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スポーツをつくる授業の冒頭で行う3つの問いかけ

こんにちは。世界ゆるスポーツ協会の萩原です。
実は私が開発に携わった「ハンぎょボール」がKis-My-Ft2のシングル「Luv Bias」の特典DVDで取り上げられたところ、SNSを中心に非常に盛り上がりました。

スポーツを作ることで、富山県氷見市のまちおこしをしようという目的で、立ち上がったハンぎょボール開発プロジェクトですが、今回キスマイのメンバーにやってもらったことで非常に大きな成果を得ることができました。

ユニ育の文脈とは違いますが、これもひとつスポーツをつくる効果だと思っています。氷見市での取り組みについてはまた改めて書いていきたいと思います。

さて、前回は、スポーツをつくる授業を行うことで得られる5つの効果について、書きました。

今回は授業を進めていく中で、私が冒頭に行っている3つの問いかけについて説明したいと思います。
この3つの問いかけをし、考えてもらうことにより、スポーツをつくる授業の精度が格段にあがります。

スポーツって何?

これがまず最初にする問いかけです。

ちなみにスポーツの語源は下記のようになるそうです。

スポーツの語源
語源はラテン語の「deportareデポルターレ」にさかのぼるとされ、「ある物を別の場所に運び去る」転じて「憂いを持ち去る」という意味、あるいはportare「荷を担う」の否定形「荷を担わない、働かない」という語感の語である。これが古フランス語の「desporter」「気晴らしをする、遊ぶ、楽しむ」となり、英語の「sport」になったと考えられている。※諸説あり

つまり、語源を元にスポーツを定義すると余暇全般ということになると言えます。
最近何かと話題のe-sportsはもちろん、トランプやボードゲーム、麻雀なんかもスポーツと言えなくもないような気がします。

ただ、この定義だと私達の感覚とちょっとズレがある気がします。「今度の日曜日みんなでスポーツ大会します!」と言われて行ったら麻雀大会だったとしたら、「え?」ってなりますよね。
また、ビリヤードやダーツをスポーツと捉えるか、スポーツでないと捉えるかは人によってかなり違いがあるように感じます。
なぜこんなことが起こるのでしょうか?

こういった差異を顕在化させるために、具体的な例を挙げて生徒たちに問いかけをしていきます。
わかりやすいのはダンスです。

ダンスは2012年度から体育の必修となっているため、子どもたちの中ではスポーツであるというイメージがあります。「ダンスはスポーツだと思う人」と聞くと9割位の生徒の手が上がります。

次に、では「バレエは?」、「サンバは?」、「日本舞踊は?」、「歌舞伎は?」と問いかけると段々手が挙がる数が減ってきます。

「じゃあそれぞれ自分がスポーツだと思ったものと思わなかったものの差って何?」って聞くと意外とみんな答えられません。

これはスポーツというものの定義が言葉よりも感覚的なもので行っているためです。

では、スポーツとは何か?
煙に巻いたような答えですが、「スポーツとして扱われる考えが自分の周りに浸透したものがスポーツである」というのは間違いにはならない答えかと思っています。

そもそもe-sportsをスポーツと捉える考え方は20年前にはまったくありませんでした。誰かが(きっとマーケティングが上手い人が)「ゲームもスポーツと呼んだら市場広がるんじゃない?」と思って言い出したことが、世の中に浸透した結果、今のe-sportsがあります。

前述のダンスも同じです。60歳以上のスポーツ関係者に「ダンスはスポーツですか?」って聞くと大抵の人が「違う」と答えます。
これは、彼らの中でダンスがスポーツとして扱われる考えが浸透していないためです。

でも、スポーツの定義がこんなにあやふやだとスポーツをつくる授業を行った結果、新しいトランプの遊び方やボードゲームができてくるかもしれません。もちろん広い意味で捉えればそれでもいいんです。ただ、授業進行上はある程度方向を揃えておいたほうが効果も出やすい。

