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闘うDNA【ルヴァンカップ準々決勝2ndレグ】川崎フロンターレvs浦和レッズ

1stレグではホームのレッズが試合を優勢に進めたものの川崎も食らい付き1-1の同点で終了し2ndレグを迎えました。

ホームの川崎は1stレグでジェジエウと車屋が負傷し特に最終ラインで怪我人が多い状態です。一方のレッズはホームで逃げ切れずにアウェイゴールを許した中での2ndレグとなり絶対に得点を取らなければいけない状況でした。

レッズの準決勝進出条件
・試合勝利
・2点以上を取っての引き分け以上
・1-1で延長戦もしくはPK戦で勝利

0-0や試合敗戦はルヴァンカップ敗退です。


スタメン

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川崎は1stレグからメンバーを4人変更。1stレグでは左SBに田邊、左CBに登里でしたが、この試合では2人のポジションを入れ替えてきました。

レッズは1stレグのスタメンと全く同じメンバーで挑みました。ベンチにはユンカーや怪我明けの西が入りました。


試合内容

1stレグと同様にレッズが優勢に試合を進める。3分に高い位置でレッズがボールを奪い、汰木がクロスしたこぼれ球を関根がシュートするも枠を捉えられない。8分に岩波から江坂へロングパスが通り、江坂の巧みなコントロールからGKチョンソンリョンの股を抜くシュートが決まりレッズが先制。川崎は9分に高い位置でボールを奪い宮城がコントロールシュートを放つも僅かにゴールの右に外れる。17分に関根のクロスに汰木がシュートを打つもチョンソンリョンに阻まれる。上手くいかない川崎は32分に4-3-3から4-4-2に変更、すると試合は川崎ペースに。36分にCKから山村がヘッドをするもゴール左に逸れる。40分に家長のノールックパスに反応した小林がゴール前に折り返し、走り込んだダミアンがゴールに流し込み川崎が同点に追いつく。このゴールでトータルスコアでも2-2の同点となり、前半は1-1で折り返して勝負の後半へ。

ハーフタイムに川崎はジェジエウを投入。両チームしっかりとボールを握りながら攻めるもなかなか決め手を欠きゲームは均衡した展開に。65分に明本が左から鋭いクロスを上げるも中と合わない。69分に高い位置で川崎がボールを奪い途中出場の長谷川がダミアンとのワンツーからシュートを放つも岩波がブロックする。77分に左からの川崎のCKに山村がヘディングシュートを決めて川崎が勝ち越す。83分に再び川崎の左CKから今度はシミッチが頭で合わせて川崎に追加点が入る。直後の87分に途中出場の西がDFラインとGKの間にクロスを入れ、チョンソンリョンが弾いてジェジエウに当たり、流れたボールをユンカーが押し込みレッズが1点差に詰め寄る。あと1点取ればアウェイゴールで勝ち抜けとなるレッズはATに槙野を投入しパワープレーに出る。90+4分に左からのCKをファーサイドでショルツが折り返し、ユンカーがヘッド、チョンソンリョンが弾いたボールを最後は槙野が押し込み2戦合計4-4の同点に。その後、試合は終了しアウェイゴールの差でレッズが準決勝進出を決めた。

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・試合ハイライト動画


・試合スタッツ

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1+1=3

レッズはこれまでに中3日のようなタイトな日程で試合ではメンバーを入れ替えることが多かったですが、2ndレグも1stレグと同様のメンバーでした。非常に1stレグでのパフォーマンスが良かったことを考えると妥当だとは思いますが、メンバーを固定した理由の1つとして江坂と小泉のプレスが必要だったからだと思います。

・サイドへの追い出し
1stレグと同様に江坂と小泉の2トップが川崎のアンカーのシミッチを挟んだ状態からCBに向かってプレスをかけてサイドに追い出します。SBにパスが入った時にSHが寄せてサイドでハメるか、CBに蹴らせて回収するということが徹底されていました。

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2:23では江坂が田邊からボールを奪う場面がありましたし、8:33では全体的に前から上手くプレスをかけて宇賀神が登里が蹴ったボールを回収するシーンがありました。これら以外の場面でも前からのプレスで川崎に自由にビルドアップさせないことができていました。

レッズの前からのプレスに困った川崎はSBにパスを出すとハメられてしまうので、小林やダミアンにロングパスを送り込み前で起点を作ろうと試みました。

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11:18では山村のロングボールをダミアンが頭で擦らして背後に抜け出した小林がシュートをした場面がありました。普段の川崎ではあまり見られない攻撃パターンで川崎が狙っている形とは違うのかもしれませんが、ダミアンと小林の関係性だけでゴールに迫ることができるのは流石だなと感じました。

・2vs3→3vs3
江坂と小泉の2トップでなくても2トップがサイドへ追い出すプレスはレッズが今シーズン通して徹底して取り組んできた部分なので、他の選手でもできると思います。ただ、江坂と小泉の2トップだと2人で3人分のプレスをかけることができます。

