「川」 けっち
風のまにまに、ということばをご存知ですか? これは「風の吹かれるままに」という意味をもつ古語の一種です。でも僕はいつも川という文字をみかけるとつい「川のまにまに」と頭に思い浮かべてしまうんです。たぶん美空ひばりの「川の流れのように」のイメージが強烈すぎて、川→川のながれのように→川のまにまに と脳内自動変換が起こっているみたいなんです。まあ、実際に「風のまにまに」を会話で使うことはありませんし、同じように「川のまにまに」についても口にだすことは多分一度もないです。今後生涯ないかもしれない。
でもやっぱりなぜか「川」の字をみると自然発生的に「川のまにまに」と脳内ツイートがながれていくのも不思議で、きっと一生つづいていくのかもしれません。たぶん、「まにまに」って語感が気持ちいいのかもしれませんね。もし「まにまに」をご存じなかったら一回脳内でハッキリと川のまにまにと言ってみてください。まにまに、はなかなか良い響きでしょう?
川の流れのように、という一語のもつ強烈なイメージ。これ、日本人の共通無意識にすりこまれているようなものすごい力をもつ言葉だと思っています。平成生まれ令和育ちの方はどうかわかりませんが、一般的な昭和生まれの人のほとんどが川をみたときに、どこかに美空ひばりの歌詞が自分の川の印象をつくりあげているのではないか。川の流れに旅をかんじたり、川の流れの「おだやかさ」「移りゆくとめどなさ」をみたり。
僕はこれはステキなことだと実は思っています。みんなが当たり前のように川をみてそこいに人生のはかなさ、必ずすぎさって流れてゆく時代についてを感じる……それも、強制的に「川をみたら人生をかんじなさい!」と教えこまれたわけではなく、自分でも知らないうちに自分でも意識しないくらいの無意識状態で、川と対話する術を引き継いでいる。それも歌とメロディーで。
そんなことを思いつつ、ふと美空ひばりの歌をYouTubeでみていました。今日もありがとうございます。