ということで、「今回の授業ではスポーツの条件を○○とします」という風に定義をしてあげることが大事になってきます。

私の場合には、下記のような要素を組み合わせて、対象者やワークショップの目的に応じて定義をしています。

1.やらないより、やったほうが健康になるもの
2.そこそこの運動を伴うもの(座っているよりは運動量があるもの)
3.勝敗がつくもの
4.勝敗が採点ではなく、客観的な方法でつくもの

これらのような定義を行わないと、できたものが指導者のイメージと違うものになるということが起こりえます。例えば新しいルールの麻雀を考えてきた生徒に、「こういうもの作って欲しいわけじゃないんだよ」なんていうのは責任転嫁になります。スポーツの定義が人それぞれである以上、今回の授業における「スポーツとは何か?」という定義付けを怠った指導者のミスなのです。

さらに、4の条件をゆるスポーツ作りの授業の中では敢えて入れています。これは、特に小学生くらいまでには大事になってきます。
小学生だとよく「○○をして、一番うまくできた人が勝ち」というルールを作ってくるのですが、採点競技って実は非常に細かい採点基準が定義されています。これがない中で採点競技を行うと、結果に対して不満を持つ人が出てきます。
授業時間の中でフェアな採点基準を作ることは難しいので、採点競技に関しては対象から外した方が授業は進めやすくなります。

「スポーツって何?」。この問いで大事なことは2つです。
①スポーツとは何かを問うことによって、人によって物事の定義、線引が違うということを実感してもらう。
②これから作るスポーツの方向を決めることによって、授業で意図するスポーツの形にディレクションする。また、成果物のクオリティがあがる確率をあげる。

「ゆる」って何?

私達、「世界ゆるスポーツ協会」は、英語でも「WORLD YURU SPORTS ASSOCIATION」としてゆる(YURU)という言葉をそのまま使っています。

「「ゆる」という言葉を他の言葉に置き換えるとどんなのあると思う?」という問いはゆるスポーツの真理を理解してもらう上で非常に重要です。

まず、「かわいい」とか「楽しそう」とか「親しみやすい」とかポジティブな意味が出ると思います。一方で「適当そう」とか「安っぽそう」とか「カッコ悪い」とかネガティブな意見も出るかと思います。

この言葉の多様性こそが私達が「ゆる」という言葉を使っている意味になります。
英語に置き換えるとどんな言葉があるかという図が下記になります。

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これ以外にもたくさんの言葉が出てくると思いますが、「ゆる」という言葉自体が多面性を持った言葉と言えます。
多様性、つまりダイバーシティは最近色々なところで聞くようになった言葉です。これはある集団の中に様々な属性を持つものが存在する状態を指します。
一方、多面性とは個の中に様々な面があることを示します。
例えば、人に焦点を当てると、各個人の中には様々なパーソナリティが内在しています。「優しい」や「社交性がある」などの良いパーソナリティもあれば、「飽きっぽい」、「短気」などのあまり良くなさそうなパーソナリティもあるかもしれません。

この問いで伝えたいのは、ゆるという言葉にいい意味も悪い意味もあるように、人も様々な側面を持っている。そして、あらゆるモノやコトに関しても様々な側面、つまり多面性を持っているということなのです。

スポーツつくりの中で、フォーカスを当てるヒト、モノ、コト、それらに多面性があり、様々な角度から見ることで面白さや良さを引き出すことが出来るということを理解することで、物の見方に深さが出てきます。

そもそも日本語は抽象度が高く、多面的な言語と言えます。そのため、話し手や聞き手に高い非言語コミュニケーション能力(所謂空気を読む)が求められます。例えば、「体格がいいですね」という言葉をムキムキの人に言えば褒め言葉、ぽっちゃりしている人に言えば遠回しの悪口という具合です。

こういった日本語を常に使っている我々日本人は、本来多面性を理解するための素養が非常に高いと思っています。

「ゆる」という言葉を通して、このような物事の多面性に気付くキッカケさえ得ることが出来れば、様々な物の見方自体に劇的な変化が生まれる可能性もあります。

社会課題って何?

