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棚番号5 萩原珈琲図鑑

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萩原珈琲の珈琲豆を種類別に記事化。とりためた本棚です。代表的な豆から、陰の立役者支まで。少しずつ、全種類掲載できればと思います。
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オッケー、任せる。クリスマスブレンド2023

始まりは10月中旬の「クリスマスブレンドのテーマを募集しまクリマ~ス」の一声。開発課N主任。ん?と思いつつ聞き流す。社員から公募したテーマが13案あるらしく、全員投票することになった。 全員投票の良いところはみんなが「参加している」気分になれる。悪いところは、めちゃくちゃ無難な案や「聞こえの良い」安全な案が選ばれがち。今回も、いくつか鋭いフックになりそうなテーマがあった。しかし「子どもが寝静まったあとにサンタさんが飲むコーヒー」が暫定トップ。 ここで指摘する。「人間がいつ

秋のまんまるブレンド

2023年8月31日が満月。そしてスーパームーン。その翌日から発売される「秋のまんまるブレンド」。タイミングが…と思いつつ、その背景を深掘りしてみる。J.C.Q.A.認定 コーヒー鑑定士の長いひとり言。 近年、ハロウィンで盛り上がる報道を目にすることが多く、それに向けたイベントや企画が多い。でも、本来「日本は五穀豊穣、収穫を祝い、感謝する代表的なものの一つにお月見がありますよね?」そんな声からブレンド作りが始まった。いやいや、そもそも「コーヒー」で日本文化を表現が難しいです

鳥取県日南町ブレンド ~いろといろ~

自分の起源の50%は神戸で、残りの50%は鳥取県日南町だ。農業と林業が中心で自然豊かな町。母が6歳の時に祖母がなくなり、男手ひとつで育った影響からか、幼い頃から何度も通った町。 20年余り前に亡くなった祖父の家は空き家で、現在もたまに空気入れ換えに行く。江戸時代からの建物で、母屋、 馬小屋、 囲炉裏、釜戸、五右衛門風呂。もちろん便所は「はなれ」だ。屋号が代名詞のこの集落では、私のことを「○○屋の孫」と呼ぶ。田畑の手伝い・川遊び・ハンザケ・蛍・花火大会。そしていつかの小学校の

サマーブレンド2021 爽やか、甘みのモダン系アイス

先日、SNSでアイスコーヒーについてのアンケートを取った。「がっつりレトロ系」と「爽やかモダン系」。結果は、予想通りがっつりレトロが約75%と圧倒的得票数だった。納得感と同時に、4人に1人はあっさり、爽やかに飲みたいんだな、とも思った。 そこで、前年に引き続き、今年も「モダン系アイス」を作り、レトロ系 vs モダン系の「夏の合戦」を開催することにした。 本命 レトロ系 アイスコーヒーと言えば、やっぱりキリっと苦味、重厚感が欲しい。ロングセラーの萩原アイスブレンドは、苦味ど

山上と麓の2点の中間、MAYA KANKO HOTEL。

一枚の写真を入手した。かなり昔の写真のようで、印象深い女性がこちらを向いて笑いかけている。ホテルのテラスでの一枚ようだ。幼少期にこのホテルの横を通った記憶がかすかにあるような、ないような。そして突然、妄想の世界が始まった。 かつてそこに、人がいた。 時代とともに栄華と衰退、復活を繰り返し、廃墟となった今、日常だった空間が非日常の世界に生まれ変わる。 独得の華やかな香りから、ふと懐かしさを感じる。飲み終わった後のいつまでも続く余韻が、廃墟となった今も、地元の人々に愛されてい

萩原珈琲の「ブレンド」。実は2つの系統。その②オリジナル系ブレンド。

萩原珈琲のブレンドには、大きく分けて2つの系統がある。1つは、昭和から続くクラシック系。そして、もう1つが近代的な手法で配合しているオリジナル系だ。今回は、後者「オリジナル系」について、その誕生背景や特徴をご紹介。 ■ 現在の萩原珈琲を支えているブレンド。 豆の種類をたくさん混ぜて、互いに補い合うブレンドという言葉がぴったりのクラシック系ブレンドに対し、このオリジナル系ブレンドの最大の特徴は「個性を活かす」配合になっている。これは、豆の品質や供給が「安定的」に入荷されること

萩原珈琲の「ブレンド」。実は2つの系統。その① クラシック系ブレンド。

萩原珈琲のブレンドには、大きく分けて2つの系統がある。1つは、昭和から続くクラシック系。そして、もう1つが近代的な手法で配合しているオリジナル系だ。今回は、前者「クラシック系」について、その誕生背景や特徴をご紹介。 ■ 昭和喫茶ブームを支えてきたブレンド。 補い合うブレンドという言葉がぴったりのクラシック系ブレンド。戦後間もなくの昭和時代。入荷する豆の品質が不安定だが、そもそも供給自体も不安定。そんな中で、「特定の生産国の個性」を引き出そうとすると、同時にブレンドまで不安定

