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NO.2の育て方㊾強い社長を演じ過ぎないー支えたいと思われる瞬間とは

経営者なら社員の前で愚痴や弱音、不安な気持ちを吐露する訳にはいかないと思い、常に頼りがいのあるタフな社長を演じてしまうかもしれません。

確かに年中、社長から弱音ばかり聞かされていたら社員も頼りなく感じるでしょうし、社長のプライドもあるでしょうから、弱々しい自分をさらけ出したくないと思います。

けれども、内心は「どうしよう・・」と誰にも言えない悩みを抱えているのも本音でしょう。

3社にわたりナンバー2を務めてきたキャリアの私が時々質問されることのひとつに、

「どうしてナンバー2をやろうと思ったのか?」
「何のきっかけでスイッチが入ったのか?」

という質問があります。

私が新卒で入社した会社での出来事です。
社会人になって2~3年、まだまだ毎日覚えることばかりで、自分は目の前の仕事をこなすことに必死だった頃です。

社長は月に何度か仕事終わりに飲みに連れて行ってくれる人で、ある日、二人きりで飲みに行く機会がありました。

その時の会話が何であったかはもう忘れてしまいましたが、社長から「今月は500万の赤字だったんだ・・」という話を聞かされました。

社員数5人程度の会社でしたから、今思えばその規模での500万はさぞ大きな負担だろうと理解できますが、目先の仕事に必死な自分は毎日忙しいと思っていて、売上のことなど考えたことはありませんでした。

一社員として毎日遅くまで一生懸命に仕事をしていて忙しいと感じているのに、会社としては全然売上が足りないとは夢にも思いませんでした。

経営者というのは売上と資金繰りが最も頭を悩ませることなのだとその時にはじめて意識するようになりました。

普段は比較的無口で、仕事を手取り足取り教えてくれるような社長ではありませんでしたが、私はとても尊敬していてカッコいい社長だと思っていました。

残業代は1分単位で計算して、きちんと残業代も支払ってくれましたし、僅かながらも毎年昇給もしてくれました。

月に何度か飲みにも連れて行ってくれ、社員旅行も毎年連れて行ってくれ、働くうえで何の不満もない会社でした。

そういう環境で働かせてくれている社長が困っているのであれば、自分は何ができるのかをその日から真剣に考えました。

まだ若く未熟で、営業などもしたことないので、売上を増やすという貢献は正直できません。

それならば無駄となっているコストを減らすしかないと考えました。

・残業をできるだけしないで済ませるにはどう仕事の効率化を図ったらいいのか
・新しく入社してくる人に一日でも早く戦力になってもらうためにはどうしたらいいのか
・取引先と円滑に効率的にやり取りし、いつまでも信用を維持するにはどうしたらいいのか

当時はそんな程度のことしか考えることはできませんでしたが、QCなどの業務改善の本などを読み漁り、できることからどんどん着手しました。

仕事に慣れてくると、外でいろんな方々と知り合う機会も増え、特に営業らしいことはしなくてもなぜか新しく取引先になってくれる会社が増えたり、
既存顧客から見込み客の紹介を受けたりすることもありましたが、その当時は再現性のある営業とは何かなど考える余裕もありませんでしたし、営業そのものが苦手でした。

自分には先輩が二人いましたが、二人ともベテランなので案件をこなすのはできてもいわゆるマネジメントといった仕事は全くしていませんでした。

先輩という存在がいるので、私は出しゃばり過ぎずに効率的に仕事をするということを常に心がけ、社内の業務改善に勤しむ日々を経て、先輩を差し置いて晴れて番頭というポジションを手に入れることになりました。

「今月は500万の赤字だった」という話を聞いてから3年後くらいだったかと思います。

社長からは仕事でもすっかり信頼してもらえるようになり、その後は社員も年々増えていくような状況になりました。

いろいろ考えることがあり、結局は自ら退職してしまいましたが、ナンバー2としての第一歩を歩むきっかけとなったエピソードです。

頼りがいのある社長のふと漏らした弱音を聞かなかったら、恐らく自分の仕事人生もまた違ったキャリア形成だったと思います。

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社員というのは仮に営業部門で数字を追いかけていても、経営に必要な数字のことまでは意識が向かないでしょうし、バックオフィスで働いていればなおさら実感はわきにくいと思います。

かつての自分のように、多くの社員というのは良くも悪くも日々目先の仕事をすることしか考えが及びません。結果として、会社が減収減益であろうと給料は毎月支払われるものだと思って過ごしているものです。

ウチの会社は今のままでも大丈夫なんだと思い込んでいる社員を相手に社長が「危機感を持て」、「経営目線を持て」と言ったところで社員には全く響きません。

経営者になってみないとわからないことも確かにありますが、一社員であっても、きちんと経営の基本的な仕組みを理解すれば経営者の悩み、苦しみを想像し、社長のため、会社のためにできることは何だろうかと考えるくらいのことはできます。(自分の生活を守るためという動機であってもよいです)

社長も積極的に愚痴や弱音を吐きましょうということでは決してありません。

ただ、強くて頼りがいのある経営者像を無理して演じ続けていると社員はぬるま湯に浸かり続け、社長の役に立ちたいと思う社員は生まれにくいのも事実だと思います。

これぞと思って目をかけている社員とじっくり話す機会があれば、時々はちょっと弱っている自分をさらけ出してみても良いのではないでしょうか。

そこでナンバー2に相応しい人材かどうかを見極めることもできるかと思います。

私が理想のナンバー2としてよく引き合いに出す、諸葛孔明も藤沢武夫氏のエピソードでも、トップが高い志しを語る一方で、自分の弱みを吐露していたことがナンバー2の心に火をつけたと解釈しています。

強いと思っている人がふとした瞬間に見せた弱さに、何か役に立てないだろうかと行動してくれる人もいます。

そんな人がナンバー2になって支えてくれると社長も心強いのではないかと思います。

参考になりましたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

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