世界ゆるスポーツ協会は「ゆるスポーツという誰もが出来るスポーツを作ることで、社会課題の解決を行う」という目的を持っています。
授業の中で作るスポーツも社会課題の解決というのは目指していってほしいと思っています。

では、社会課題って何?
これが私が授業の冒頭で行う3つ目の問いかけです。

まず、子どもたちに意見を聞いてみましょう。
「少子高齢化」、「環境問題」、「紛争」、「貧富の差」、今だと「コロナ」というのも出るかもしれません。

じゃあ、「紛争をなくすゆるスポーツを考えてみよう」とか「貧富の差をなくすゆるスポーツを作ってみよう」ってなったところで、社会課題のスケールが大きすぎてスポーツで解決出来る気がしません。
この授業で大事なのは、子どもたちが自分たちが作ったもので、何かを少し変えることが出来るという成功体験を掴むということです。そういう意味であまりスケールの大きな課題は適しているとは言えません。

そこで「社会課題」って言葉を、「社会」と「課題」に分解してみましょう。

まず、課題についてですが、以前同じ質問をしたときに中学生の女の子が答えてくれた完璧な答えがあるので、そちらを引用します。
「課題とは解決すべき問題です」。
この回答はツッコミどころがない答えだと思いました。主体的に解決しようという強い意思も感じます。

では、次に「社会」とは何か?
この社会という言葉ってすごく曖昧な言葉だなと感じます。学校の授業でも社会という教科がありますが、歴史も政治も経済も地理など多くのことが社会という教科に含まれています。社会という言葉を別の言葉に置き換えてもらうといろいろな意見が出てくると思います。是非そこも問いかけをしてみてください。

今回、この問いで伝えたいことは、社会の最小単位は「あなた」と「私」ということです。これは有名なアドラーの主張ですが、私達ゆるスポーツ協会が意識している社会という言葉を端的に表していると思っています。

つまり、人が二人いればそこに社会が生まれます。国や世界などのように何万人、何億人に目を向けなくても、人と人が交わるときに社会が生まれるのです。

そう考えると「学校」、「教室」、「家族」、「友達」など身近に様々な社会があることがわかります。このようなものの「解決すべき問題」と考えると社会課題というテーマにも取り組みやすいと思います。

例えば、「クラスが仲良くなるためのスポーツ」も「家族が楽しく休日を過ごすためのスポーツ」も社会課題を行うことができるスポーツと言えます。

身近な社会課題を探すことは、自分の身の回りをより深く考える機会となります。その社会課題の解決する方法を考えることは、自ら環境を変える事ができるという実感を持つことに繋がります。

これから子どもたちが成長する中で様々な課題にぶつかったときに、自分で環境を変えることが出来るという実感、そして自信を持つことは、目の前の壁を越える際に大切な能力となってきます。

まとめ

今回はスポーツをつくる授業の冒頭で、私が行っている3つの問いについて書いてきました。

この問いかけについて考えることにより、スポーツをつくる授業の中身はより濃いものとなることができます。また、ちょっと授業が思っているように進まないなと思ったときはこの問いかけを自分自身にしてみてください。そうするとその中により良い授業をするヒントが沢山見つかると思います。

スポーツをつくる授業に必ずこうしなければいけないというルールはありません。必要なものはルールではなくコンセプトです。3つの問いの中にはスポーツをつくる授業のコンセプトを明確化する役割があります。


【ユニ育について】

「スポーツをつくる授業」を通じて、一人ひとりの独自性やユニークネス、強みを開放するクリエイティブ教育です。

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●「ユニ育」のロゴを公開しますので、自由に活用ください。

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※4パターンありますので、好きなロゴを活用ください
※あまりにユニ育理念から離れている活用・活動に関しては、委員会より指摘させて頂く可能性もございます。あらかじめご了承ください

●「ユニ育マガジン」の内容を参考に、ぜひ皆様も授業などで「ユニ育」を実践してみてください。また、実践内容を世界ゆるスポーツ協会まで教えてください。内容によってはマガジンで紹介させていただいたり、ユニ育委員会にもジョインしていただくことがあります。
連絡先:uniiku@yurusports.com
※件名に「ユニ育実践しました」と記してください




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