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甲斐よしひろ VS 押尾コータロー MY NAME IS KAI Ⅳ “MEETS RETURNS” @中野サンプラザ

「バンドの音だ」
オープニングの『ブルーシティ』を聴きながらそう感じていた。

近藤真彦への提供曲であり、ソロファーストアルバム『ストレート・ライフ』収録曲。当時の甲斐さんの言葉を借りれば「ハードボイルド」タッチな曲。アコーステックギクのイメージが強い”MY NAME IS KAI”らしくはないと思える曲だ。だが、そんなことはなかった。しっかりはまっていた。

今回のツアーは、押尾コータローとともに元レイニーウッドのキーボード、上綱克彦も参加している。押尾さんの超絶プレイはわかっていたことだが、上綱さんが加わることで音にこんな厚みがでるのか、と感じていた。

途中、押尾さんの唯一の休憩時間(笑) は、上綱さんのソロキーボードと甲斐さんのヴォーカルで『青い瞳のステラ 1962年夏』。上綱さん自身の作であり、柳ジョージ&レイニーウッドのシングル曲だ。

発表当時(1980年)、甲斐さんはサウンドストリートで「この曲はいい、ヒットしてほしい」と繰り返し言っていた。第一期甲斐バンドのラストライブ、黒沢フィルムスタジオでの”SECRET GIG”でこの曲を歌った。60歳の誕生日、東京ドームシティホールでの”Rolling birthday 60”でも上綱さんをゲストに迎え、この曲を歌っていた。本当に好きなんだと思う。歌いこんでいる雰囲気が伝わってくる。

10代後半に聴いたときには、「いい感じの曲だな」と思ったけれど、いま考えると本当はなにもわかっていなかった。歳を重ねたことで、この歌の情景が浮かび、背景が理解でき、本当の意味での良さがわかってきたように思う。少しだけ涙腺が緩んだ。

そしてこの日、圧巻だったのは『破れたハートを売り物に』。

この曲のオリジナルは、アフリカンパーカッションが重なり合う。生演奏での再現は無理と思いわれていた(普段のライブではTVミックスをベースに使って、ギターやキーボードをかぶせている)

それをギター1本でやってのける。ギター1本でベースもドラムスも兼ねて聴こえるような押尾さんの超絶プレイに、上綱さんのキーボードが重なると、オリジナルを彷彿させる音になっていた。甲斐さんも歌っていて楽しいだろうな、と思う。

ツアー中に出演したラジオ番組で「押尾君はオンリーワン。世界で彼にしかできないプレイで、唯一無二のギターリスト」と言っていた。この日のMCでは「このツアーは本当の面白かった」と繰り返し言った。

押尾さんは「高校のとき、甲斐バンドのステージに何度も足を運び、コピーバンドをやっていた。それがいま、本人とコラボできるなんて。それも今回で3回目。信じられない」と感激した口調で語っていた。終わってしまうのがさみしい、とも口にしていた。

甲斐さんは「前回の”AGAIN”の最終日に押尾君は泣いてしまって(笑) きっと明日のビルボードのあとも泣くんだろう」と冷やかすように言っていた。「泣かなくてもいいんだよ、またやるんだから」とも口にした。

“MEETS””AGAIN” ”RETURNS” と続いたきた、甲斐よしひろVS押尾コータローのコラボツアー、近い将来、またきっとあるのだろう。ツアーが終わってしまうさみしさを抱えながら、次回のツアーに思いをはせる。そのときは今回以上に凄いライブを見せてくれるに違いない。

<セットリスト>
1.ブルーシティ
2.かりそめのスイング
3.ナイト・ウェイブ
4.ダイヤル4を廻せ
5.異邦人の夜(シスコナイト)
6.最後の夜汽車
7.安奈
8.Together!!!(押尾コータローソロ)
9.青い瞳のステラ 1962年夏
10.嵐の季節
11.翼あるもの
12.漂泊者(アウトロー)
13.風の中の火のように
14.破れたハートを売り物に

15.ポップコーンをほおばって
16.氷のくちびる

17.熱狂(ステージ)

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