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中森明菜×小室哲哉の隠れ名曲〈愛撫〉攻めたタイトルの謎。

皆大好き、明菜ちゃん。もちろん私も大好き。

明菜ちゃんをはっきり認識したのは「飾りじゃないのよ涙は」の頃。まだ小学校低学年だったが、そのかっこよさと美しさにすっかりトリコになった。子どもながらに、新曲やデビュー当時からの曲を、覚えては歌っていた。
今でも、彼女の80年代のシングル曲はほとんど歌える。

90年代に入りテレビの歌番組が激減して、アイドル冬の時代になった。既にアイドルの枠を超えていた明菜ちゃんでも露出は減り、曲を耳にすることも減った。

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そんな中の1993年、高校生だった私は久々に明菜ちゃんの曲にはまった。「愛撫」という曲。

作曲と編曲は小室哲哉氏。聴けば「あー小室さん」とわかる、無機質でキャッチーで、スピード感あふれるサウンド。色気と情感あふれる明菜ちゃんワールドと、見事に化学反応が起こっていた。

明菜ちゃんの歌はキーも高すぎないので、意外とカラオケで歌いやすい(上手かどうかはさておき)。「愛撫」はすぐに、私のカラオケの十八番になった。

タイトルがタイトルなので、目上の人や男の子のいる所では自粛。気心の知れた女友達の前だけで、歌っていた。

作詞は、巨匠松本隆氏。それっぽい描写はあるけど詩的な美しい表現なので、妙なエロさはない。サビの「touch me touch me touch me through the night」のリフレインは、いかにも小室サウンドな中毒性があって、歌っていても楽しいし、友人たちも、普通に大人なかっこいい曲として聴いてくれた。

なんで「愛撫」なんてタイトルにしたんだろう。当時からの、ちょっとした疑問だ。

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例えば、私が友人にこの曲を薦めるとする。(以下架空の会話)
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友「明菜ちゃんやっぱりいいよね。ついyoutubeで明菜ちゃんの動画みちゃう」
私「わかるー私もみちゃう。いいよね・・・ねぇ小室さんが作った明菜ちゃんの曲で、いいのがあるんだけど。”愛撫”って知ってる?」
友「小室さん作った曲なんてあるんだ?きいたことないな・・・アイブ?英語?」
私「いや。えーとね、愛情の”愛”に・・・」
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薦めにくい。すっごく、薦めにくい。

小室哲哉さんで1993年といえば、小室ファミリー第1号ともいえるtrfが、あの「EZ DO DANCE」をリリースした年。
出始めの頃、コンビニの有線でたまたま「EZ DO DANCE」を聴いて、友人と会話したことを思い出す。(実際の会話)

友「この曲、小室哲哉が作ったらしいよ」
私「そうなんだー。小室さんっぽいね。なんかノリと勢いだけって感じ」
友「(笑)」
そんなことを言っていた。なんて小憎たらしい女子高生・・・

まさか「EZ DO DANCE」が、30年経っても変わらず親しまれる曲になるとは、思わなかった。
こちらを油断させて(?)親しみやすい曲を次々出し、いつの間にか取り込まれているのが小室サウンド。全盛期の小室哲哉、本当に恐るべしなのだ。私も友人もこの会話の数か月後には、得意げにカラオケでtrfを歌いまくっていた。

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話がそれたが、trfで思ったのが「親しみやすさは強い」ということ。
同じ小室サウンドの「愛撫」が、もっと違う、もう少し無難なタイトルだったら。

きっと、あえてこれにしたのだ。誰が決めたかはわからないが、アーティストとしての、何かしらの意思があったと思う。それも、明菜ちゃんらしくてかっこいい。
でも、あまりにも尖っている。

もっともっと大ヒットしてもよかった名曲なのに、タイトルがあまりにも攻めているために、もしかしたらどこかで、少しブレーキがかかってしまったのではないか、と自分の経験から、そんな風に思っている。


コロナ禍や多忙で何年もカラオケに行っていないが、久々に行きたくなった。「愛撫」も歌いたい。歌えるかどうか、一緒に行く人によるけど・・・


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