銭湯態勢

前の晩に嫁さんに言わなくてもいい御託を並べてしまった為、なんとも凹んだ一日だった俺を一気に普段の日常へ連れ戻す事件が起きた。

嫁さんに帰るメールを入れると即返信…

大変!早く帰って来て!風呂が壊れた!

なーにー!

古めかしい家の古めかしい風呂釜の点火のレバーが動かないらしいのだが、以前修理に来た方に「ここを確認すると良い」と知恵をつけられていた嫁さんが自分で直そうとしたのだが、カバーを留めているビスの一本の頭が破損しており外せなくて困っているらしい。

送ってもらった画像を見てもけっこう無理っぽい…使えそうな具材をコンビニで買って家に帰る。「状況は?」敏腕刑事のようなひと言目をキメて現場を確認する。

これはマズい…即断力で勝負だ。金鋸でビスを切り取り開けてみる、ほぼ”はじめまして”な対面だし、夜だし靄ってるし…一旦退けということにした。明朝に嫁さんが修理を頼むことにする。

とりあえず追い焚き時に壊れたのは不幸中の幸いだった。嫁母は既に入浴後だったので後は嫁さんと俺が入るだけだ。髪の量が使用する湯量に直結することから考えて、俺が後の方が良いだろうと嫁さんを先に入浴させ、俺はその間メシを喰って後から風呂に入ることにした。

いざ風呂へ入ると、さほど湯舟のお湯も冷めてはおらずこれならそのままで良いかな、なんて思っているところへ嫁さんは狭い風呂場で全裸の俺のもとに沸騰直後のヤカンを持ってやってきた。ありがたいのだが裸のケツに沸騰直後のお湯またはヤカンが触れないか怖い怖い!注ぎ切ろうとヤカンのフタを押さえながら、お茶を入れるかのような所作も怖い怖い!

怖がる猫のような入浴を終えて眠りについたのだけど…

4時頃に目が覚めた。

自分よりは歳下なのだろうが、あんな昭和なマシーンに太刀打ち出来ない自分が悔しくて、なんか手の打ちようがないのかを考え始めてしまった。あー眠れない!俺は腹を決めた。このまま起きていて明るくなったらリベンジしてやると…

6時を過ぎて俺は再び現場へ向かった。

夜には暗かったのでとても細かい作業をする気にはならなかったので更にマシーンをばらすことはしていなかったんだ。とことんやってやろう。朝靄の中グリスまみれになりながらたどり着いた真相は、無残にも内部でワイヤーが切れていた。これは交換するしかないのでようやく踏ん切りも着き再び寝ることにした。

幸い修理屋さんも仕事に行く前に来てくれたのだが、部品は手元にあるはずもなくまた明日ということになった。

という訳で今夜は隣の駅のそばにある銭湯へ…今夜は露天風呂でビバノンノンだぜ。

湯舟で月を見上げながら”夕べは言わんでもいいことまで言ってごめんな…"と嫁さんに謝っておいた。


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