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僕らの友情は、これからも続いていく。

明日で9年になる。もう9年。まだ9年。さまざまな感情がよみがえる。

震災当日は、バンドの仲間たちと池袋のスタジオにいた。ひとまず建物の外に退避することになったが、エレベーターは止まってしまっている。仲間たちが重さ100kgある電動車いすを抱えて運び出してくれた。

エレベーターが止まっていれば自宅にも帰れない。計画停電になれば車いすを充電することもできず、家から一歩も出かけられなくなる。震度4クラスの余震が来るたび、家具が倒れてきてそのまま逃げ出せなくなるのではないかという恐怖に震えていた。

普段はあまり障害者であるという実感を持つことなく生活していた私だが、あらためて自分が障害者であること、そしてその“弱さ”を突きつけられた。東京で暮らす私でさえこのような状況なのだから、被災地で暮らす障害者の方々はどれほどの苦境に立たされているのだろうと思うと、胸が押し潰されそうになった。

その後、著名人が続々と被災地へ赴き、炊き出しや瓦礫の撤去といったボランティアに精を出すニュースが流れるようになった。忸怩たる思いだった。私だって、みなさんと同じように力になりたい。現地に行ってボランティアしたい。だが、こんな体の私が訪れたところで、いったい何の役に立てるというのだ。

だが、実際にボランティアに訪れ、東京に戻ってきた友人たちの話を聞くにつけ、心境に変化が訪れるようになった。なかでも、女優・水野美紀さんが伝えてくれた言葉が大きな後押しとなった。

「女性の私だって、どれだけ物理的な手伝いができたかわからない。でも、みなさん『何より来てくれたことがうれしい』と言ってくださった」
「『踊る大捜査線、見てました』とか言ってもらって。あのときほど、あの作品に出ててよかったと思ったことはなかったなあ」

こうして、私は被災地へと向かった。そこで出会ったのが、この看板と、黒澤健一さんだった。

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「乙武洋匡の七転び八起き」
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