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メンタリストDaiGo氏の差別的発言について

インフルエンサーであるメンタリストDaiGoさんの、ホームレスや生活保護受給者に対するひどい差別発言が問題となっています。

DaiGoさんととその取り巻きの人たち発言により、生活保護の人やホームレスの方、満身創痍で生きている人達の心が切り裂かれました。
これは決して許される行為ではないと思います。
DaiGo氏はホームレス支援団体をはじめとする様々な人や団体から批判をうけ、2度にわたる謝罪をし、もともとの動画は公開停止されているようですが、切り抜き動画やまとめは残されています。


メンタリストDaiGoさんは当初は心理学をバラエティ番組で紹介するTVタレントだったのが、ニコニコ動画、Youtubeチャンネルを経て、知識のNetflixを目指して作ったという有料動画サービスDラボを運営し多数の会員を抱え、著書も多数あります。個人としてコンテンツを発信できるインターネットのプラットフォームを利用することで成功し、巨万の富と若者への多大な影響力をもつようになった人の一人です。

本がたくさん並んだ猫のいる部屋で、ミネラルウオーターや高級ワインなどを飲んだりしながら、早口で質問に答えるスタイルでのライブ配信を連日おこなっていました。さまざまなアカデミックっぽい装いで心理学の研究を紹介し、知識の豊富さと頭の回転の速さを見せつけるような歯切れのよい話法で、人間関係や生活上のライフハックを紹介する解説動画は人気でした。
DaiGoさんの動画や書籍自体には興味深い内容もあったので私も見ることもありましたが、学術的なのは装いだけで、その内容はどんどん過激になりエスカレートしていったようでした。

2021年8月7日にライブ配信された動画の問題となった部分では、

「幼い頃、親に『お前のやることは全て間違っている』と言われたことがトラウマになっている」という質問に対する回答から、親の言葉を言い訳にせず行動するべきだと背中を押したところから話が広がり、「僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めてるんじゃないからね。生活保護の人たちに食わせるくらいなら、猫を救ってほしいと僕は思うんで。生活保護の人が生きてても僕は別に得しないけど、猫が生きてれば僕(にとって)は得なんで」と、生活保護受給者を差別する発言が出ました。

その後、「猫が道端で伸びてたら可愛いなぁと思うけど、ホームレスのおっさんが伸びてると『なんでこいつ我が物顔でダンボールひいて寝てるんだろな』と思うもんね」「自分にとって必要のない命は僕軽いんで。ホームレスの命はどうでもいいんで。どちらかといっていないほうがよくない?猫はかわいいじゃん。」
とホームレスの人の尊厳を否定するヘイト発言が続きました。

その日の配信は「今日は辛口だから」と言い、「自分はまともじゃないから」と言うDaiGoさんは本気でそう思っていたようにも見えるし、世相の空気を読んだ上でのポリコレに逆張りした過激な発言をして人気を獲得するという炎上狙いもあったのかもしれません。
どこまでの人(あるいは生物)に同胞としての感覚をもつかというのは人によるのだとおもいますが、DaiGoさんはホームレスよりも猫に同胞意識をもっていたのかもと思います。

その後、批判を受けて公開した1度目の謝罪動画でも「申し訳なかった。抱樸にいって学んできます。寄付します。生活保護でもがんばっている人がいる。」というまだまだズレた発言と挑発的なタイトルで批判され、それを撤回しての2度めの謝罪動画ではスーツで登場し自分の母のことも引き合いに出して涙ながらに謝罪をし、その後はネット上では沈黙しています。

当然のことながら生活保護は生存権の保証であり、その受給に関しては素行は問われません。

内なる差別は誰の中にもある、だから対話を続ける

その言動も一連の経過もずいぶん子どもっぽいなともおもいましたが、こういう内なる差別感情というのはきっと誰の中にもあるものだと思います。そもそも知らないことは怖いし、シンパシーを持てないでしょうから。だからこそお互いの存在を知り、お互いの権利を尊重するために社会なかで様々な対話を継続していかなければならないのです。

メンタリストDaiGoさんの発言に対する反論としては、本人が学びたいと助けをもとめた牧師で認定NPO法人抱樸の奥田知志さんの文章が素晴らしいのでリンクを張っておきます。
とても大人だなあとおもいます。



奥田氏の文章の冒頭にあるようにDaiGoさんは「自分を一旦切開し自分の闇を見つめること」が必須なのでしょう。奥田さんのもとで自分を見つめ直して学んでいるのでしょうか。

一方で、より社会学、生物学的な回答としては、Yahoo知恵袋の質問に回答された「人間の生存戦略は「社会性」」という回答なども参考になるかと思います。

なぜ人間社会は弱肉強食ではないのでしょうか?(Yahoo知恵袋)

人間に対するトラウマと生存バイアス?


