その胸にきゅっとね

恋人になってもうすぐ半年。

恋愛における半年間が、こんなにも穏やかなんて
許されて良いのでしょうか。

毎日毎日、つかみ合いの抉り合う喧嘩をしたり、
冷めた関係を見て見ぬ振りしてやり過ごしたり。

いつもの半年って、大体こう破綻してたから。

こうして鍋をつつく幸せそうな横顔を見れて、
夜中に、てくてくお散歩をしてベンチで話して、
お布団の中で頬を寄せて未来を語ったりして。

出会った時から変わらぬ好きを貫いてくれて、
私は本当に、本当に、胸がいっぱいなのだよ。

けれど、実は少しだけ心配も、ある。

最近、ちょっとお疲れモードだよね。
夜番、朝番、深夜番の不規則シフトで11連勤。
それに加えて、お昼に働く新しい仕事の準備も。

会うたびに、ちょっぴりクマを抱えた君の瞳が、
この半年間で見違えるように痩せた君の身体が、
ヤバ店長に悩まされている君の心の健康が、
私は、本当に本当に心配で堪りません。

こんな、私にできることってなんだろう。

そうだ、ネクタイを作ろう。
毎朝鏡を見るたび、少し凹んでうつむくたびに、
ちらっと思い出してもらえるように。
君の大好きな恐竜や、深海魚や、楽器の生地で。

離れていても、いつも側にいるんだよ。
そっと、心の1番近くで、君を応援してるからね。
どんな時も、きゅっと、抱き締めるんだから。

君のクローゼット、私のネクタイで埋め尽くすんだから！