった。相方。山下って苗字が主人公ではなくてよかった。多分山下が主人公だったら芥川賞は取れなかった。平凡すぎる名前。

僕はこの1ページ目の山下という文字を見たときこいつが物語を終わらせると思った。平凡な名字のくせに。だから最後の切り札にこいつが絡んでくると思った。

結局物語には主役的なポジションではなくあくまで相方という脇役として、度々出てきた。
しかし物語を終わらせたのは山下だと思う。山下が結婚して芸人を辞めることになりスパークスは解散することになったから。

山下というやつは直近にライブがないとネタ合わせに気が乗らない、3つ謝ると言ったのに2つしか謝らない、でも居酒屋では徳永に上の人への挨拶をそっと促すいい奴だった。

おそらく山下が出てくる文章をすべて飛ばして読んでもなんら支障はないだろう。だからこそ火花を読むときこの「山下」に注目して何とか意味を見出してあげてほしい。
山下を今後ともよろしくお願いします。




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