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【実例から学ぶ】アイデア投稿サイト運営の成功のポイント/USER INNOVATION LAB. レポートVol7

本記事は博報堂と法政大学西川英彦研究室の共同で立ち上げましたユーザー・イノベーションの研究会「USER INNOVATION LAB.」の活動をレポートする連載です。
(「ユーザー・イノベーション」「USER INNOVATION LAB.」の詳細は下記をご覧ください)

こんにちは!
博報堂ブランド・イノベーションデザインの比留川と申します。

 2020年に博報堂に入社した2年目で、主に企業の商品開発の支援を担当しております。

今回のテーマは、ユーザーからアイデアを集めるプラットフォームの運営について。

ユーザー・イノベーションを企業が活用する手法の一つに、ユーザーからアイデアを能動的に応募してもらう方法(=クラウドソーシング法※)があります。

※クラウドソーシング法については、過去の記事で詳しく解説しています

クラウドソーシング法の核となるのが、アイデアを集めるプラットフォームの運営。

そしてこのプラットフォームの運営、なかなか成功するのが難しいのです。

アイデア投稿サイトを開設し、初期は生活者からアイデアが多数集まったものの、だんだんと集まりが悪くなり、プロジェクトが頓挫する、なんてこともあるようです。

実際、オンラインアイデア投稿ソフトを使った54か国23,809社のデータを見てみると、年間で集まったアイデアの数が300件を超えるような企業は、全体のわずか1%ほどという結果がでています。(※参考文献1)

そこで今回は、ユーザーからアイデアを集めるサイト「みん100」を運営しているみん100株式会社のみなさんをゲストにお招きした5回目となる研究会の内容をご紹介。

プラットフォーム運営の成功の秘訣を中心にお伝えします。

そもそも「みん100」とは?

本題に入る前に、今回ゲストでお招きしたみん100さんについて簡単にご紹介します。

みん100とは、100円均一商品が好きなユーザーが、作って欲しい商品や新しい商品アイデアを投稿するWEBサービスのこと。
https://min-100.com/

投稿されたアイデアが一定数の評価(「ほしい!」)を集めると、メーカーによって商品化が検討され、採用された場合は、実際に100円ショップの店頭に並びます

みん100に登録しているユーザーの数は1万人超。
大手100円ショップをはじめとした販売店で、これまでに45つのアイデアが商品化され、累計900万個の商品が出荷されています。

商品化されたアイデアのヒット率は驚異の71%(※みん100独自のメーカーへのアンケートより算出)。

冒頭で申し上げたように、こういったアイデア投稿サイトは長く続けるのが難しいのですが、みん100は今年で8年目を迎えるサービスとなっています。

みん100から生まれたヒット商品とその背景

みん100を通じて商品化された成功事例の一つが、ショートカットキーがデザインされたマウスパッド

業界最大手の100円ショップにも導入され、1年で約20万個が売れる大ヒット商品になったそうです。

もともとみん100に「ショートカットキーがデザインされたおしゃれなマウスパッドがほしい」と投稿があったことで始まった企画。

メーカーのプランナーや小売店のバイヤーからは、「マウスパッドにおしゃれ要素は必要なのか?」と疑問の声があがりました。

しかし、「ユーザーから欲しいという声があがった以上、取り組もう」ということになったそう。

そして、このマウスパッドの成功の要因は、独りよがりに「おしゃれ」を定義するのではなく、「おしゃれ」とはどのようなデザインを指すのか、徹底してユーザーの声に耳を傾けたことだといいます。

実際、他にもショートカットがデザインされたマウスパッドは販売されていますが、みん100が作ったマウスパッドはデザイン面で大きく異なります

他のマウスパッド製品は、ビジネスで多用される色を使い可視性をあげたデザイン。「ショートカットキー」というタイトルもいれた分かりやすいデザインになっています。

一方、みん100の製品は、「パッと見てショートカットキーが書かれているとわからない方がおしゃれでいい」というユーザーの声をうけ、極限まで内容と色をシンプルにしたデザインとなっています。

パッと見て「ショートカットキー」が書かれているとわからないことで、周りの目が気にならない点が評価されて、これまでにない新しいユーザーを獲得する商品になったそうです。

ユーザーにアイデアを投稿してもらうだけでなく、アイデアを形にするプロセスでもユーザーの意見を取り入れる。これがみん100からヒットが生まれる秘訣なのだと思います。

