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フリーランス主婦、大興奮する。


最近なんだか日常が物足りず、かといって海外旅行に行くような余裕や気力はなく、狭い家の中でひとり、もんもんとしていた。

非日常が味わいたい。ぜいたくっぽいことをしたい。自分を労いたい。だけど不妊治療が常に頭にちらついて散財する気にならない…そのあたりの思考を周回して二週間くらい。「そうだ ホテルのレストランのオーダービュッフェ、行こう。」というキャッチコピーが舞い降りてきた(コピーのコピー)。


調べてみるといろいろあるけど、住んでいる近くにない。車を走らせ、とある高級老舗ホテルに観光がてら行くことになった。中華レストランのオーダービュッフェ。しかも、観光付きだなんて。うふふふふ。テンションが爆上がりしすぎて困る。


早起きした。張り切りすぎて何を着ていいかわからず、クローゼットで眠っていたワンピースにジャケットを羽織ったら、ひと昔前のPTA会長みたいになった。令和っぽい抜け感のあるコーデでまとめた夫と並ぶとはなはだアンバランスだけど、満を持してオーダービュッフェへと向かう。


メニューを開き、その豊富さに思わずわーっと声が出る。制限時間は2時間。何か制限時間がある場面に身を置くとき、いつも「限られた時の中でどれだけのコトが出来るのだろう…」とAIさんのStoryを頭の中で歌うくせがあるからやっぱりわたしは平成女子。この日も例に漏れず歌った。限られた時の中で、どれだけのものが食べられるのだろう。


何が人気か店員さんに聞くと、エビマヨとのこと。ぜったい食べる。待ってろエビマヨ。今日だけは、ここからここまで全部くださいが許される。胃袋上の理由によりしないけど。エビマヨと、そのほか気になるメニューをひと通り、貴族になった気分で頼んで到着を待った。


そして、キックオフ。


エビマヨ様


おいしすぎてイエローカード。「う、ま、す、ぎ、る、うますぎる」とおもてなし風に言ったけど夫はスルーした。これはきっと、ソースに練乳がたっぷんたっぷん入ってる。元気が出る。エビマヨは滋養強壮剤だ。いきなりおいしすぎて、わたしの胃袋は足りるだろうか。先が思いやられる。


アワビのうんたらかんたら様

アワビなんて食べたのいつだったかの正月以来で一度うろたえてみる。やわらかい。おかわりした。ブラボー!そしてフカヒレのスープも飲んだのだが、庶民の血がさわいで速攻飲み干してしまい写真がない。


小籠包様


熱いかな?と思っていたら、となりのテーブルの家族が同じように小籠包を前にして「第一子って、猫舌が多いらしいよ。末っ子は少ないんだって」と話していて勉強になる。ほんとなんだろうか。わたしより夫の方が熱そうに食べるのがおもしろかった。


唐揚げ様


唐揚げをまずいと思ったことは人生で一度もない。うまいと思い続ける回数を人生で更新し続けて、この日もしっかりと更新した。うまい。揚げたて。衣がしっかりついてるタイプの唐揚げだった。


酢豚様


ホームラン!!(サッカーから野球になった)夫婦ともども大興奮。中華鍋がないとこうはならないよなあ、という絶妙な火の通り方。天才。こちらもおかわり。


麻婆豆腐様


辛いものが得意じゃないのでわたしはひと口。本場の味は知らないが本場の味だと思った。夫は「豆腐が腹にたまりますなあ」と言って、このあたりからわたしたち夫婦はそんなに大食いではなかったということに気づく。


胡麻団子様


ここでいったん甘味を挟み、しょっぱい・甘いの無限ループ戦法を取ることにした。


エビチリ様


エビマヨにしょっぱなから感動したけど、まだエビチリが控えていたとは。ぷりんぷりん。ピリ辛でおいしい。


蒸しエビ餃子様


エビからのエビ。やっぱりエビは裏切らない。エビは幸せ。


(だけど、お腹が…いっぱいに…なって…きた?)


杏仁豆腐様


きっと気のせい。もっかい甘いを挟もう。甘いを挟めば無限なはずなのだから。


炒飯様


これを食べずに帰るわけにはいかねえ…と、頼んだ炒飯。家でこんなの作りたい。香ばしい。ちなみに夫はラーメンを食べた。さすがにお腹がはちきれそうだ。はちきれそうだけど…


エビマヨ様(写真は最初の使い回し)



追いエビマヨしてしまった。最初に食べたときから決めていた。エビマヨ、あなたでシメるって。やっぱりおいしすぎイエローカード。2枚。退場。しっかりしまった。ありがとう、エビマヨ。


満腹二回分くらいの満腹だった。夫も、わたしも。大興奮、大満足。オーダービュッフェはエンタメだと思う。もう大人でそんなに食べられるわけではないので、同じくらいの金額を出してコース料理を食べればいい気もする。だけど、大人の胃袋だからこそちょっとずつ、食べたいものを食べられることがありがたい。何よりこのわくわく感たるや。子どもの頃初めてバイキングに行ったときのそれと変わらない。そのうえ高級ホテルに堂々と入れるという高揚感も庶民にはたまらない。

いつかわたしが人生をまっとうし、走馬灯を見る日が来たら、今日のうれしい気持ちと、エビマヨと酢豚がワンシーンを飾りそうである。やや庶民すぎる気がするけど、走馬灯はひとつでも多い方がいい。


しょっちゅうは行けないけど、元気がでないとき、自分を労いたいときにオーダービュッフェに頼ろう。人生の不安も戸惑いも、この2時間だけは吹き飛ばしてくれる。大きな旅行の計画が立てづらい不妊治療中のごほうびにもちょうどいいな。わたしに足りていなかったのは、ホテルのレストランのオーダービュッフェだったのだ。


おわり

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