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お別れ段ボール

玄関に積み上がった段ボール。
早く送らないとって、分かってるんだけどね。

すこしだけ同棲していた。

友達と一緒に暮らすことを、同棲というのは、
ちょっぴり可笑しい気もするけれど、
あれはシェアハウスではなく、同棲だったよな。

毎日一緒に起きて、だるいねって言いながら、
ぬくぬくして、カフェで沢山笑って、
ベッドから落ちないゲームもオセロもした。

夜中にはちょっと遠くの温泉に行って、
晴れている日はベランダで花火もシャボン玉も。

そばにいたのはたったの数ヶ月だけれど、
おかえりって、ただいまって、毎日言えるのって、
やっぱり、あなたがいてくれたからなのね。

「じゃあね」「うん、またね」

ドタバタの引っ越しを終えたあなたは、
実家に荷物を送り損ねて、私に託してくれた。

時間のある時に、着払いで良いからって。

何度も集荷の手配やらなきゃって思ったよ。

だけど、積み上がった段ボールが無くなるのは、
あなたとの思い出が消える気がして、
あなたと2度と会えないんじゃないかと怖くて、
唯一の繋がりが無くなる気がして、

中々、送れなかったの。困るよね、ごめんね。

だけど、昨日、久しぶりに君の姿を見た。

画面越しの真剣な眼差しも、ケラケラ笑う顔も、
全部一緒に住んでいた時から、何も変わらなくて、ちょっぴり安心した。

これからは毎週zoomで会えるから、
ようやく段ボールともお別れできる気がする。

また、すぐ帰ってきてよね。

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