大きな樹の話5
緊急事態宣言が出てからずっと撮影に出れていない。丸々2ヶ月空くなんて今まで無かったからなんだか落ち着かない。 ということで外に出てないうちに書いておきたいことがある。一緒に樹に会いに行った人や、写真を見てくれた人がよく言う二つのキーワードについて。
「屋久島」と「トトロ」
この二つが圧倒的に多い。これ、個人的にはすんごい興味深くて、言われるたびにおぉ〜ってなる。さらに言うとトトロコメントの方が多い。 多くの人の中で、巨木と言ったらトトロ、屋久島(縄文杉)の構図が出来上がっているみたい。とりあえず今回はトトロの方について。
・トトロと巨木はどこで繋がるのか
ここからは推測ありきの話になるのでご容赦ください。 「トトロみたい」の何が面白いかというと、トトロに出てきていない種類の木でも巨木であればそうした意見があるということ。劇中でトトロが住んでいるとされる樹はクスノキ。どっしりとした幹に天を覆わんばかりの枝ぶりをしている。しかし、比較的シルエットが似ているケヤキなどではなく、柱の如く真っ直ぐ幹だけが立ち上がる杉でもトトロコメントをいただくことがある。 このことからすぐに考えられるのは以下の二点だろう。
①樹に詳しくないので単純に種類が見分けられない(失礼な表現でごめんなさい) ②個々の樹としてではなく、私たち人間に対する「巨大な生命、大いなる存在」みたいな概念としての巨木認識
まあ、どちらもあると思うのだけれど、掘り下げたいのは当然②の方。 これ、さらに面白いのは宮崎駿監督はわざわざ明確に種類をクスノキとしているところ。 (アニメーションで草木の種類まで指定されて描かれることって結構珍しいのではなかろうか。せいぜい、桜とか花がつくもの、あとは針葉樹・広葉樹くらいじゃない?) 知っている方も多いと思うが、となりのトトロの舞台は埼玉から東京にかけて跨る狭山丘陵だと言われている。が、困ったことにクスノキは関東の樹ではない。全く生えていないわけではないが、漢字で楠と書くように温暖な気候を好む元々は東南アジア出身の樹だ。日本だと全体の8割以上のクスノキが九州に生えているとまで言われる。 だが、監督はあえてクスノキを持ってきた。もちろんクスノキの性質を知った上で。また「頭の中に浮かんだ空想上の風景」とも発言している。
つまり、宮崎駿監督の脳内にぼんやりと浮かんできたイメージとしての巨木に当てはまったのがクスノキであり、そうして描かれたはずのクスノキは多くの場合その個性を失いながら、再び漠然とした存在として私たちの心の中に入りこんで来ているのである。
かなり大まかなまとめ方になったけど、これだけでトトロ見直したくなりませんか?? 個人的にまだ気になるのは、「監督の頭の中にクスノキを浮かび上がらせたのは何によるものか」と「どんぐり好きのトトロが住む巨木、クスノキにはどんぐりがならない」という二つ。 特に後者、矛盾というかその謎にワクワク。 二つ挙げたけど、どちらも監督のクスノキに対する想いにまとまりそうかな。 サツキとメイのお父さんも「お父さんはこの木を見て、あの家がとっても気に入ったんだ」って言ってるし。僕個人もクスノキは大好き。やっぱりパヤオに影響受けてるんだろうか…
続きになるかもしれないし、屋久島の話になるかもしれないけど今回はこんな感じでおわり🌳
加茂の大楠(徳島県 三好郡 東みよし町) 国指定特別天然記念物
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