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令和3年公認会計士試験体験記(8/9):監査論

※本記事は、こちらから始まる会計士試験体験記の一部です。全体の目次はこちらで見られます。

8.監査論

8-1.試験結果

短答式試験は95点だった。論文式試験は一問目が素点23点(調整後得点30.8)、二問目が素点27.5点(調整後得点33.25)で、合計の得点率は64.05(82位)だった。論文式試験では、最初の一問に30分以上かけても不満足な解答にしかならず、諦めて先に進んだ記憶がある。


8-2.使用教材など

監査論も、基本的には予備校のカリキュラム通りに学習を進めた。講義視聴後は「肢別チェック」・「短答実力養成演習」(全6回)とテキストの読み込みを進め、2020年12月ごろからは論文演習をスケジュール通りに大原の校舎で受けた。

テキストは試験範囲の内容が要領良く整理されていたが、一点軽微でない誤謬があった。四半期レビューにおけるGC注記に係る評価と対応策の期間が、実務指針(監保報83号38項)通りになっていなかった点である。

短答対策の成績推移をみると、演習全10回の平均は78.5点(最低65点、最高95点)、公開模試は85点(30位)だった。論文演習の方は全12回の平均が56.4点(最低40点、最高78点)。論文公開模試の成績は第1回(3月)が65点(換算得点63.61、21位)、第2回(7月)は54点(換算得点56.55、186位)だった。

論文式試験用の教材として「問題集」と「ポケットコンパス」、時期を下って「論文総まとめ」が配布されたが、「問題集」があまり肌に合わなかった。暗記が必要なもの(典型問題に対する「解答」)と暗記で対応できない問題に対する【考え方】が載っているのだが、後者が十分でないように感じたのである。暗記すべきとされる「解答」も「問題集」内には解答に至る思考過程の解説が無く、財務理論の問題集とは異なってテキストの参照ページも載っていないので検索性にも問題があり、取っ付きにくかった。

そこで、12月ごろに補助教材の利用を検討した。その過程で、松本裕紀講師が体験講義で展開するアプローチを新鮮に感じたので、当該講師の論文向け講義を単科で受講してみることにした。ただし講義のみで、答練は利用しなかった。

結果、本体テキスト(論文対策講義Inputレジュメ)・講義は想像に反して大原とほとんど変わらず、拍子抜けした。両者のテキストともに必要な情報は載っており、若干の喋りの巧拙はあるが動画視聴後はテキストベースの勉強になるので大して重要ではない。敢えて挙げれば、主要科目の主要アサーションに対応する具体的な監査手続の記述が充実している点が挙げられるが、これも実務補習所や監査法人内でより詳しく学べるものであり、程度問題という感もある。章ごとの目次のみで全体の目次が無い点は、検索性においてむしろ大原テキストに劣る。

ただ、講義の中で問題(論文式試験の過去問)を解く時間を取り、その後かなりの時間を割いて動画内で解説するのは、有益であると感じた。監査論のように企業法にも増して「唯一の正解」の存在が疑わしい科目では、予備校の考えた答えを暗記するよりも、予備校がなぜその答えを正解と考えたのかを学ぶ方が試験対策上役に立つと思う。講義内では、他予備校の解答例と比較したうえで、その立場も認めつつ自身の考える答えを擁護する場面もあり、その姿勢は誠実と感じた。大原でも過去問を解説する講義はあるのだが、かなり論文式試験が近くなってからであり、そのための講義時間もあまり長くなかった。

さらに、補助教材もヨリ充実しているように感じた。講義用テキストと一緒に「監査論論文対策集」が送られてきたが、この冊子では、各例題に対して、解答を作るために何を想起し、どのような思考過程を辿れば良いのかについて非常に細かく解説が付されている。そのため、予備校の解答例に同意しない場合でも、なぜその解答例に至ったかという納得が得やすい。

と考えつつ、「論文対策集」は一度通読したのみで、深くは読み込まなかった。各解説に共通する思考過程・手順のようなものは割とシンプルであり、それを把握するだけなら何度も読み込む必要は無いかなと思ったことと、個別論点を早く実務で使えるためには「問題集」や「対策集」で勉強するよりも監査基準を読み込む方が近道だと考えたことによる。演習の成績は取り立てて良くもないが合格ボーダーくらいには大体達しているという状態だったので、「高得点」ではなく「早く一人前になること」を優先する目標設定が可能と考えた。そして、後者を目標とするなら原文に早く慣れる方が良いだろうと思ったのである。

このように考えたので、特に論文演習終了後は、過去問を解く他は、監査論の勉強として主に監基報を読んでいた(本試験直前は、それなりに試験対策っぽいことをした)。「参考法令基準集」を使っていたが、改訂前文など収録されていない所もあるので、その部分は大原の「ポケットコンパス」で補った。監査基準の原文は正直かなり読みづらく、結局本試験まで1.5周くらいしか読めなかったが、監査法人に入ってから監基報を使い慣れるための時間短縮には役立ったと思う。現在では、受験期よりも多少馴染んできた気がしている。

(逆に、過去問を予備校が整理した「出題範囲表」や、予備校の憶測による「出題予想」は、「一人前になる」という観点からは無意味な情報であるため、一瞥した程度で、学習時間の配分にはあまり影響させていない。)


最後に勉強時間であるが、2020年5月の学習開始から合計で531時間、一日平均で1.2時間だった。2020年12月~2021年5月の演習期には相対的に学習時間が多く、短答式試験後は減少した(2021年6~8月の一日平均は0.9時間)。


(なお繰り返すが、教材に対する本記事の指摘はあくまで記事作成者がサービス利用時に感じたことであり、現時点でも妥当するとは限らないことに留意してほしい。)


(続きます)


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