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ウィズコロナスポーツを作ろう 仮説編

ウィズコロナ時代に合わせた感染対策を行ったスポーツを作るという過程を通じて、ゆるスポーツの作り方を解説する本連載。今回は仮説編をお送りします。

今後の流れについてですが、実際に開発中のスポーツを行ってみる検証作業をし、新しいゆるスポーツの完成を目指していきます。
検証作業にあたって、大事な準備が仮説を立てるというフェーズです。

よく小学校などでスポーツを作ろうとすると、この仮説のフェーズをしっかり行わず、検証作業に入ってしまい、とりあえず様々な用具を使ってみるけど形にならないということがあります。
そのため、ワークショップなどを行うときにはこの仮説フェーズでキチンとした仮説が構築できない限り、検証作業には進まないようにしています。

ちなみに代表の澤田さんや僕などがスポーツ開発をしていくなかで、もっとも成長したのが、この仮説フェーズのスピードと精度だと思っています。

仮説フェーズでの成果は、検証時に起こりうることを仮説として立てて、そこへの対策を事前に考慮、用意できるかというところです。

今回のアウトプットは、新スポーツを行う上で起こりうる、結果に対する仮説とその対応策になります。

「なっちゃう」を考えよう

なっちゃう」。これはゆるスポーツにおいて非常に重要なキーワードです。

スポーツを行う上でルールは非常に大事です。しかし、ルールがあまりに厳しかったり、難しかったりすると純粋にスポーツを楽しむことは出来ません。かと言ってルールが曖昧だったり、適当だったりするとそこはスポーツの場ではなく、ただの無法地帯となってしまいます。

僕たちは元々、海外で流行っていたバブルサッカーという競技を日本に持ってくるという活動をしていました。このバブルサッカーを最初に見たときに、何よりも印象に残ったことがあります。

それは…
空気を入れたボールを被ってサッカーをすると、面白くなっちゃう…
ということでした。

このあとゆるスポーツという形で様々なスポーツを作っていく際に、常に意識していたのはこのポジティブな「なっちゃう…」です。

例えば…

激しく動かすと泣いてしまうボールを使ってバスケをすると、みんな優しくなっちゃう…

イモムシウェアを着てラグビーをすると、普段家の中で這って移動をしている肢体不自由の人たちがヒーローになっちゃう…

声で行うトントン相撲をすると、お年寄りの誤嚥予防になっちゃう…

英語構文だと「can't help ~ing」。「〜せずにはいられない」。この思想がゆるスポーツを誰もが親しみやすく、やった人たちが難しいことを考えず笑えるコンテンツにしていると言えます。

今回のテーマ「ソーシャルディスタンス」についても、「ソーシャルディスタンスを保ってやってくださいね!」というのは野暮ったいです。何かをすることによって、結果的にソーシャルディスタンスを保ち、密を防げるという設計が大事となってきます。

今回このスポーツを検討する際に、澤田さんがアイデアとして出したのが、下記の記事にある写真です。

予め円のエリアを指定することでソーシャルディスタンスを保つことが出来るというものでした。
今回はこの案をいただきましょう。

ということで今回の「なっちゃう…」はこちら!
それぞれのエリア内でしか活動出来ないようなルールにすると、ソーシャルディスタンスを保ち、密を防げるスポーツになっちゃう…はず!

ここが大前提の仮説になります。
まずは手近な道具としてフラフープを用意して、各人が地面に置かれたフラフープから出ない状態でサッカーをやってみようということになりました。

楽しさの阻害要因を考えよう

ゆるスポーツは楽しいものでなければいけません。その観点で言うとゆるスポーツの最大の敵は「楽しくない」です。今回これを「楽しさの阻害要因」としましょう。

僕の方で定義した「楽しさの阻害要因」の例を挙げます。

①目的が不明確…プレイヤーが何をすべきかよくわからない状況が生まれる
②ルールが不明確…やっていいことわるいことが不明確である
③プレイヤーが結果に対して能動的に働きかけを行えない…ただ運だけで勝負とか
④アンフェアなハンデが与えられる、もしくはスポーツヒエラルキーの逆転がない…ハンデは与えられる方も与える方もどこかで不満は出る。また、スポーツが得意な人が有利な競技ではスポーツ弱者は楽しめない
⑤テンポが悪い・カタルシスがない…熱狂できない、ダラダラしている、盛り上がりがない

上記については1個ずつがたくさん書きたいことがあるので、別の記事で改めて解説をしていければと思います。

頭の中で実際にスポーツをやっていることをイメージすると、「それぞれが地面に置いたフラフープの中しか動けないサッカー」において、いくつか「楽しさの阻害要因」となりうる仮説が浮かびました。
これらの仮説に対して対応策を用意して、検証作業に進むこととしましょう。

仮説①フラフープの中でしか動けないとそもそもサッカーとして成立しないのではないか?
→ボールが繋がらずいつまで経ってもゴールまでたどり着かない?
対応策:通常は5対5で行うフットサルコートに、普段より多めのプレイヤーを配する。※もちろん密は防ぎながら

仮説②サッカー経験者が有利ではないか?
→正確にボールを蹴ることが出来るサッカー経験者はパスも正確に出来るし、遠くからロングシュートで点をどんどん取ってしまうのではないか?
対応策A:通常のサッカーでは使わないボールを使うことにより、経験者でも正確にボールを蹴ることが出来ないようにする。
対応策B:ロングシュートで得点がされないように、ゴール近くからのシュート以外はゴールに入っても得点を認められないようにする。

仮説③相手の保持しているボールを奪えないので時間稼ぎが容易に出来るのではないか?
→勝っている局面であれば1人がずっとボールを保持するという判断をしてしまうとゲームとしての面白さがなくなる。
対応策:1人のプレイヤーがボールを保持できる時間に制限をつける。

仮説④自分のフラフープ内しか動けないため、ほとんど運動量がないのではないか?
→体を動かすということを楽しむという観点から言うと運動量が足りない可能性がある。
対応策:一部のプレイヤーが動ける時間を作り、すべてのプレイヤーがローテーションで動けるようにする。

さて、これらの対応策が具体的にどのようなルールとなったかは次回のお楽しみ。
次回は検証編です。


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