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真相 東京都、繰り返された病床過少報告

 今冬の第二次緊急事態宣言が再々延長されることが決まった3月5日。この日、菅義偉総理と小池百合子・東京都知事が記者会見で発した言葉は、まことに対照的だった。

 菅総理は、苦渋に満ちた表情で「当初お約束した3月7日までに宣言解除することができなかったことは大変申し訳ない思いであり、心よりおわびを申し上げます」と深々と頭を下げた。そして、再々延長で取り組むべきこととして「病床の確保」に言及した。

 一方、小池知事は当初、菅総理の会見と全く同じ時間帯に臨時会見を行うと予告していた。結局開始を遅らせたものの、総理会見が終わらぬうちに、自らの会見をスタート。おわびするどころか、次のように言い放ったのである。

 「緊急事態宣言が今も続いているということを都民の皆さんは認識されているのか」

 そして「週末から都県境をまたぐ移動については、厳に慎んでいただきたい」(筆者注:都が正式に出している外出自粛要請には都県境をまたぐ移動自粛は含まれていない)、「トコトン、ステイホームを引き続きお願いをしたい」などと、都民の行動制限を呼びかけるばかりで、都が取り組むべき「病床の確保」に言及することはなかった。

 二人の会見には、もう一つ大きな違いがあった。この週に大きな反響を呼んだあるニュースの扱いである。

 そのニュースとは、東京都の重症者病床使用率が「86%」が1週間後に「33%」に急減した―というものだ。病床使用率が急減したのは、重症者の実態が大きく変化したからではない。分母の数、すなわち東京都の確保病床数が500床ではなく、2倍の1000床だったと大幅に修正されたことによるものだった。それまで都は、厚労省から求められていた国基準の病床数をきちんと報告していなかったことが発覚したのだ。

東京都の重症者病床使用率の推移

【図】2月中旬まで厚労省が発表していた東京都の重症者病床使用率=青色=はデタラメだった。グラフは筆者作成

 このニュースは、私の取材に基づく検証記事が端緒となり、複数の全国紙が後を追う展開となった。経緯は後で詳しく述べるが、総理会見では、産経新聞と京都新聞の記者がこの問題について質問。菅総理は、都が2月下旬に国基準で修正報告した経緯を説明していた。

 一方、この肝心の質疑を最後まで聞かずに自分の会見を始めた小池知事は、この問題について何ら釈明せず、都庁詰め記者も質問しなかったのである。

 いうまでもなく緊急事態宣言の解除の判断に関わる重要な指標の一つが、病床使用率だ。政府の分科会が定めた基準では、病床使用率が50%以上だと「ステージ4」、25%以上だと「ステージ3」とされている。当初「ステージ4」を脱し「ステージ3」になれば解除するとされていた。小池知事も当初は、解除の目標を「国基準のステージ3」と明言していたのだ(結局守られなかったが)。

 そんな重要な判断を左右するデータが政府中枢に正しく伝わっていなかったのだとすれば、極めて深刻な問題だ。だが、これが初めてではない。昨年春の緊急事態宣言下でも、東京都は確保病床数を過少に発表する問題が起きていたのである(本誌昨年8月号で既報、後述)。

 過ちはなぜ繰り返されたのか。この問題の本質は何か。
 徹底検証する。

(続きは、雑誌『Hanada』2021年5月号所収「繰り返された病床デタラメ報告 小池百合子に緊急事態宣言を」をご覧ください。)

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