【短編小説】サヨナラのカタチ

これ…いつのだっけ？…
ああ､そうだ
アナタと初デートの時のだ

アナタは緊張しててさ
喫茶店に入って注文をして
なかなか会話 続かなくって

アナタは水を勢いよく飲んで
そしたら､こぼしちゃってさ

ワタシがハンカチで拭いてあげたら
お詫びにって新しいハンカチ
買ってくれたんだった

これは…お揃いの指輪…
付き合って1年の記念日にアナタがくれたんだっけなぁ…

お揃いのキーホルダーはワタシが
社員旅行に行った時お土産に買ってきたんだっけ

一緒に見に行った映画のパンフレット…こんなに､たまってたんだ

なんだかんだ物が増えたなぁ
捨てないと…

あの人とはサヨナラしたんだから…
お互いの為にサヨナラするって
決めたんだから…

ポタポタっと涙が落ちていた
拭(ぬぐ)っても拭っても
涙は溢れた

アナタもワタシのことを思い出して泣いてくれてたらいいな…
なんてさっ思ってしまう…
ワタシのエゴだよね…

思い出の品々を箱の中に入れ
机の引き出しの奥の方にしまい込んだ

これが今のワタシに出来る
精一杯のサヨナラだ
ワタシなりのサヨナラのカタチ