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3つの守備【天皇杯4回戦】京都サンガvs浦和レッズ

天皇杯も4回戦となり、残るは16チーム。ベスト8をかけて京都(J2)と浦和(J1)がたけびしスタジアム京都で試合を行いました。

前回の相模原戦を何とか勝利したレッズの相手はJ2で2位に付けている京都でした。京都は今シーズンから曺監督を招聘しここまでリーグ戦15勝6分3敗と素晴らしい結果を残しています。レッズは中3日での1戦となりますが、直近の鳥栖戦で勝利した勢いでこの試合も躍動したいところです。

スタメン

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京都は中3日でリーグ戦を控えていることも考慮してかサブメンバー主体のメンバー構成。古巣との対戦となる李はCFで先発、レンタル移籍中の荻原はベンチスタートとなった。

一方のレッズは直近のリーグ戦からメンバーを2人変更。宇賀神と関根が先発となった。レッズは江坂をIHに置く4-3-3(WGの立ち位置次第で4-5-1)を採用。


試合内容

試合開始から両チーム激しくプレスをかけていきなかなかボールが落ち着かない展開。15分にレッズは左からのCKのチャンスで大久保の蹴ったボールを岩波が頭で押し込み先制する。すると徐々にレッズがボールを保持する時間を長くする。31分には江坂のクロスに槙野が頭で合わせるが京都GK清水のファインセーブ、こぼれ球を岩波が詰めるが清水にキャッチされる。前半はレッズが1点リードで折り返す。

後半も両チーム選手交代は無し。52分に明本が背後に抜け出し体をぶつけながらボールをキープ、ドリブルで持ち込みシュートを放ったが枠を捉えられない。徐々に1点ビハインドの京都がペースを握り始める。京都は後半途中からイスマイラ、川崎、松田、荻原など主力を続々と投入。87分にゴール前の混戦から京都の荒木がシュートを打つもゴールのわずかに上に外れる。90+4分には荻原のスルーパスに反応したイスマイラが右足を振りぬくもボールはゴールの右に外れる。京都の猛攻を凌いだレッズが1-0で勝利し、準々決勝進出を決めた。

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・試合ハイライト動画


3つの守備

リカルド監督が試合後のインタビューで3つの守備をやったと応えていたので今回は3つの守備について考えていきたいと思います。

(再開明けから右サイドの関根貴大選手と江坂 任選手が入れ替わって守るなど、人基準で守っているように見えたが、新しい守備のやり方にトライしているところがあるのか?)
今回の試合で言えば、試合中に3つほどの守り方をやったのですが、関根や江坂の立ち位置が変わったのは、おそらく攻撃の立ち位置で少しポジションが変わっていたので、入れ替わった場所でディフェンスをしていただけだと思います。大事なのは自分たちがどういうディフェンスをするのかをしっかりと把握して、仮に攻撃で立ち位置が入れ替わっていたとしても、そのままディフェンスをすることだと思います。そういった形がおそらく、違ったやり方に見えたのかなと思います」

引用:リカルド ロドリゲス監督 京都戦試合後会見(浦和レッズオフィシャル)

正直なところレッズの守備はかなり柔軟に選手が入れ替わるのでリカルド監督が言う3つがどの守備を指しているのかわかりません。ですのであくまでも個人的な推測になりますが考えていこうと思います。


①ニュースタイル

・前からのプレス
前からプレスをかける時はこれまで見せてきた4-4-2に近い陣形でプレスをかけていました。関根が右WGなのでやや右からのスタートとなり、レッズの右から左サイドに追い込んでいくような守備をしていました。

2トップが京都のアンカーを挟み、タイミングを見計らってサイドに追い込んでいきます。基本的に京都のCBの視野が十分でない状態(身体が前向きではなく横か後ろの状態でプレスをかけていらように感じました。)この時の2トップは明本+関根or江坂で立ち位置次第で柔軟に決めていました。

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プレスに出る時は関根が京都の左SBを消しながら追い込みをかけ始め、CB間でパスが渡ると明本が京都のアンカーへのパスコースを消しながらプレスをかけます。大久保は絶対に奪えるというような状況であれば京都のCBまでプレスに行けるようなポジショニングを取ります。

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札幌戦でも後半から4-3-3に変更してSBを消しながらCBにアプローチをかけるプレスをかけかたをしていたので、今回も似たようなプレスのかけ方だったと思います。