持続的なサービスにするためにみん100が工夫していること

次に、アイデア投稿サイトを持続的なものにする工夫を、ユーザーを巻き込むことに焦点をあてて解説します。

ユーザーを巻き込む工夫1:金銭的報酬によらないインセンティブ設計
みん100では、もともとポイント制度を採用していました。

投稿したアイデアにユーザーからの評価(「ほしい!」)が集まったり、実際に商品化されたりすると、みん100グッズと交換できるポイントを付与していたそうです。

しかし、みん100のユーザーに調査したところ、ポイントで何かもらえることよりも、自分のアイデアが商品化されたという体験が嬉しいとの声が多かったそう。

そこで、ポイント制度を思い切って廃止するに至りました。

現在では、アイデアが商品化された時には、商品裏にアイデア主の名前を掲載する、そしてアイデア主にできた商品にカードを添えて発送するという取り組みを行っているとのこと。

このカードには、「私のアイデアで商品化されました」というメッセージとともにその商品の画像が載っており、周りに自慢したくなるようなインセンティブを設計するように工夫しているそうです。

ユーザーを巻き込む工夫2:ユーザーとの接点を増やす
みん100の課題として、アイデアが採用されてから商品化するまでの期間が長く(長い時で1年)、この間にユーザーがみん100から離れてしまうというものがあったとのこと。

このユーザー離脱の課題を解決するためにみん100が行ったことを2つご紹介します。

1つ目は、オウンドメディアの開設。
百円均一の商品に特化したメディアをスタートし、アイデア投稿以外のユーザーとの接点を増やしました。

その結果、ユーザーセッション数はメディアを始める前と比較して3倍以上に。アイデアの閲覧数やアイデア投稿サイトのユーザー登録数も増加したそうです。

2つ目は、みん100のサイト上やInstagram等のSNSを使ってアンケートを実施したこと。

AとBどちらの商品がいいと思うかなど、1タップで簡単に答えられるアンケートを行い、ユーザーに「商品開発に関わる機会」を新たな形で提供

オウンドメディアと同様に、ユーザーと接する機会を増やすことで、その離脱を防いでいるそうです。

以上が、研究会#5の内容のまとめです。

みん100さんのお話の中で、アイデアを投稿するユーザーは報酬をもらうことよりも、「商品開発の担い手になる」ということにインセンティブを感じている人が多いというお話が印象的でした。

この話を聞いて、「仕事で自分のアイデアが採用されたとき、先輩にご飯をおごられるよりも、『次も君と仕事がしたい』と言われたことの方が嬉しかった」と同期が話していたことを思い出しました。

金銭的報酬よりも、自分の力が認められ、必要とされることの方が嬉しかったということです。

また、前回の研究会では、生活者イノベーターに「どのようなプロジェクトなら共創に参加したくなるか?」ということを聞いたのですが、
その中で「アイデアを出すユーザーと、もらう企業」という関係ではなく、想いを共有し一緒にプロジェクトの成功を志す一つのチームとしての関係を築くことが大事だという話がありました。

「アイデア投稿サイトにどうやったら多くのアイデアを集められるか?」という企業の視点で考えるのではなく、生活者を自分と同じ商品開発のプロジェクトの一員としてとらえ、
「自分だったら何があるとモチベーションがあがるか?楽しく参加できるか?」と生活者の視点で考えることで、ユーザーとの共創のヒントが見えてくるのかもしれません。

次回のテーマは、ユーザーの参加動機と継続動機について

今回はアイデア投稿サイトの運営者の視点からその運営の成功のポイントをご紹介しましたが、次回は共創に参加するユーザーに焦点をあててお届けします。

甲南大学マネジメント創造学部准教授の青木慶先生、当ラボを共同で運営する法政大学西川英彦研究室の田中祥子さんをゲストにお招きし、
「ユーザーはなぜ共創に参加するのか?」「共創において良い結果を生み出すユーザーの参加動機とは何か?」についてお話しいただきます。

またレポートしますので、お読みいただけますと幸いです!
(ついでにフォローもいただけると嬉しいです!!)

★社内だけでの製品開発に限界を感じている方、ユーザー・イノベーションを自社で取り入れてみたい、と興味がわいた方は、ユーザー・イノベーション・ラボ事務局(uilab@hakuhodo.co.jp)までお気軽にお問い合わせください。

〈参考文献〉
1. Dahlander, L., & Piezunka, H. (2014). Open to suggestions: How organizations elicit suggestions through proactive and reactive attention. Research Policy, 43(5), 812–827.
https://doi.org/10.1016/j.respol.2013.06.006

 

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