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死神おにごっこ

人はいつか死ぬ。

そんなことは、ずっと昔から分かっているつもりだった。

けれど、私だけは、私の家族や友達だけは、ずっと生きているんだろうなって、心のどこかで安心していたの。

だけど、
従兄弟の親戚が急に亡くなったり
鉄板焼き屋さんのおっちゃんが癌宣告を受けたり
幼馴染のお父さんが入院したりして、

死神の歩み寄る音が聞こえた気がした。

もうすぐお前の番だぞって。
あっという間に、お前の周りも死ぬんだぞって。

ある朝、机に見慣れないゴミが落ちていた。

よく見ると、お母さんの名前が書いてある。
何語かわからないカタカナ呪文を検索すると、
血圧の薬だったの。

血圧なんかで死ぬわけない。
そう思えているのは、きっとお母さんが、
今日も元気にケラケラ笑っているからだ。

健康に生きてなんて言える立場じゃないけれど、
私の大好きな人には、私を愛してくれる人には、
少しでも長く生きてもらわないと困るよ。

「私、早死にで良いんだよね」
久しぶりに会った友達がポロリと零す。

私も、アイツの足音を聞くまでは、
早死にでも後悔しないなんて思っていた。

だけどさ、早死にって相対的じゃん。
みんな早死にで良いって思うということは、
みんなで長く生きても同じことじゃない?

だったら、死神からトコトン逃げ回って、
どっちが長く生きれるか勝負しようよ。

ヨボヨボになっても、一緒に笑っていようね。
絶対逃げ回ってやるんだから!!

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