100ヶ国訪問を達成した私の表情が、思わず曇ってしまうその理由。
今月中旬、南米を訪れていました。アルゼンチン、ウルグアイ、チリ、コロンビア、エクアドルの5ヶ国。じつは、3年前の同じ時期にまったく同じ行程ではないものの、やはり南米旅行を企てていたのですが、コロナ到来であえなく断念。今回は、そのリベンジ旅行でもありました。
そして、最後に訪れたエクアドルで、ついに100ヶ国達成。コロナ禍でずいぶん足踏みをしてしまいましたが、ようやく念願を叶えることができました。初めて海外を訪れたのは中学2年生のとき家族と行ったハワイ旅行だったので、じつに32年間かけて100ヶ国を達成したことになります。
私は、両手両足がない状態で生まれてきました。両親は、当初「この子は一生寝たきりかもしれない」と思っていたそうです。それが自分で起き上がり、歩きはじめ、いつしか電動車椅子を使ってどこへでも出かけていくようになりました。そして、今回ついに100ヶ国訪問を達成。これには、さすがに自分でも特別な感情が込み上げてきます。よくやったな、と。
もちろん、物理的な理由から一人旅ができない私は、どうしても友人たちに同行してもらわなければなりません。そうした意味では、とても私ひとりでは達成することができなかった数字ですし、一緒に旅をしてくれた仲間たちには、心から感謝するばかりです。また、丈夫な体に生んでくれた親にも感謝しなくてはなりません。
100ヶ国を訪れ、さまざまな経験を積んできました。インドでは街中で色水やカラースプレーをかけ合う祭りに参加したり、ミャンマーではおもてなしにネズミやコウモリを出されたり。ルワンダでは大量虐殺からの復興に向けた取り組みを取材したり、キューバでは葉巻やラム酒の美味しさよりもその治安の良さに驚かされたり。
こうして挙げはじめたらキリがないほど、思い返せば素晴らしい体験ばかり。あらためて旅がもたらしてくれる感動や成長に感謝するばかりなのですが、しかし100ヶ国を達成したいまも、どこか晴れやかによろこべずにいる自分がいることも事実です。以前からずっと目標にしてきた数字をクリアしたにもかかわらず、私の表情がどこか曇ってしまうのには、理由があるのです。
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