・守備ブロック
1番の新しい変化は自陣に押し込まれた際の4-5-1での守備ブロックでした。これまでレッズは押し込まれた時に4-4-2のブロックを作って対応していましたが、この試合では4-5-1で守っていました。

中盤が4枚から5枚に増えたことで"門"と呼ばれるようなレッズの選手間への縦パスを封じることができていました。特に京都は4-3-3の3トップが中央に絞り両SBが高い位置を取るボール保持の体型をしているので前線への縦パスを警戒する意味もあったと思います。

この4-5-1のブロックが非常に効果的で京都はなかなかバイタルエリアにボールを入れられないような状況が続きました。試合を通じてほぼほぼ下の図の赤いラインの選手間にはパスを通されるシーンが無かったと思います。

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そして縦パスを引っかけたり、ボールを奪うとレッズの両SH(大久保と関根)が駆け上がり、明本も動き出します。レッズは意図的に京都のCBの脇のスペースを狙ってボールを送り込んでいました。

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前半アディショナルタイムの45:00+2:30の場面では4-5-1の守備で上手く奪ってからカウンターというような理想的な流れをつくりました。江坂と酒井で上手く挟み込んで奪ってから関根が背後に飛び出してチャンスを迎えました。


②慣れ親しんだ守備

2つ目の守備は65分に大久保に代わって田中が入った辺りだと思います。江坂を前に出し4-2-3-1のような形にして、守備では4-4-1-1(江坂と明本が横並びになれば4-4-2)で守っていました。この変更があまり上手くいかなかったので意図が分かりづらいのですが、個人的には「もう少しボールホルダーへのアプローチをかけること」と「前線にもう一つ起点を作ってボールを保持したい」というような狙いがあったのではないかなと思います。

しかし、この変更によって中盤の選手間(特にSHとボランチ)の距離が広がり縦パスが入りやすくなってしまいました。また京都も川崎が投入してから上手くCBと三角形を作りながらレッズのプレスを回避してパス回しをしてきました。その結果レッズは更に押し込まれる展開となります。

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江坂と明本が縦関係で並ぶことが多かったですが、横関係になるともう少しボールホルダーに対して圧力をかけられたのではないかなと感じました。またイスマイラが入ってからディフェンスラインの重心が後ろになりライン間にスペースができ始めたことも縦パスが入るようになった原因かなと感じます。ですので一概に4-4-2の守備ブロックはダメだという訳ではないと思います。


③守備固め

試合終盤、京都の猛攻に押し込まれていたレッズはショルツを最終ラインに加えて5-4-1にします。これは明らかな守備固めだと思いますが、なかなかライン間への対応とイスマイラへの対応に手こずっていたので良い修正だったと思います。

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最初ラインが5枚になったことでライン間で受けた選手に対しても1枚が飛び出して対応し残りの4枚でカバーするチャレンジ&カバーができていました。イスマイラは依然として脅威でしたが結果的に無失点で守り切りました。


最後に

今回は3つの守備について考察していきました。特に4-5-1(4-3-3)での守備ではSHのポジショニングがとても繊細なものになるのでタイミングや状況によって正確な判断が問われます。また自陣からスペースに出て行くことも求められるのでとても重要な役割になると思います。この試合で先発した関根や大久保はとても守備で奮闘しましたし、また江坂も本来はもう少し攻撃的なタスクの多い選手ですが中盤の選手として役割を果たしていました。怪我人や選手の入れ替えなどでまたチームのスタイルをリフォームしているような状況ですがしっかりと結果が付いてきていることはとてもポジティブだなと感じています。まだまだ相手を圧倒して完勝するような力はないかもしれませんが粘り強く戦い、着実に1戦1戦成長をしているなと感じました。

4-5-1ではどうしてもCFがボールをキープしたり前で起点を作らないと押し込まれてしまいますが、今のところ明本が十分すぎる働きを見せてくれているのがこのシステムを可能にしているとか思います。ですが確実に疲労は溜まっていくので連戦が続く中でリカルド監督がどのようにマネジメントしていくのか気になるところです。

守備以外にも平野の散らしや縦パスは非常に効果的でしたし、ボランチがなかなか前線にパスを供給できないような試合も多くあったので良い補強をしたのではないかなと感じました。酒井はぬかるんだピッチを感じさせないプレーぶりでしたし、伊藤もIHとして積極的に飛び出す姿勢がありました。疲労もあるとは思いますがコンディションも上がっているのかなと感じました。まだ連戦が続くのでしっかりと体を休めて次に備えてほしいです。

今回は試合の翌日のレビューということで内容が薄めですがご了承ください。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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