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無観客でのレースイベント開催に苦戦する理由

こんにちは、ドイツレースチームでデータエンジニアとして働く山下です。

モータースポーツ業界も例にもれず、コロナの影響によってF1を始めとした多くのレースイベントが延期 or キャンセルになっていました。しかし、調整中ではありますが、7月にF1が無観客で開幕することがおおよそ決まりつつあります。実は先日、某国内チームのベテランエンジニアとお話しました。その際に、無観客でのレースイベント開催について、興味深い三者三様の立場があると教えてもらい、面白かったので簡単に紹介します。

契約の詳細などは各社で異なると思うので、レース業界の一例になります。

(a) レースチーム
車両がテストやレースを走行して初めてスポンサー費用が入る契約となっているチームが多く、イベントが完全になくなると死活問題。また技術面でもタイヤ開発には1ヶ月は時間を要する。SuperGTなどタイヤ戦争があるカテゴリは、走行データをテストで収集する必要ある。そのため無観客で良いのでテストをしたい。

(b)レースイベント運営側 (FIA, GTA, JRPなど)
放映権、スポンサー契約を考慮すると無観客だとしてもイベントを成立させる必要がある。但し見切り発車による感染症拡大のリスクあり。レースチームからは開催のリクエストを受けるが、次に述べるサーキット運営側との調整が難しい。

(c) サーキット運営側
無観客でのイベント開催となるとサーキット側としてはチケットが売れず収益が赤字になってしまう。コロナ収束直後においてもチケットの売れ行きに疑問が残る。国内Sサーキットなど自動車メーカーが運営に関わるサーキットは感染症リスクを嫌う。そのため国内Oサーキットのような所有者がメーカー系でない場所の方が話がまとまりやすい。お客さんを入れての開幕戦になるのを怖がるサーキット運営側が多い。

そもそも、観客動員が前提の業界構造なので無観客イベントの調整は大変そうです。F1のように世界各国を転戦するカテゴリは、国境間の移動の問題もあります。

モータースポーツには規模の小さなチーム、サプライヤ、フリーランスのエンジニア、メカニック、ドライバーなど大企業に所属していないメンバが本当に沢山います。関係者の健康が第一です。ただしイベントが開催されないと、多くの人が経済的に困窮するのも事実であり、個人的には早めの開幕を望んでいます。そのためには従来の収益構造を変えて、サーキット側の負担を減らしてあげることも大切です。ここがF1など調整が難航してきた理由の一つです。

僕の居るドイツでは観客を入れての大規模イベントは8月末まで禁止されていますが、プライベートテストは可能になりました。油断は大敵ですが、状況は徐々に改善してきています。

「全てのモータースポーツ、他スポーツイベントが早く開幕出来ますように!」

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