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人生で大切なことはファイナンス理論が教えてくれた

「財務・会計」という科目が苦手でした。
診断士試験を振り返ると一番苦い思い出があるのは財務・会計です。合格した年の一次試験で60点を超えなかったのは財務・会計だけでした。

それでも足切りになるほどひどい点を取らずに済んだのは、1冊の本との出会いがあったからです。それがこの本。
『15歳からのファイナンス理論入門―桃太郎はなぜ、犬、猿、キジを仲間にしたのか?』慎泰俊著

アカウンティングは最後まで苦手だったですが(いえ、今でも苦手です)、ファイナンスはなんとなくわかるようになりました。細かい計算はともかく、基本的な考え方がこの本で身についたので、苦手意識が薄くなっていたのです。実際、一次試験はファイナンス部分で点数を稼いで、とりあえず52点にまで持ち込んでおきました。

そして、今になって考えると、ファイナンス理論から学んだことが、生き方そのものに役に立っていると思うようになりました。

■ファイナンス理論の基本

「リスクとリターン」「リスク分散」「現在価値と将来価値」
ざっくりいうとこの三つが、ファイナンス理論の中核です。そしてこの考え方はどれも、現在の僕が生きていく上で大切にしていることと関わり合っているのです。

「リスク」という言葉は「危険」の意味に解されることが多いですが、本当は違います。少なくともファイナンスで使う場合は違います。

「振れ幅」「不確実性」
これがリスクの意味です。2倍に値上がりするかもしれないけど2分の1に値下がりするかもしれない株と、1.1倍にしかならないけど値下がりしても0.9までの株を比較した場合、前者の方が「リスクが高い」となります。

つまり、というにはざっくりしすぎかもしれませんが、高いリターンを得るには高いリスクを取らないといけないのです。自分を安全地帯において、欲しいものだけ手に入れようなんて都合のいいことは滅多におきません。だから、欲しいものがあるのなら、自分が破滅しない程度のリスクなら取ってチャレンジした方がいいのだ、という結論になります。これは僕が大切している人生訓の一つです。

もちろん、リスクは分散によってある程度、低減させることはできます。「1つのカゴに卵を盛るな!」は、分散投資のメリットを表す格言として語り継がれている言葉です。
このことをテーマに、コラムを書いたこともあります。

分散させることでリスクを低減できるのであれば、多様性のある意見は大切にすべきだし、ダイバーシティは当然のこととなります。これは道徳の問題ではなく、リスクヘッジの問題だからです。日本は「一丸」とか「ワンチーム」とかいう言葉が好きですが、同質性が高い組織は、調子に乗ると勢いで進みますが修羅場に弱い。目的(勝利とか利益とか理念の達成とか)に対して一つになることは重要ですが、スキルや考え方は多様である方が重要で、多様性があるからこそどんな場面にも対処できるようになるのです。

これが僕の組織マネジメントに関する信念みたいなものになっています。

■現在価値と将来価値

「今日1万円もらえるのと1年後の1万円もらえるのと、どっちがいい?」
と聞かれたら、ほとんどの人が今日もらうことを選択するでしょう。「1年後、5千円になってしまうかもしれないが、1万5千円になるかもしれない」というような事になって初めて1年待つかどうかを考えます。待つことの対価、不確実性への対価がもらえる可能性がないならば、現在価値が一番高いのです。ここから導かれるのが
「まずはやってみる」
になります。

もちろん時には、待つことも必要でしょう。寝かせた方が良い場合もあるでしょう。しかしそれは、寝かせた対価が期待できるからです。期待できないなら、「すぐやる」に価値があるのです。

こう考えられるようになったおかげで、先延ばしすることが減りました。

さらに、「埋没費用(サンクコスト)」を知るにいたり、過去への執着が減りました。サンクコストとは、現在より以前に支払われていて、もう返ってこない費用のことです。つまり価値がない。

意思決定にサンクコストを考えていけない。これはファイナンスの基本中の基本の考え方です。しかし人はサンクコストに価値があると考えてしまいがちです。「いまさら止められない」と考えるのはこのせいです。

だからと言っていいと思いますが、僕の中の大きなテーマは「いまさら止められない、を止める」になっています。

■チャンスの神様は前髪しかない

僕の座右の銘とも言える言葉は「チャンスの神様は前髪しかない」です。なぜこの言葉を大切にしているかは、いままでのファイナンスの話で説明ができます。

「チャンスの神様は前髪しかない」から、取り逃さないようにチャンスだと思えばすぐに取りにいく、というのは現在価値の高さです。一方、後ろ髪がないのだから取り逃したチャンスの神様を嘆いても仕方がない、というのはサンクコストで説明がつきます。

僕の人生で大切にしている考え方のほとんどは、ファイナンス理論で説明ができます。診断士受験前、自己啓発系の本やセミナーで「これは良い」と思って取り入れようとしてきたことは、ほぼ全部、ファイナンス理論で裏付けが取れたのです。

診断士試験の合格発表の頃になるといつも以上のようなことを思い出します。

■史上最強の自己啓発は、引き寄せの法則でも、7つの習慣でもなく、財務諸表である

そして2年くらい前、次のコラムに出会いました。めちゃくちゃ面白い。そして、自分の考えが推論から確信になりました。ぜひ読んでみてくださいませ。本当に面白いから。
診断士試験といわず、簿記3級でも史上最強の自己啓発になります。


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