せーなん

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出撃前夜

少年が一人、自室へ戻った。彼の表情は険しい等と形容するには足りない闇(くら)さを帯びている。部屋の物は多くはなく、ベッドと机、そして雑貨入れとして兼用している本棚が1つだけだ。彼はその手に獲物があるかのように素振りをし始めた。確かに手には何も手にして居ないのだが、鋭い剣閃を生み出し、空を裂いて風が鳴いた。若いが、然し、精錬された無駄の無い動きを既に身に付けている。 「入るぞ」 部屋の扉の向こうから最近聞き慣れてきた声がした。そして、少年の返事も待たずに部屋に入る。一方で少

    • SS《ある工房の一幕》

      「先輩、この武器には見た事のない部品が付いてますね」 手に取った銃器をまじまじと、そして角度を変えて観察している。 「先の戦闘で鹵獲した武器のひとつだな。折角だ、今の内に話しておくのも悪くないか」 男は後輩の疑問に答えるため、立て掛けてある銃火器をひとつ手に取った。典型的な突撃銃の形状だが、弾倉部が存在しておらず、前方にグリップが備えられている。 「俺達が開発製造しているのはこの形式だ。エネルギー供給方式は知ってるな?」 「はい、使用者の魔力をグリップから供給しています」