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今だからこそ、スポーツマンシップを。

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オリンピック開幕を迎える数日前、日本スポーツ界は別の事態で大きく揺れていました。高校野球の鳥取大会で優勝候補の一角と目されていた米子松蔭高校の学校関係者にコロナの陽性反応が出たことで、同校は出場辞退を余儀なくされたのです。しかし、出場する選手たちには濃厚接触者が一人もいなかったこと、また同校野球部の西村虎之助主将による出場を願う悲痛なツイートが拡散されたこともあり、ネット上では「さすがに理不尽だ」といった同情論が噴き出し、地元関係者の尽力もあって、最終的には大会復帰を認められることになったのです。

この件について語るとき、絶対に忘れてはならない“影の主役”がいます。それは、一度は不戦勝として勝ち名乗りを受けながら、あらためて米子松蔭との対戦を容認し、その末に敗れ去った境高校野球部の存在です。先ほどにも触れたように、米子松蔭は優勝候補の一角。対戦すれば、自分たちが敗れる可能性が高くなるにもかかわらず、境の井上翔太主将は、「松蔭とも試合したかった」と、米子松蔭・西村主将のツイートを拡散までした上、彼らの大会復帰を快く受け入れたのです。

オリンピック開会式と同じ日、準々決勝まで勝ち進んだ米子松蔭は、激しい打撃戦の末に敗退しました。だが、西村主将は「グラウンドで終われて良かった」と感謝の言葉を口にしています。これも一度は出場辞退した米子松蔭との対戦を受け入れた境の決断があってこそ。境ナインのスポーツマンシップにあらためて敬意を表するとともに、心から拍手を送りたいと思います。

一方、オリンピックでは残念な場面も報じられました。男子サッカーのグループリーグで、格下と見られていたニュージーランドに敗戦を喫した韓国代表のイ・ドンギョン選手が、試合後に握手を求めた相手FWクリス・ウッド選手の手にわずかに触れただけで、その場を立ち去ってしまったのです。この態度については日本のメディアだけでなく、韓国の国内メディアも批判的に報じたといいます。

もちろん、コロナ禍においては選手同士の接触はできるだけ避けるべきであるとか、予想外の敗戦直後のショックで心の平穏が保たれていなかったなどの理由はあるかと思います。しかし、後になってイ・ドンギョン選手本人も謝罪コメントを出しているように、あまり好ましい態度ではなかったことは確かだと思います。

いまだ感染拡大を続けるコロナ禍においては、こうしてオリンピックを開催すること自体に疑義を抱かれています。そんななか、ほぼ唯一と言っても過言ではない大義が、「アスリートのために」。ここまで鍛錬を重ねてきたアスリートに罪はないのだから、せめて彼らが持てる力を発揮できるよう応援しよう、との思いでいる方も決して少なくありません。

望むと望まざるとにかかわらず、いつも以上に「アスリート頼み」となってしまっている今大会において、どうか選手たちにはフェアプレー精神やスポーツマンシップを発揮して、世界中の子どもたちに範を示してもらいたいと願っています。

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