宇禰 日和

  • 23本

無感覚なままで生きているんです。心躍る出来事のない生活というものがこんなにも単調でこんなにも平和的でそしてこんなにも穏やかなことを知りませんでした。わたしは、 声が出ているんでしょうか。 仕事はどうですか、と聞かれるたびにどう答えて良いのかわからずに笑う癖をお辞めなさいと、言ってあげたかった。泣くのを、堪えたまま、笑うのは、情けのない、気持ちになります。岩石みたいなチョコレートケーキで誤魔化して、どこまでも行けるのなら、どこまでも息のできる場所を探して行きたかった。何もできぬ

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反射板の夜

ピストルが合法の国にいたらとっくの昔のこんな夜に死んでいただろうと思う。 わたしは 努力ができずそのくせ良い結果ばかり求め折り合いのつかなさに死にたがり他人に求めないふりをして投げ飛ばす、くせに、抱きしめてとせがみ左腕、ばかりを撫でてわたしとあなたの間に区切りをつける / … // / 紙風船は潰れてしまうから やさしく手を当てなさい 強く叩くと潰れてしまうから やさしく叩きなさい 夕焼け小焼けで日が暮れて 山のお寺の鐘が鳴って からすが七つの子を生み育てても 帰り

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COVID-19

     適切な距離を保つ  物理的な距離の分だけ連絡が途絶えた  あの夜  首元にハサミを突きつけられて 「きみならいいよ」といった唇  責め立てる文章でしか話せないわたしの  唯一の受容する愛だった  のに  きみの見えない日々にやり切れなくて  別の人と口づけで交わる  髪を撫でてくれた夜の分だけ  何だって頑張れる気がしていた  少しずつきみを蓄えて  神様にだってなれる気がした  きみと同じ病で  数日違いの同じタイミングで  死ねるなら  それはとても希望だ

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ナウシカ

緊急事態宣言が発令された大型連休に乗換の地下道にいて、ただどこにいくあてもなくぼんやりと発車を知らせるアナウンスや、移動はおやめくださいという聴き慣れてしまった声を聞き流していた。どこにいけるあてもないのにポスターは渋谷にある老舗のカフェや新緑の鮮やかな京都を勧めてくる。どこにもいくことができないのに無人の駅に無人の電車が来て無人まま去っていく。 宛名を書き忘れた手紙みたいな人々が街にはたくさんいるんだろう。 出発点も目的地もないままずっと家に止まるだけのそこにあるだけの命、

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