それにしてもなぜ、DaiGoさんはこういう発言をするに至ったのでしょうか。

DaiGoさんは、他の動画やインタビューで、「小1から中2までいじめられっ子で、友だちが1人もいなかった」「お世話になった人がいなかった、というよりかは苦しかったときに手を差し伸べてくれる人がいなかった、全て自分でなんとかしてきた」「人間嫌いなんで」と語っています。

もしかすると壮絶にいじめられ、苦しいときにも助けてもらえたと感じられず、母親も他界し、かなりの傷つき体験(トラウマ)と人と社会に対する恨みがある方なのかと思いました。
そしてそのトラウマをバネに、努力して自分の力で成り上がってきた。
心理学をまなび、個人でものし上がれるインターネットのプラットフォームを利用することで勝ち組となったことで生存バイアスをもつようになり、弱きものは強き者にやられてしまうというウィークネスフォビアから、社会的弱者を見下す言動をするつようになったのではないでしょうか。

そして幸福に必要な「金融資本(資産)」、「人的資本」、「社会資本」のうち、資産と人的資本(職業や名声など)は獲得できたものの、家族や友人といった親密な人間関係という社会資本は持ちえず、それがコンプレックスになっていたのかもしれません。

そして全てを自分がコントロールできる自分の居場所であるチャンネルや配信サービスの狭い世界の中で、自分を支持するフォロワーやネコに囲まれて裸の王様になっていったのでしょう。

こういった構造や現象はナチスドイツのヒトラーや、自民党とネトサポ、創価学会と学会員、オウム真理教などのカルト宗教と信者などに近いもののように思います。

しかし実のところ、社会の中で成功しているとされる人にこういったパターンは多いようにおもいます。

よくよく見れば企業経営者、政治家、タレントやインフルエンサーなどの有名人にも多いタイプなのではないでしょうか。
今や権力を預けている与党の政治家も国政をみれば世間を知らないおぼっちゃんの世襲議員以外か、さもなければそういうトラウマをかかえ成り上がり生存バイアスをもち、弱者を迫害するような議員だらけです。そういう議員の多くはからっぽで、市民と対話しようとせず歴史からも学ぼうとしない人ばかりです。恐ろしい話です。

そういった人たちが、反論できない弱者をスケープゴートにしてたたくことで社会の中に分断をつくり、人気を得たり集団をまとめるのは歴史的にも常習手段であり、あらゆる集団でみられる現象です。
今の日本においても上から下まで枚挙に暇がありません。

特に行き過ぎた資本主義社会の中では生産性至上主義、能力至上主義であり、人を行動役割でしか見ていない空気があります。それは相模原障害者連続殺傷事件の植松聖死刑囚と同じ理屈であり、その先は戦争へとつながる道です。
津久井やまゆり園自体、日常的に虐待がおこなわれていたようですし、植松氏の問いかけをに対して対話を拒否し措置入院という形で返した安倍元首相や行政組織も同罪だと思います
ちなみに私は対話を閉ざしてしまう死刑制度には反対です。

人間は歴史の中でさまざまな過ちを繰り返し、ここ数百年の間に人権という概念にたどり着きました。
人間の失敗の歴史が刻まれた各国の憲法や条約には、生存権や幸福追求権などの基本的人権について書かれています。
ただ、人権感覚というのは繰り返し学ばないと自然には身につかないものだと思います。

そのために何より必要なのは社会の中でオープンでフラットな対話の総量を増やし重ねていくことであり、とくに声をあげられない弱者が声をあげられるようにすることです。
そして、多数派は特権に気づき、知らないことを知り、見えないところを見えるようにして、さまざまな世界(共同体)に多元的に所属する人がふえていき、より大きな共同体の利益を考える人が増えることです。これらが分断を防ぎ、弱者の人権を守ることに繋がります。

そして今回批判すべきなのはあくまでDaiGoさんの言動に対してであり、DaiGoさん自身を叩いたり、人格を否定したり、発言を封じるのは行き過ぎだと思います。

DaiGoさん自身は無知を改め学び直すといっているようですので、さまざまな人と対話を重ね、人の優しさに触れてこころの傷を癒やし、これまで見えなかった世界を見て感じて、差別やスティグマを脱して、気づいたことをまた自分の言葉で語っていただければと思いました。

特に貧困化がすすみ、新型コロナの流行などで社会全体が余裕なくピリピリしている今の我が国の状況は、第二次世界対戦に向かっていった時代の空気に似ています。こういった空気の中ではカリスマ的な独裁者が生まれやすく、社会の中で分断を煽り、戦争へと用意に繋がっていったことは歴史が物語るところです。。

「差別主義者を作るのに一番いい方法は差別について語らないことである」といいます。
特に政治家などの公権力や影響力のある人の人権侵害や差別発言に対しては、黙っていないで言及し、対話を重ねることが必要です。
そして、いちばん大事なことは少数派の弱者の人が発言できるように後押しすることです。

そういうわけで、すこしだけですが私も語らせていただきました。

皆さんの声もお聞きしたいです。

(参考)



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