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くらをの2020年

昨年11月末から始まったリフレッシュ工事。
はがせばはがすほど、この蔵がどんなふうに生きてきたのかがわかる。

いや違うな。むしろなぞは深まるばかり。
先人たちの謎のメッセージ、天井はがすとまた天井、へ?こんなところにまさかの玄関?とか。

増田町は重伝建エリア。古いものはそのままに、という概念が少なくとも私にもあったけれど、江戸から今日まで数え切れないほどたくさんの増築、改装、修繕を繰り返してきた(だろう)この蔵で、古いものっていったいどの時のもので、それは残すべきものなのか?という、そもそもを揺るがすようなたくさんの取捨選択を毎日毎日。

このツートンカラーに組まれた柱は【追掛け継ぎ(おっかけつぎ)】って言うのね。
通常だと「追掛け大栓継ぎ」(込栓あり)として梁とかの横架材の継手として使われる技法、今回は柱の根継ぎとして使用したの。
一般的?には柱の根継ぎには金輪継(かなわつぎ)を使うのね。でも柱を1寸(3センチ)程度持ち上げる必要がある。
今回はそれほど大きく建物を持ち上げることが不可能だったから、横スライドが可能な追掛け継ぎとしたってわけ。柱の荷重がかかると外れにくい仕様になってるのよ。(岩村建匠 優幸さん)

伴走してくれている人たちの、プロフェッショナルな「こと」への捉え方と茶目っ気たっぷりなアイデアと、バンジージャンプを一緒に飛ぶぐらいの腹の括り具合に支えられ、やっと年末には平面図がリアルに立体になって私にも見えてきた。

この写真は、今後店の顔になる部分のイメトレを三人でした場面。
「スタッフさんの身長はだいたいこのぐらいですから」
「この辺まで垂れ壁が来ます」
ふざけているわけでもなんでもなく大真面目に、私が理解できるようにいつも全力で見えるようにしてくれてありがたい。

これももらったアイデア。「まだ試作ですから」と二人は言っていたけれども、事務所にぶら下げてあって毎日なんとなく眺めているうちにものすごくかわいく見えた瞬間があって。人生の伴走者を選ぶときのように、じっくりじわじわ。

2020年2月半ば。くらをの第二章が始まります。
お椀の灯りのように、じっくりじわじわくる店を目指して。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

活かして残すくらをのカタチ
設計 白砂孝洋建築設計事務所
施工 有限会社岩村建匠

All Photo by Takugo Miwa





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