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『3-2-5をどう止める?』はやぶさイレブンvsグラシア相模原

今回は恩師のご厚意でスタッフとしてベンチ入りさせていただいた神奈川県1部リーグの試合についてまとめていきます。また、この試合の中での怒った現象を基に更に深掘りをして、今後似たような現象が起こった際に対処できるように対応策を考察していきます。

両チーム紹介

6/26(日)に厚木市にある荻野運動公園ではやぶさイレブンvsグラシア相模原の試合が行われました。

グラシア相模原

私はジュニアユース、ユースとグラシア相模原でプレイしていました。今回はグラシア相模原の監督からこの試合のベンチ入りのお誘いをいただき、主に戦術面でサポートさせていただきました。グラシア相模原は相模原市を中心に活動しており、全カテゴリーにチームがあるクラブです。特に育成には定評があり、実際にトップチームのほとんどの選手がグラシア相模原の育成年代からトップに上がってきた選手で構成されています。この試合でもスタメンの8人がグラシアの育成年代出身でした。

私とチームメイトだった同級生や先輩、後輩がプレイしている姿はどこか懐かしさがありました。

そして、ホームチームのはやぶさイレブンは厚木市を中心に活動しており、昨シーズン神奈川県2部リーグから昇格し今シーズンから神奈川県1部リーグに所属しています。ここまでリーグ戦無敗で首位に立っているチームです。

チームには元プロ選手が在籍しており、浦和レッズや清水エスパルス、ザスパクサツ群馬などでプレイしていた永井雄一郎さんが選手兼監督を務めています。また元日本代表の水野晃樹選手や元Jリーガーの永里源気選手らも在籍しています。

素晴らしい雰囲気

今回ははやぶさイレブンのホームゲームということで、はやぶさイレブンが試合を開催するにあたって素晴らしい雰囲気を作ってくれました。スタジアムの外には屋台が出店しスタグルが楽しめました。

スタジアムの外の雰囲気

また県リーグでは人工芝での試合が多い中、今回は天然芝での試合でした。

試合内容

選手入場
キックオフ

前半

両チーム4-4-2のフォーメーションでスタート。前半のクーリングブレイクまではグラシアが高強度を維持して試合を優位に進める。グラシアは相手陣内に押し込むと短いパスを繋ぎゴールに迫る。前半6分に背後に抜け出したグラシアFWがはやぶさイレブンのCBに倒されてPKを獲得。このPKをしっかりと沈めてグラシアが先制に成功。その後もグラシアが高い位置でプレッシャーをかけてボールを蹴らせ、中盤でセカンドボール回収。ボールを相手陣内に運び、失うとネガティヴトランジションで即時奪回と試合を優位に進めた。

はやぶさイレブンは前半のクーリングブレイクまで右SHをインサイドに入れ、やや右SBが高い位置を取る右肩上がりのシステムで攻撃。はやぶさイレブンは右サイドで2トップの一角(25番)が抜け出してチャンスを作ったがあまり良い攻撃はできていなかったように思う。

前半のクーリングブレイクまではあまりチャンスを作らせなかった

しかし、クーリングブレイク後からグラシアの運動量がガクッと落ちる。また、はやぶさイレブンが右肩上がりのシステムから左SHの4番をインサイドに入れて左SBを高い位置に上げる左肩上がりのシステムに変更。

はやぶさイレブンの左肩上がりのボール保持

これによってグラシアの4-4-2の守備ブロックが攻略され、グラシアは右サイドでトラブルを抱える。下の図のようにグラシアの右SHが吸収される形となり、全体が重くなりカウンターが打てなくなる。

右SHが最終ラインに吸収されてしまう

こうなるとグラシアは2トップで起点を作りたいところだが、2トップの一角はボランチのケアで中盤に下りており、前線は1人しかいない状況でボールが収まらずに防戦一方に。

ボールを奪っても後ろに重たくカウンターが厳しい。

それでもはやぶさイレブンのサイド攻撃に対して粘り強く対応しクロスを跳ね返し、危険な場面では紙一重の対応で得点を許していなかった。しかし、前半終了間際に中盤で不用意なボールロストから4番の中央突破を許し失点。前半を1-0で終われなかったことは痛かった。

後半

後半もはやぶさイレブンのペースで試合は進む。グラシアはHTにあまり前から行かずに守備ブロックを作って対応すること、SHが守備時に下がりすぎないことを確認。はやぶさイレブンにボールを持たせてカウンターの機会を伺っていたグラシアだが、はやぶさイレブンが左右に揺さぶる攻撃が増えてグラシアの中盤が疲弊する形に。後半ははやぶさイレブンが両SBを高い位置に上げてきて特にグラシアの左サイドを中心に攻め込んできた。グラシアは押し込まれる形で5-3-2(5-4-1-1)のような陣形を強いられて、両SHは上下に動かされ、ダブルボランチは左右のスライドで体力消耗し苦しい展開が続いた。

