「ものつくりに必要なもの」・・・楽しんで作られたものはそれだけで楽しい。

映画やアニメに詳しい人なら知っていると思いますが、撮影に入る前、または原画を書き始める前に用意されるのが「絵コンテ」です。

絵コンテは、映画などの製作過程で作られる映像（カット・ショット）をスタッフと共有するために作られます。
どんな画面で、どんな照明で、背景や登場人物などがどう動くのか、などを示しています。
言うならば、映画の組み立て説明書ですね。

映画「カリオストロの城」絵コンテ集　宮崎駿著（1984年初版）は、
最近では珍しくなくなったアニメ映画の絵コンテ集のはしり。映画の全カットの絵コンテのみで出版された、おそらく世界最初の書籍（未確認です）。

私がこの本に出会ったのは、アニメーターをやっていた友人の家。本棚にあるそれを手に取った瞬間に魅了されました。当時すでにCMなどの仕事をしていて、絵コンテの作り方、重要性などは知っていたのですが、この絵コンテ集は衝撃的でした。「説明書」が、どんな小説よりもドキドキして楽しめたのです。

宮崎駿監督がこれを書きながら、ここで笑わせてやろう、ここで楽しませてやろう、ここではどっきりとワクワクを感じてもらおう、と企んでいるのが手に取るように分かり、ついつい引き込まれます。

当時、すぐに自分でも購入しようとしたのですが、知った時にはすでに売り切れ。本屋で聞いても再販の予定は無いとのこと。
仕方ないので、適当な用事を作っては友人宅に行っては見せてもらう、というのを何度も繰り返しました。彼にとっては随分迷惑な友人だったと思います。
その後、幻の本を手中に収めることは、数年後に始まったヤフオクで見つけるまで待たなければなりませんでした。

この本を手に入れて気をよくした若造の私が、「映像は絵コンテが全てだよ」「絵コンテで伝わらないとどうしようもないね」などと、分かったような事をほざいていいたのも、今思うと懐かしく恥ずかしい思い出です。

それでも、この本は１カット１カットの重要性、監督やスタッフが楽しんで作ることの意味を教えてくれました。
現在、色々な作品の絵コンテ集が発売され、比較的簡単に手に入りますが、この本以上に楽しめるものには、出会ったことがありません（注・当社比）。

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