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好きなことを仕事にするのは幻想なのか?

私は公務員を辞めて、個人事業主となりました。

公務員である教師を辞めるとき、父にはずっとその自分の意思を言えなくて、何ヶ月も悩みました。

言えなかったのは、父が絶対に「反対する」とわかっていたからです。

私の父は、元々自営業で、料理店を営んでいました。母もその手伝いです。

私が学生の頃の我が家は、両親の自営業がうまくいっていなかったので裕福な家庭でもなく、料理店だから土日も両親は働いていたので、家族で土日に旅行にいった記憶もありません。

幼い頃から、「うちは貧乏だ」と思っていたので、欲しいものも欲しいと言えない子どもでしたし、友だちが羨ましいといつもいつも思っていました。

平日も祖母がご飯を作ってくれ、子どものころ、両親と一緒に過ごした記憶もほぼありません。

私が中学生のころ、やっぱり両親の事業はうまくいかず、父は会社員に、母が一人で料理店を少し変えて自営業をやるようになりました。

父は中卒で料理の道での修行に出ていたので、会社員といっても雇ってくれるところは少なく、少ないのに転職を何度もしました。

母は一人で自営業をやり、働いて働いて、自営業10年目くらいで体を壊しました。癌でした。

そんな両親のもと、貧乏なのに私は大学に奨学金をもらいながらも通わせてもらい、教員になりました。

我が家系には公務員はいなかったので、公務員がいかに素晴らしく、ボーナスをもらえることがいかにありがたいか、何度も聞かされました。

そんな私が、公務員を辞めたい、と。予想通り、そういったときには猛反対されました。

それでも、人生一度きり。「好きなことをしたい」「やりたいことをしたい」と主張する私に、

「好きなことを仕事にできるのは一握りの人たちだ」
「好きなことを仕事にするのは簡単ではない」
「仕事は楽しいものではない。みんな辛くてもやっている」

そんなことを言われました。

そんな父は、現在60歳を過ぎましたが、すごく安い給料で今もなお会社の非常勤的な立ち位置で働いています。

毎日毎日、愚痴ばかりいう父。そして、多趣味で好きなことが多い父。

とはいえ、病的にこだわりが強い父は、どんな趣味も普通の人の趣味レベルよりもはるか上をいくレベルのことができます。

「残りの人生、そんなに長くないんだし、自分が好きなことやればいいじゃん」

「お父さんの好きなことがお金になるように、私も考えて手伝うよ」

と言ったら、

「好きなことを仕事にしたら、好きじゃなくなる。仕事は嫌なのが当たり前で、嫌で我慢してお金をもらうことこそ仕事なんだ」

と答えました。

私は、これまで一生懸命に働いてきた父なので、残りの人生は楽しいことで好きなことをいっぱいしてほしいと思っているのですが、

父はもはや、好きなことでお金を稼ぐのは悪かのような考えでした。

私は少し前から、多才な父のあれこれがお金になるんじゃないかと、これまでも何度もいろいろなアイディアを提案してきましたが、

私の父にとっては、40年という月日によって、

「仕事=辛いもの、大変なもの」と割りきる思考になっているようです。

それでも、余世を楽しくストレスなく生きてほしいと思うのは、娘のエゴなのでしょうか。

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