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日本で“アパルトヘイト”が始まる日。

「ああ、またうるせえやつが出てきたな」と思われるのだろう。だが、やはり書かずにはいられない。なぜ、「うるせえやつ」と思われてまで声を上げるのかは、きっとみなさんが納得する形で、文末に記すことにする。

昨日のニュースの件だ。

千代田区にある「赤坂エクセルホテル東急」では、7月9日以降、感染対策の一環としてエレベーターを「日本人専用」「外国人専用」と分け、さらには外国人宿泊客に対しては日本人と同乗しないよう求める張り紙をしていたことがわかった。

これがネット上で拡散されると、「差別的だ」との指摘が相次いだ。ホテル側はすでに張り紙を撤去しているとのことだが、いったいなぜこんなことが起こってしまったのか。怒りを通り越して、呆れてさえしまう。だが、ただ呆れているだけでは社会に進展がなくなってしまうので、私なりにしっかりと向き合っていこうと思う。

まずは、ホテル側のコメントから見ていこう。

「コロナの感染拡大防止を目的に、海外からのオリンピック関係者と、一般の利用客の動線を分けるために掲示しました。受け入れ施設に関する東京2020組織委員会のマニュアルをもとに、感染対策の一環として行いました」

つまり、「五輪関係者と一般宿泊客の動線を分ける」ための措置として、今回の張り紙に至ったというのだ。たしかに、内閣官房が公表している『ホストタウン等における選手等受入れマニュアル作成の手引き』には、「他の宿泊客など、選手等以外の者との接触を避けるための措置を取る」ことが明記されており、ホテル側の意図は汲み取れる。

ならば、その切り分け方を誤ったと言わざるをえない。上述した趣旨に沿うならば、「五輪関係者」と「一般宿泊客」と分けるべきだった。もしくは「隔離中の宿泊客」と「一般宿泊客」と分けてもいいのかもしれない。しかし、今回、ホテル側は「日本人」と「外国人」に分けてしまった。

これらを「些細な違い」と受け取る人もいるが、私は大きな違いだと思っている。感染対策として重要なのは、海外からウイルスが持ち込まれないようにすることだ。ならば、重要なのはその人の国籍や人種ではなく、「どこから来たか」であるはずだ。海外から渡航してきた直後の日本人であれば隔離する必要があるし、日本在住の外国人を隔離する意味などない。

つまり、「日本人専用」「外国人専用」などと分けることは、まったくのナンセンスなのだ。

なのに、なぜこうした雑な分け方をしてしまったのか。それは、ホテル側が「国内に住む人=日本人」という、とっくに錆びついたはずの、旧来の発想から抜け出せていないからではないだろうか。日本には、様々な国にルーツを持つ、じつに多様な方々が住んでいるというのに、頭の中がそうした現実に追いついていないのではないだろうか。

ホテル側は、「差別する意図はなかったが、誤解を生じさせてしまいお詫びする」という、もはや定型となったコメントを発表していて草も生えない。「差別の意図があったか」など誰も聞いていない。もし差別の意図があったなら、即時営業停止レベルの話だ。

聞きたいのは、なぜ観光業のど真ん中にいながら、“日本版アパルトヘイト”とも言える、悪質極まりない表現に至ってしまったのか、その経緯においては誰も疑問を抱かなかったのか、についてだ。この点について誠実な対応を取らず、このままお決まりの謝罪文で済ませるなら、エクセルホテル東急は大いに信用を損なうことになるだろう。

もうひとつ。この件に関して、とても悲しく、そして恐ろしく思ったことがある。

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