見出し画像

NO.2の育て方⑲「軍師殿、お手並み拝見」のプレッシャーに耐えられますか?

どんな組織にもさまざまな課題がありますから、その課題解決のためにトップがその才能や経験を買って社外から優れた人材を採用することがあります。

ただ、その人材が持ってる能力を発揮することなく、その組織を去ってしまうことも非常に多いのが現実です。皆さんの中にも、そのような人を見てきたご経験もあるかと思います。

では、なぜこうしたことがよく起きるのかは考えたことありますか?

今回はNO.2候補(=軍師)として入社した人材が活躍しない理由とプレッシャーに勝てないとNO.2には到底なれないという少し厳しめのお話です。

■孤立無援のなか、成果を焦ってしまう

ある日突然、自分たちよりも高い役職で新入社員として入社してきて、マネジメントを中心に仕切り出す。よくある話ですが、全く上手くいかない場合が多いです。

中途入社は注目を浴びやすく、多くの既存メンバーは遠巻きに眺めているものですし、ごく一部、新参者に積極的に関わろうとする者もいるかもしれませんが、あからさまに批判をする者も出たりします。

共通している態度は何ごとにも非協力的で、お手並み拝見という好奇の目で眺めていることです。

中途入社したNO.2は短期間で成果らしいものを見せつけ、既存メンバーからの信用や信頼を得るために功を焦るあまり、空回りし、かえって組織を混乱させ、批判や非難の声を次第に大きくさせてしまうことがあります。

自ら採用を決めたはずのトップの積極的な支援や協力もなく、NO.2は自分の策を理解しない無能どもと内心悪態をつくか、孤立と孤独でメンタルをやられてしまうか、成果を出せないための自信喪失か、そのいずれかでその組織を早々に見切りをつけてしまう。こんなところです。

コンサルの立場で企業に入っていく場合も同じような状況かもしれません。コンサルなどは怪しい、胡散臭い、上から目線でいけ好かないと思われる立場のひとつですから心構えとしては同じです。

■突然やってきた人間にすぐ従えないのは人として自然な感情

実績十分で能力も経験もある有能な人材が自社にやってきた。これでウチの会社ももっと良くなるかもしれない。本来は喜ばしいことなのかもしれませんが、人の感情というのは矛盾に満ちたものです。

すでに出来上がってしまっている仕事のやり方や体制を見直すことの手間の発生、指摘されたくない課題、既存メンバー内における強い仲間意識、長らく努力をしてきた自分よりも良い待遇に対する嫉妬。よそ者が自分たちを否定しに来た。現場の苦労も知らないような人間の指図は受けたくない。仲間とは認めない。

嫉妬や自分たちを否定されているような複雑な気持ちを持つのもまた自然な感情です。

もっとも、「よそ者」としての立ち振る舞いにも原因がある場合もあります。

自社のことをよくわかっていない状態で、いくら他社で実績があったとしても、過去の成功事例をそのまま持ち込んだところで上手くいかないでしょうし、現状把握もしないまま決めつけたり、上から目線で話をすれば人の反感を買うのも当たり前ですので、郷に入っては郷に従えの精神で素直に教えを請う態度でなければ既存のメンバーに到底受け入れてもらえないでしょう。

■諸葛孔明でも、最初は蜀で受け入れられなかった

三国志の天才軍師と評される諸葛孔明は蜀の劉備から軍師として三顧の礼で迎え入れられましたが、最古参である張飛、関羽の反応は当初最悪でした。

いくら才があると言っても、若造で、戦の経験もない。張飛たちからすればそんな海のものとも山のものともわからない人間を軍師として受け入れ、自分たちの命を預けて、計略に従うなど到底できないというものでした。

ところが諸葛孔明は初戦から自分の計略の正しさを実戦で証明してみせます。これにはさすがの張飛、関羽も諸葛孔明の実力を認めざるを得ませんでした。しばらくはぎくしゃくしながらも、諸葛孔明は正式に軍師としての地位を確立していくことになります。

同様の話は、孫子の兵法では孫武が将軍として認められるようになった練兵の話や映画でもおなじみのキングダムではテンが信の率いる1000人隊の軍師として受け入れられるようになるまでの風当りの強さなどもまさにという感じです。

仮に実力があったとしても、信用や信頼をすぐに手に入れるのは簡単ではないことはいつの時代であっても同じことです。

そして、どんなに正しいことを説いていたとしても、自分たちが選んだ訳でない人物を人はそうそう受け入れてくれません。

この現実を肝に銘じない限り、実力、実績があろうとも新しい環境で成果を出すことはできず、早期に去っていく原因となってしまうのです。

■「お手並み拝見」というプレッシャーに勝ち、成果を出す者だけがNO.2になれる

私の経験を少し話すと、経営者から請われて鳴り物入りで中途入社しても成果らしきものを出すのに、早くて半年、少なくとも最低1年以上は時間が必要というのが実感です。

たいがい、自分たちの快適な環境を破壊しようとする敵が現れた、そのような扱いを受けるのがほとんどです。

そうした経験を何度もすると、もう通過儀礼みたいなものとして割り切ってしまえるのですが、初めてそういう経験をする人にとっては苦しい時間と感じると思います。

特に社内改革みたいな大風呂敷を広げて、ことにあたる場合、始めから経営者の手厚いサポートやフォローがあるとNO.2として仕事も多少はやりやすいのですが、課題が多すぎる会社の経営者にそれらを期待すること自体が間違っているのも真実です。

経営者は採用した時点で自分の仕事は終わり、あとは本人に頑張ってもらうだけといった感じですし、外部から幹部候補を迎えるという経験もほとんどないので何をしたらよいのかわからないというのもあります。

だから、孤立無援のまま仕事を始め、周囲に疎んじられ、メンタルをやられてしまう訳です。

NO.2として重要な能力のひとつにレジリエンスがありますが、成果を出すために努力しようと思っても、逆風が吹いているところからのスタートであるという覚悟がないまま何か始めようとしても上手くいきません。

では、どうすれば良いのか?と思うでしょう。

・素直にわからないこと、知らないことを教えてもらう
・何が目的で、何をしようとしているのか明確にする
・協力して欲しい気持ちをきちんと伝える
・周囲とコミュニケーションをしっかり取る
・早く成果を出そうと焦らない

それほど難しいことではないことばかりなのですが、下手に自分の能力に自信を持っているとプライドが邪魔をしてこうした態度が取れません。

世の中にNO.2として活躍している人材が少ない理由はさまざまありますが、デキる人間ほど謙虚で、プレッシャーにも強いということを知らなかったり、理解せず、スキルでどうにかしようと考えるようではまだまだNO.2を全うするだけの胆力がないということです。

最後までお読みいただきありがとうございます。