はやぶさイレブンの左右に揺さぶる攻撃

すると、64分にはやぶさイレブンは左SHの4番がカットインから強烈なシュートを決めて勝ち越しに成功。個人的には「このままいくとやられるな」という感覚があり、それが現実となってしまった形だった。ベンチでも中盤で体力消耗が激しいことは察知していたので次の一手を考えていたところだった。

その後もグラシアは危ないチャンスを作られてしまったがぎりぎりのところで追加点は許さずに試合は進んでいく。

後半のクーリングブレイク後からははやぶさイレブンも運動量が落ち始めてグラシアがボールを持てる時間帯が増える。しかし、グラシアがビルドアップから前進のところで全体的に後ろに重たい配置になってしまいはやぶさイレブンの4-4-2のブロックの中に侵入できない。

前進に苦戦するグラシア

最後まで諦めずに戦ったものの同点ゴールを奪うことができずに敗戦。首位のはやぶさイレブンに対して善戦したものの勝点を奪えずに残念な結果となった。

・成績表

神奈川県1部リーグ成績表 (神奈川県サッカー協会)

・試合ハイライト動画


3-2-5をどう止める?

・5バック化

一番シンプルなのがSHを下ろして5バックにする事だと思います。下の図のようにサイドに誘導して盤面をロックして各1vs1の局面でボールを奪えると固い守備になると思います。

5-3-2の守備

しかし、中盤で運動量が必要な事と1vs1の局面で勝たないといけません。また最終ラインに5枚を並べるのでやや守備的な対応になります。

・4-4-2で逆サイド放置

4-4-2でいつも守備をしていて慣れ親しんでいるのであれば、そのままの陣形で守ることも可能だと思います。DFラインがボールサイド方向にスライドして逆サイドのSHは放置します。もし仮にサイドチェンジされてしまった場合はチャレンジ&カバーで対応します。

4-4-2の守備

この守備では基本的に片方のサイドで奪い切らないと逆サイドに展開されてしまい数的不利で苦しくなってしまいます。またゾーンディフェンスになるので各守備者の状況認知能力やコミュニケーションでマークを受け渡すことが重要となってきます。

相手の攻撃の形にとらわれることなく、4-4-2の陣形を維持しゾーンディフェンスを使ったやり方になるので攻守でバランスは取れると思います。しかし、組織的に守ることが必要になるので練度が求められると思います。

・4-3-3の攻撃的な守備

これは先ほどの4-4-2の守備の「逆サイドの相手SHを放置する」考えにプラスしてボールホルダーに対してよりプレッシャーがかける攻撃的な守備になります。ボールサイドのSHを前に飛び出させて相手CBまで前に出すことで、相手の3バックに対して3トップでプレスをかける形になるので数的同数で圧力をかけることができます。3枚前線にアタッカーがいるのでカウンターも打ちやすくなります。

4-3-3の守備

ただこれは諸刃の剣で中盤に広大なスペースを与えてしまうので特にダブルボランチの運動量とカバー範囲が鍵になります。また前線で数的同数となっていますが、中盤から後ろでも数的同数となっているので1vs1で抜かれるなどが起きた時に数的不利で後手に回る形となりリスクも大きい守備となっています。

今回紹介する対応策の中で1番攻撃的なディフェンスです。4-4-2から中盤を削って3トップになるのでカウンターは打ちやすくなりますが、守備時には各選手の対人の強さやボールハント能力が必要になってきます。

最後に

今回は素晴らしい環境の中でチームをサポートできたことは大変貴重な経験でした。やはり現場レベルでないとわからない部分や感じられないものが多いと思うので、ベンチに入って試合の雰囲気を体験できたことはありがかったです。

試合に関しては90分の中で相手チームとの駆け引きがあり、最終的には1-2で敗れる結果となりました。特にはやぶさイレブンが3-2-5気味で攻め込んできた時の対応策を私がチームや監督に対して明確にわかりやすく提示できれば良かったのですが、知識やアイデアがまだまだ十分でなく、伝える力も足りないなと力不足を実感しました。刻一刻とゲームは流れていってしまうので、瞬時に解決策を見出す力は必要になってくると感じた試合でした。

この試合から更に深掘りをして『3-2-5の止め方』というテーマについて3つの対応策を検討してみました。この3つの方法以外にも様々なやり方があると思いますが、今回は4-4-2の守備を基本に守備的、バランス、攻撃的に行くならどうするかという視点で考えていきました。実際に試合で起きた現象から更に深掘りしてゲームを考えることができると、1つの試合がより有意義なものになると思うので今後も試合の振り替りは欠かさずに続けることが大事だと思います。

また今回のようなケーススタディをまとめていければいいと思うので、今後も読んでいただけると嬉しいです。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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