萩原珈琲の代名詞:Santos Nibra (サントス・ニブラ)

萩原珈琲といえば、サントス・ニブラ (生豆生産国:ブラジル)。最も出荷量の多い、萩原の代名詞ともいえる商品だ。 実は、そのネーミングにも秘密がある。いつの頃からか、ニブラ、ニブラと呼ばれているその由来は、「にほん x ブラジル」からの「ニブラ」。 この豆は、現地ブラジルのカップテイスターと契約し、現地で厳選した上で、商社を経由し「HAGIHARA スペック」として、国内に入荷される。 サントス・ニブラは、次の4つの焙煎度合がある。 ①:サントス・ニブラ ②:サントス・ニブ

Hagihara Colombia Supremo -コロンビア・スプレモ-

萩原珈琲スペック、その代表的な豆の1つ。コロンビア・スプレモ。 コロンビアの輸出規格、エクセルソの中でも「Supreme (英語)」、ラテン語では「Supremo」。つまり、最高品質の輸出規格を意味している。 粒の大きさや、産地をある程度の地域に絞り、コロンビア特有の強い酸味を抑えつつ、中でも「甘みの強いロット」を厳選し、入荷している。 萩原珈琲のコロンビアは、次の2通りの焙煎パターンがある。 ①:コロンビア・スプレモ ②:コロンビア・スプレモ 浅煎り ストレートとして

一本筋が通っている。ただ、そんな気がする。コロンビア・スプレモ / 浅煎り

萩原珈琲スペック、その代表的な豆の1つ。コロンビア・スプレモ。 粒の大きさや、産地をある程度の地域に絞り、コロンビア特有の強い酸味を抑えつつ、中でも「甘みの強いロット」を厳選し、入荷している。 萩原珈琲のコロンビアは、次の2通りの焙煎パターンがある。 ①:コロンビア・スプレモ ②:コロンビア・スプレモ 浅煎り 今回は、その中で②番の「浅煎り」だ。 実は、私たちの中で、コロンビア・スプレモと表現すると、人気の高い中煎りを指していて、この「浅煎り」は、中煎りの1/120の出

萩原珈琲の「モカ」は、逆さ仕上げ 。

萩原珈琲のモカ(生豆生産国:エチオピア)。最も出荷量の多い豆の1つで、サントス・ニブラ、コロンビア・スプレモに匹敵する、年間28tの生豆焙煎量を誇る。この「モカ」については製造方法にもこだわりがある。 エチオピアは元来、伝統的に非水洗式を行ってきたが、最近は「酸味」や、すっきりした味わいが高額で輸出可能なため、製法を「水洗式(ウォッシュド)」に切り替えつつある。伝統を失いつつある生産国の1つなのだ。 ※ 非水洗式:実のまま乾かして、後に種を取り出す方法。 ※ 水洗式:先に

マンデリン。こだわりの「臭み」。

インドネシアのスマトラ島。そこで栽培されているアラビカ種のコーヒーのみを「マンデリン」という。※ インドネシアでは、カネフォラ種(通称:ロブスタ)が広く栽培されており、一般的に麦を煎ったような香りがするといわれることも。  萩原珈琲では入荷の際にいつも、「とにかく臭いもの」というオーダーを出す。この「臭い」とは、マンデリン独特のクセのある香りを指している。このクセは、果実の収穫から、種子を取り出して乾燥させるまでの工程で生じる要因も大きい。 精選工程 ①:果実のまま乾かす

軽くすっきりを求めて。グアテマラ。

萩原珈琲の中米を代表するコーヒー。それは「グアテマラ」だ。かつてはガテマラ、グァテマラ、グアテマラとバラバラに呼ばれていた「Guatemala」。現在は「グアテマラ」と記載することが定められている。スペイン語圏の人と言葉を交わすと、明らかに「グァテマラ」に聞こえるのだが…。 さて、グアテマラには、輸出の規格(格付け)に、ブラジルやコロンビア、タンザニア(キリマンジャロ)のような、豆の大きさの規定がない。なので、豆のサイズがバラバラになっていることが、1つの特徴としてあげられ

真相。深煎りホンジュラスの役割。

一般的に、栽培地の標高が高かったり、水洗式で精製された豆を深煎りにすると飲みにくいことがある。これは、そもそも標高が高いとボディー(味の強さ)が強くなるためで、それを深煎りすると、味が濃くなりすぎて飲みにくくなる。傾向として、同じ豆の焙煎度を変えると、浅煎りは味が軽く、深煎りは味が濃くなる。 ホンジュラスは、中米に位置し、エルサルバドル、グアテマラに隣接する国だ。萩原珈琲ではこの中米の3か国の豆を、それぞれ違った目的で入荷している。ホンジュラスに関しては、軽い口当たりの「深