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図書館で働いていた話(蔵書点検編)

図書館で働いていた話の続きです。


前回の内容はこちらから↓


図書館の仕事のなかでも、年に1度の大きな作業である蔵書点検について、思い出しながら書いていきます。

今回も私が経験した当時の、パート目線の内容になっていることを、ご了承ください。


図書館での蔵書点検とは

蔵書点検は、図書館内にある本や視聴覚資料(ビデオ・CD・DVDなど)のバーコードを1つ1つ機械で読み込んで、チェックしていくことです。

蔵書点検の主な目的

蔵書点検の主な目的は、大きく分けて2つです。

・決められた場所に資料があるかの確認
・行方不明本の確認

それぞれ、ご説明しますね。


◇決められた場所に資料があるかの確認

きちんと整理整頓をしているつもりでも、なんらかの理由で、あるべき場所に収められていない場合もあります。

あるべき場所に本がないと、利用したい人が困ってしまいますよね。

利用の少ない分類の書棚だと、ずっと気づかない可能性もあるため、蔵書点検は大切な作業です。

◇行方不明本の確認

行方不明本(ゆくえふめいぼん)とは、貸し出しの手続きがされていないのに、図書館内に無い本を指します。
あるはずの本が無いので、利用する人も図書館員も困る状況です。

本が行方不明になる原因の多くは、何だと思いますか?


一番多いのは、カウンターに寄らずに、勝手に持ち出してしまう人がいるからです。

あるとき、私が勤務する図書館からずいぶん離れた地域の路上に、行方不明本が捨てられていたことがありました。


ばく書とも呼ばれる

ちなみに、蔵書点検のことを、ばく書(ばくしょ)と呼ぶ人もいます。
漢字で書くと曝書です。

なぜ、そのように呼ぶのか図書館のプロである司書の方に聞いたところ、


・曝には「日にさらす、日にさらして乾かす」といった意味がある

・昔は本を書棚から取り出して、虫干しや風に当てることを、ばく書と呼んでいた



と、教えてもらいました。

そして目視で、図書台帳と現物の確認もしていたことから、現在でも蔵書点検を「ばく書」と呼ぶのだそうです。


蔵書点検の進め方

私が勤務していた図書館では、1~3月のいずれかの時期に、10日~14日間ほど休館して蔵書点検を行っていました。
貸し出しも完全にストップします。

返却は受け付けますが、貸し出しまで受け付けると書棚の中の本が頻繁に移動する状況になってしまい、しっかり点検できないからです。

どんな作業をするのか、順番にご紹介していきますね。


①作業する書棚の担当を決める

ベテランのパートさんが担当するのは、ほとんどが一般図書でした。数も多く、重い本や大きな本があるため、慣れている人のほうが作業しやすいからです。

私は絵本や児童書の担当でした。書棚の高さも低いので、台に乗らずに作業できます。絵本は小さい本も多く、初めての作業でもスムーズに進みました。

②書棚の本を倒す

ふだん書棚に縦に収められている本を、横に倒していきます。本の開く方を下にして、背表紙が上の状態です。本を倒すと、図書館で管理しているバーコードが見やすくなります。

ちなみに、私が経験した蔵書点検は昔のように、本の虫干しや風にあてるといった作業はありませんでした。


③機械でバーコードを読み込んでいく

ペン型の機械で、図書館で管理してるバーコードを読み込んでいきます。作業のポイントは、バーコードの読み込みが完了した本を、奥に押しこんでいくことです。次の本のバーコードが見やすく、読み込みやすいので作業効率が上がります。

作業中は、節電のために作業範囲だけ電気をつけていました。薄暗い館内に、バーコードを読み込んだときの「ピッピッ」という電子音と、本を押す「ガタガタ」という音だけが響きます。

会話をすることなく、黙々と作業していました。
視聴覚資料も同じように確認していきます。


④読み込んだデータの確認

ペン型の機械に読み込んだデータを、職員の方がパソコンに取り込みます。本が指定の場所にあるか、行方不明本がないかの確認です。
このときに職員の方は、貸し出し期限が切れているのに、返却されていない本などの確認もしているようでした。


⑤繰り返し作業

①と②は、すぐ終わるので、③と④をひたすら繰り返します。たまに小学生が「図書館の先生たち居る!何してるの?」と、外から大きな声で、話かけてきてくれるときがあります。
「お片付けしてるから、待っててね」と、やり取りするのは、ちょっとした癒しの時間でした。

利用の多い開架が終わったあとは、倉庫のような閉架に移って、同じように作業します。


⑥本の整理

すべての確認が終わったら、いつもどおり本を立てて並べます。書棚にきれいに本を並べ終わると「終わったぁ」と、安心感がありました。


蔵書点検を経験して思ったこと

以下の2点は、毎回感じていました。

・ホコリっぽい

・借りたまま忘れている人が多い

仕方がないことなのかもしれませんね。

◎ホコリっぽい

本にもホコリが結構ついています。

現在は返却されたときに本の表面を拭いて、衛生面に気をつけている図書館もあります。

蔵書点検にはマスクと手袋と、うがいは必須です。
私は蔵書点検の時期になると、ハウスダストアレルギーになっていました。

◎借りたまま忘れている人が多い

蔵書点検が終わった後には、返却期限が切れている利用者さんに「期限が切れているから返してね」といった内容のはがきを送ります。

結構、借りたまま忘れている人が多いんですよ。

忙しくて忘れている人や、紛失してしまったり捨ててしまったりと、理由はさまざまでした。

何年も借りたままの人もいて、連絡が取れないパターンも。

でも多くの人が「すみませんでした」と、照れ臭そうに返しにきてくれました。


図書館を大切にしたい


蔵書点検の期間中には、もっと細々とした作業もあるのですが、おおまかな流れを具体的に書いてみました。

蔵書点検は、本や視聴覚資料の状態を確認する大切な業務といえますね。

図書館の裏側を知っているからこそ、本や図書館を大切にしたいと感じています。

そのためにも自分の子どもに、図書館のルールを教えている最中です。ある日「ママ、としょかんは、シーだよね!」と話すようになりました。

鼻がつぶれるほど指を押し当てている姿に、思わず笑ってしまいました。

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