どういうことかと言うと、下の図のようにCB間でサイドチェンジが起きた時にアンカーをマークしていたもう1人の2トップがボールホルダーにプレスをかけに行くと、マークしていたアンカーがフリーになりがちです。ですが、江坂や小泉はアンカーを消しながらCBにかけることが非常に上手なので、2トップvs3人(2CBs+アンカー)の状況で川崎の数的優位を相殺することができていました。

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江坂と小泉の2トップのアンカーをケアする意識がとても高くスムーズなビルドアップを許しませんでした。


王者の底力

・1stレグの再現
前半30分辺りまでは1stレグの再現かのようにレッズがボール保持し試合を優位に進めました。4-3-3でプレスをかけてくる川崎に対してレッズはアンカー脇を上手く使い前進しました。

下の図のように江坂が前線から下りてくることでシミッチが小泉と江坂をケアしなければいけなくなるので、マークをぼかすために中途半端な立ち位置を取らざるおえなくなります。そして岩波から縦パスが浮いている小泉へ縦パスが入る場面が沢山ありました。6:02のシーンでは江坂が下りてきたことでシミッチが小泉に食いつけずに小泉がフリーになったところから上手く前進することができました。

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また、この試合では積極的にサイドチェンジを使って上手く幅を使いながら攻めることができました。

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8分の江坂の得点の前に何回かサイドチェンジをしていたので川崎のDFラインの意識がワイドに向きました。その隙を見逃さなかった岩波が背後へ鋭いパスを送り江坂が抜け出して冷静に決めました。幅を使って相手の守備陣形を広げることとハーフスペースや選手間を突くような縦パスをバランスよく織り交ぜて攻撃することができていたと思います。


・ミラーゲーム
前半32分に川崎は4-3-3から4-4-2に変更しミラーゲームにして対抗してきました。するとそれまでレッズペースだった試合が一変し川崎ペースになりました。川崎が4-4-2にしたことでレッズはCBが強い圧力を受けるようになりビルドアップが上手くいかなくなり始めます。またレッズはこれまでに強いプレスをCBが受けた時にはGKの鈴木を使って打開するパターンを使っていました。川崎が4-3-3でプレスにきた際にはWGがCBまでプレスをかけた時にレッズのSBがフリーになるので、鈴木からの浮き球のパスでSBに預けることで回避していたのですが、4-4-2になったことでSBがフリーにならないのでプレスの打開方法をレッズは失いました。

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そして自陣に押し込まれる展開になり川崎の完璧な崩しで失点してしまいました。この得点シーンでも川崎が4-4-2に変更したメリットが出ていました。下の図のように右WGから2トップにポジションを変えた小林が抜け出したことで展開が変わりました。4-3-3の右WGであれば左サイドでプレーする機会はほとんどないのでこういった得点は生まれませんが、2トップに変わったことで左右で小林の動き出しが発揮される形となりました。

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レッズとしては小林とダミアンのところは警戒していたと思いますが、得点のシーンでは2トップに対して付いて行くことができませんでしたし、家長のノールックパスもDFラインが予想することが困難だったために対応が遅れる結果となりました。

川崎が4-3-3から4-4-2に変わったことで、レッズとしてはシステムの噛み合わせの部分でアドバンテージを出せない状態となり、川崎とフラットな状態でゲームを進めることになった訳ですが川崎に盛り返されてしまいました。システムを変更しただけでゲームの流れを変えることができるのは王者の底力だなと感じました。


伏線

・CKの課題
レッズはこの試合でCKから2失点してしまいました。この2失点に関してはレッズが前々から抱えていた課題が浮き彫りとなった失点でした。

川崎の2点目の山村のゴールに関してはレッズのウィークポイントを突かれた形となりました。下の図のように赤いエリアに脇坂がボールを入れてきたのですが、札幌戦でも中央のエリアから深井にヘディングシュートを決められるシーンがありましたしここのエリアの対応は課題としていました。

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レッズはCKの時にゾーンで守りストーンが1人、1列目に4人、2列目に3人が並び、ゴール前の中心部にCBsを配置し高さを出しています。ただ2列目のところで相手にやられるケースが多いのがレッズの課題です。酒井が加入し2列目に真ん中に酒井が配置されるようになってからかなり跳ね返せるようになりましたが、この試合は酒井が不在で以前からの課題を露呈してしまいました。

また2失点目の数分後に再びCKからシミッチに得点を許すわけですが、ここでも伏線がありました。2失点目の時はジェジエウがGK鈴木の進路の前に立っていたことで、鈴木の飛び出しが遅れ上手くジャンプできずに山村の高さにやられていました。3失点目ではGKの鈴木が出づらくするためにジェジエウと小林で鈴木の進路を塞ぐように配置したことで、鈴木がボールにチャレンジすることができませんでした。元々、鈴木のセットプレーの処理は課題ではありましたが、レッズのCKの選手の配置も問題があったかなと思います。セオリー的にはGKの前に相手が選手を置いた場合は、守るチームもそこに選手を配置してGKの進路を防がせないようにするものですが、3失点目ではレッズの選手は誰も配置されませんでした。CKの対応については改善が必要な部分かなと感じました。

