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(書評) 「シンプル・ライフ 世界のエグゼクティブに学ぶストレスフリーな働き方」

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  在宅勤務、オンライン会議、Zoom等で、新コロ騒動以来、PCやスマホと接する時間が長くなった人は多い。睡眠以外の時間はほぼネットに繋がっている人も珍しくない(食事や入浴、トイレでもスマホを離さない)。

私は主にPCしか使わないが、PCは仕事に欠かせないので長時間接しているし、やはり新コロ以来、接する時間がかなり増えた。

でも冷静に考えると、私の場合、本当に必要があってPCを使う時間は7割位、娯楽や息抜きで使う時間が3割。動画を見たり、たいして必要ないサイトを見たりするのに結構時間を費やしている (反省)

周りに聞いてみても、新コロ以来、本来の目的(仕事、調べ物など)以外でネットを見る時間が増えたという人が多い。漫然とネットを見るのは時間の無駄だし、電磁波、ブルーライトの害もあり、目にも体にも悪い。でもネットは生活の一部になっていて手放せない---

 そんな悩みを抱える現代人に「どうすればインターネットに飲み込まれず、ちょうどよい距離を保てるのか」のヒントをくれる本。エグゼクティブという副題から「自分には関係ない」と思われるかもしれないが、一般人の私達にも参考になる内容だ。

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 この本の刊行当時のデータでは、全米の労働者の3/4が仕事にストレスを感じ、睡眠時間が足りていない。その最大の理由が、携帯やPCを通じて家にまで仕事が持ち込まれること。絶えず膨大な量の連絡や情報にさらされ、心身ともぐったり疲れている。テレワークをしながら、1人の人がブログ、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムといった複数のSNSで発信するのが珍しくない今は、当時よりさらにデジタル疲れしている人は多いと思う(自分では気づいていなくても)。

著者は「何とつながるか、何をするかよりも、つながること、何かをすることが目的になってしまっている。つながることが創造ではなく義務と化している」ことが問題だと言う。SNSの一番明らかなマイナス面は絶えず気をそらされる点だ。一遍に複数の作業をする「マルチタスク」の弊害がよく言われるが、世界的コンサルティング会社、マッキンゼーもこう警告する。

「常にオンの状態でいるマルチタスクの仕事環境は、生産性を低下させ、
創造性を損ね、充実感を奪い取る」

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著者によると「電話をかけたり、ネット、TV、音楽を聞くのは、静寂の中にいると落ち着かないので、喧騒の力で恐れや不安を忘れようとするから」。でも、そういうことを繰り返しても根本的な解決にはならないという。


ある調査によると、脳が一番活発に動いて創造性が増すのは無音状態の時。私達はシーンとしているのに耐えられず、つい音楽をかけたりラジオをBGMにしたりするが、実は静寂には大きな価値があるのだ。


私たちは「目的地に着く」ことばかりを考えているせいで、人生の多くの 時間を無駄にしている。しかし人生とは、あくまで「今ここ」の積み重ねで しかない」

じゃ、どうしたらいいの? 著者のアドバイスは、

できる限り多くのことを同時にこなそうとせず 目の前にいる人との時間を優先すること。そして、デジタルのツールを使う必要がある時には、 惰性的ではなく意識的に使うこと。


食べるときは食べる、歩くときは歩く、人と話すときは話すことに集中することで人生の充実度が増すという。スマホはオフにして。
今していることに集中するのは、「今を生きる」こと。「今」を粗末にしながら、より良い未来を望んでいるというパラドックスに気づくことが大事ですよね。

著者は、マインドフルネス(瞑想)も勧めている。大事なのは静寂の中で自分の中の深い部分とつながること。それによって深い洞察が得られる。

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本の中のアトランティック・マンスリー誌の記事は印象的だ。

「人間の性質について、フェイスブックで明らかになったことが
あります。つながりは絆と同じではないことがわかりました。
ほかの人と瞬時につながれること、完璧につながれることは、
救いにはなりません。幸せでよりよい世界を築きもしませんし、
人間性のさらなる解放をもたらしもしません」


もともと、フェイスブックやツイッターといった(河馬〜留が作った)メディアは、使えば使うほど依存性が高くなるように作られているという。  「いいね!」やフォロワー獲得は承認欲求(認められたいという欲求)を満たしたいという本能に訴える。リアルで充実感を感じていない人ほど、のめりこむように作られているそうだ。そして、一旦ハマるとエンドレスに続く。

でも、そうやって見知らぬ人達とのコミュニケーションに毎日多くの時間とエネルギーを使う一方で、家族や恋人、友人とのリアルなコミュニケーションが希薄になっていたら本末転倒。時間もエネルギー、体力も有限なので、バランスが大事ということ。


 私はスマホを持っていないので、外出時はネットにつながっていない。 バスに乗っている時は外の景色を見るし、外を歩いている時は、花や木を眺めている。そういうことを意識的にしていないと、街の様子も花の香りも風の感触にも気づかずに、ただ通り過ぎてしまう。それはもったいない。

SNSを完全にやめるとか極端に走らなくても、1日のメールチェックは何回と決めるとか、寝る1時間前にはネットを消すとか、休日は何時間スマホをオフにするとか、できる所から意識的にやっていくだけでも違うと思う。

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 TEDってご存知ですか? 世界の誰でも自分の話したいことをプレゼンできて動画配信されます。プレゼンは短時間なので、要点をわかりやすく伝えています(基本的に英語)。TEDでは、SNS依存、スマホ依存等についても、多くの専門家(IT、メディア関係)が発信しています。下はそれを日本語に訳した記事。

まあ「やめろ」と言われても、ほとんどの人はやめないと思うけど(この激動の時代には情報収集のために必要だという面もあるし) SNSにハマる仕組みと陥穽を知り、自分なりの接し方を考える参考になるかもしれません。

なぜデジタル機器の画面を見て過ごしていると幸せから遠のくのか?(TED)
ソーシャルメディアはやめなさい:カル・ニューポート(TED)




        

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