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タイムトラベルと未来予測にタイムマシンは要らない-世界の9割はコピーだ!

こんにちは、ドイツレースチームのデータエンジニアとして働く山下です。

結論から書いてしまうと、世界のモノとサービスの9割はコピー、模倣品から出来ています。そしてコピーの増産にはタイムラグが存在するため、直近の未来予測は意外と簡単です。専門のレースとは関係ありませんが、体験談を元に書きます。読んで頂ければ嬉しいです。

(1) 自動車開発におけるタイムラグについて

僕は数年前まで日系自動車メーカーのADAS (先進運転支援システム)部門で働いていました。緊急自動ブレーキ(AEB)、前走車の追従機能 (ACC)など、平たく言えば未来の自動運転につながる開発を担当していました。

自動車の新技術の大部分は欧州発の製品、システムです。2018年段階の自動駐車システムについて考えると、日産、メルセデスが共に実用化していました。機能的には、ほぼ互角でした。しかし、メルセデスは駐車時のスペースが狭いの場合に備えて、ドライバー降車後に、携帯電話で自動駐車操縦が出来るような機能を備えていました。有用な機能は他社も追従します。

この機能が日本市場に投入されるまでのタイムラグを考えます。

① メルセデスとサプライヤが共同で開発を行う 
② プロトタイプの社内実験、評価を行い量産体制に入る
③ 開発サプライヤが日本の自動車メーカーに売り込む
④ サプライヤと日本メーカーが共同で開発を行う
⑤ 社内実験、評価を通過して、日本で量産化が始まる

自動車の開発サイクルは最短2年です。新機能の場合は、社内評価、確認のためさらに時間がかかります。しかも、このような先進機能はメルセデス、レクサスのような高級車から導入されて行きます。日本人の約半数が所有する軽自動車に採用場合は、下記プロセスが追加になります。

⑥ 日本の乗用車に機能が実装されて量産される
⑦ 採用台数が増えて、サプライヤにおける製品原価が下がる or 競合サプライヤが類似製品を開発
⑧ 軽自動車メーカで実験、評価を行い、量産化に至る

高級車のシステムをそのまま軽自動車には搭載できません。ここでも自動車の開発サイクルの最短2年は必要です。

この場合、上述①で開発に携わっていたエンジニアは、⑧の軽自動車エンジニアより、最低でも4年以上は先に開発を行っています。つまり、開発現場もコピーと模倣品が9割を占めており、そこには必ずタイムラグが存在するということです。

(2) タイムトラベルと未来予測を行う方法は”移動”

何かモノやサービスの開発、普及にタイムラグが発生するのは、当たり前のことです。もし、あなたが、タイムラグの開始点を見つけることが出来れば、未来をある程度、見通すことが出来るはずです。その可能性を上げる方法を3つ書きます。

1. 地理的に移動すること、視点を海外に移動させること
大阪は大都市です。しかし、東京と比べると文化、情報が伝わるのはワンテンポ遅れます。僕が通っていたカフェで英会話を行うサークルは、東京では大人気で毎日開催会場がありました。ある時、僕は転職で大阪に引っ越しました。そして、同じサークルを探したところ、大阪の開催は週末の2箇所だけでした。僕は驚いたと同時に、英語学習の重要性が高まっている現代では、大阪でも確実に流行ると思いました。その後、僕はサークルのスタッフになったのですが、1年後には大阪でも、ほぼ毎日開催される盛況ぶりとなりました。つまり、自分自身がトレンドより早く移動することで、未来を簡単に見通すことが可能となりました。

類似の例として、海外トレンドを取り入れることも有効な手法です。
僕の最初の会社はドイツ企業の日本支社でした。ある時、友人の部署がブランド戦略の一環として2015年にカフェをオープンすることになりました。しかし、本業とは異なるプロジェクトのため潤沢な資金は無く、広告費は限られていました。この時に用いられたのが海外で流行り始めていたインフルエンサーで、有名ブロガー、女優 (沢尻エリカさん etc.) に来てもらいSNSを用いた宣伝手法をとりました。当時の僕は、この宣伝手法に半信半疑でした。しかし、結果的にはコストを掛けずに宣伝は大成功、集客にも成功し、カフェの評判も上々です。SNSのポテンシャルを思い知った瞬間でした。インフルエンサーという単語は三省堂が開催している今年の新語の2017年度の第2位に選出されたキーワードです。企画段階を考慮すると2-3年は先行して導入出来ていたと思います。

2. 自分の知識を深いレベルに移動させる (ex. 専門分野を極める、学ぶ)
自動車メーカーのエンジニアは、2-5年後に発売予定の車両を開発して車内で評価しています。自動車メーカに勤務していた頃には、日本政府の5年, 10年後のロードマップ、2020年の東京オリンピックに向けた自動運転デモンストレーションの各社の開発状況の資料が流れてきていました (部門、ポジションに依存します)。このような情報を元に、未来の車両コンセプトを考えています。そのため守秘義務はあり口外は出来ませんが、一般的な消費者より、自動車の未来を見ていることは間違いありません。

研究者はさらに未来のコンセプトを考えています。ただし、本当に実用化出来るのかは分野によります。

仕事として携わらなくても、興味のある分野の展覧会に行ったり、論文、専門雑誌を読むことで、一般的人よりは数年先の未来を垣間見ることも可能です。自動車関係の展示会では ”人とくるまのテクノロジー展” がお勧めです。併催の学術講演は有料 (一部の特別公演は無料) ですが、展示会のブースを回るのは無料です。毎年、横浜で開催されています (2020年は中止)。


3. 情報で溢れる世界で自分の立ち位置を移動させる (無料から有料へ)
情報が溢れている世の中では有料コンテンツを利用することも、受け取る情報の質を移動させることが出来るので有効です。最近はオンラインサロン、メールマガジンなど専門家と繋がれる時代です。従来の僕は、無料コンテンツしか利用しませんでした。しかし、最近は有料の海外モータースポーツ記事とオンラインサロンを利用しています。お金をかけて得る情報は、流行りの一歩、二歩先の情報もあり、ある程度の質も担保されているイメージです。
情報収集の手段としては、自身が移動したり展覧会に参加する場合と比べて、コスパは高いと思います。ただし一次情報ではないので、盲目に信じないで、自分で情報を確かめる必要はあります。

(4) まとめ:世界の9割はコピーだ!

世界に普及するものはコピーが容易なものです。"容易"というのはコピーの労力に対して、どの程度有益かで決まります。コピーの対象は、物質的な物だけでなく、精神的なものも含みます。そして、コピーするのは企業だけでなく、個人の場合も多いです。

例えば、
マクロな視点では自動車の基本機能はメーカーによらずほとんど同じです。
iPhoneやMacのようなスタイリッシュな携帯電話、PCが他社から発売されます。
Instagramでは有名人を真似するユーザーが沢山います。
TwitterのRTはそのままコピーです。

どんなに優れていても、コピーしづらいと普及しません。
逆に言えば、僕らの手元に届くもの、その9割はコピーしたものなのです。

もし未来予測をしたい場合は、コピーされる前に見つけて、増産過程に立ち会えば良いのです。簡単ではないかもしれませんが、上述のような視点から情報を得て、1-2年後を想像するだけでも楽しいです。

読んで頂きありがとうございました!
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