・右SB
後半からレッズはボランチが下りて最終ラインに加わり、下の図のように左右非対称の4-1-5でのビルドアップが多くなりました。川崎はボールを奪いに来るときはSHをCBまで前に出して圧力をかけてきますが、そうでない場合はハーフスペースを埋める意識が強かったです。レッズは川崎が4-4-2でプレスをかけてくるので、2トップを剥がして前進できるように微妙に立ち位置を変化させました。最終ラインのところで上手く角度を作り、ボランチへのパスコースを確保して前進することができました。

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川崎は前半の終盤と同様に前からのプレスで試合の流れを掴みたかったと思いますが、後半のレッズの修正によってレッズがボールを握る時間帯が長くなったと思います。

川崎の2トップは最初はプレスに行く姿勢を見せていましたが、運動量が落ちてきたこともあり、なかなかハメることができないのでボランチをケアしながらブロックすることが増えました。レッズはハーフスペースやサイドチェンジを活用して攻め込みましたがラストパスが味方に合わないシーンが多く攻めあぐねていました。敵陣に押し込んだ際に右SBがフリーになることが多かったですが、宇賀神は鋭いクロスや決定的な仕事することが上手い選手ではないので停滞感があったと思います。

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そこで34分にレッズは西を投入し巻き返しをはかりました。87分のユンカーの得点のシーンでも左サイドのハーフスペースで小泉がボールを受けて中央へドリブルしたことで、中央をケアする意識が強い川崎の右SHの長谷川が絞って対応してきました。その結果、右サイドに広大なスペースが生まれ、フリーの西が駆け上がってきました。西から鋭いクロスがDFラインとGKの間に送り込まれたことで事故的にユンカーにこぼれてきました。右SBのところが空いてくるという伏線を見事に回収した得点でした。このゴールで試合の雰囲気をガラッと変えましたし、絶体絶命だったレッズを勇気づけるゴールでした。


最後に

何とも劇的な試合で言葉では表現できないものがありました。正直、自分は川崎に3失点目を許した時は諦めてしまいましたが、レッズの選手やコーチ陣は諦めていませんでした。サッカーは何が起こるかわからないと改めて認識させられる試合でした。

槙野も試合後のインタビューで闘うDNAについてコメントしていて、まさに闘うDNAが引き寄せた結果だと感じました。

(先日、リカルド ロドリゲス監督が「このチームの中に闘うというDNAができつつある」と言っていた。今日はまさにそういう試合だったと思うし、そう感じられる瞬間が増えていると思うが、槙野選手から見てどうか?)
「一番感じられるのは、試合を戦うに当たって、タイトなスケジュールでメンバーが変わりながらですが、普段のトレーニング、ピッチの中で起きた課題を修正して、次の試合に向かっていくということが11人だけではなくて、試合に関わるメンバー全員でそれができているところは、闘うDNAが見られるところだと思います。

何よりも夏に加入した選手たちが複雑と言われるリカルド監督の戦術を理解し、すんなり入れていることが間違いなくチームを向上させている要因だと思っています」

引用:ルヴァンカップ 準々決勝 第2戦 vs 川崎「劇的ゴールで準決勝進出!」(浦和レッズオフィシャル)

パワープレー要員として投入された槙野は元々FWで攻撃が大好きな選手ということもあり、しっかりと仕事をしてくれましたし、この試合に向けて良い準備をしたことが伺える集中力でした。また、ビハインドになってからのショルツのボールを運び上がるプレーやセットプレーでのシュートや折り返しの質の高さは攻撃面でも能力が高いことを証明していたと思います。また平野がゲームを上手くコントロールして緩急を加えたボール保持ができていましたし、平野がいることで小泉がボランチの位置まで下りる必要がなくなることもレッズとしては大きいと感じました。他の選手も素晴らしいパフォーマンスでまさに全員で掴んだ勝ち抜けだったと思います。

とは言え、川崎には試合として見た時には勝つことはまだできていないので、リーグ戦で決着を付けたいところです。過密日程の中で上手くやりくりしながら戦い、とても充実した結果が付いてきたことはチームとしてプラスだと思いますし、ここから更に勢いに乗って残りの試合をものにしていってほしいです。

代表ウィークも終わり再びリーグ戦が再開です。次節はアウェイで横浜FCとの対戦で、中断期間にかなり補強を行いレベルアップしていることが予想されます。ACLに出場するためには絶対に落とせない一戦となるので、選手を信じてサポートしましょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。



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