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共闘【Jリーグ】柏レイソルvs浦和レッズ

前節湘南ベルマーレに逆転負けを喫したレッズはアウェイで柏レイソルと対戦しました。

レッズはリーグ戦3試合勝ちがなく、柏もここまで18位と低迷中でリーグ戦7試合勝ちがない状況でした。両チームともに久しぶりの勝利を手にし勢いに乗りたい一戦でした。

スタメン

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柏は前節の広島戦からメンバーを2人変更。左SHに瀬川が入り、2トップはイッペイシノヅカがアンジェロッティとコンビを組んだ。

レッズは前節の湘南戦からメンバーを9名変更とターンオーバーしてこの試合に臨みました。2トップの興梠や武藤、右SBの宇賀神、GKの西川は久しぶりの先発。CBのデンは今シーズン初めてのリーグ戦先発となった。


試合内容

前半から両チームのスタイルが出るサッカーを展開します。レッズが短いパスを後ろから丁寧に繋ぎながら攻めるのに対し、柏はロングボールで前線に放り込む対照的な戦い方。5分に関根が抜け出してシュートチャンスを迎えるが、柏のDFが戻りシュートを打つことはできない。18分にデンのクリアを拾った瀬川がシュートを打つも枠外に。27分に興梠のパスから汰木がシュートを打つもわずかにゴールの右に外れる。43分には山中のクロスから武藤がボレーシュートを打つも上手くミートできない。徐々にレッズが攻勢を強めたがゴールを決めることができずに前半は0-0で折り返す。

後半もレッズがボール保持し攻勢を強める展開。49分には興梠がGKと1vs1になるが決めきれない。点が取れないレッズは60分に興梠と武藤を下げて小泉とユンカーを投入。すると直後のプレーでユンカーがシュートを放つもディフェンダーに当たり枠外へ。62分に山中のクロスのクリアボールを拾った関根が落とし宇賀神がゴール左隅に突き刺し、ついにレッズが先制する。80分には左CKを柴戸がシュートしゴールにねじ込んで追加点を奪う。試合終了間際にはユンカーに決定機がくるが決められず。試合は2-0でレッズが勝利した。

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・試合スタッツ

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・試合ハイライト動画



モダンvsクラシック

柏のサッカーを一言で表すとすれば『クラシック』だと思います。レッズのような立ち位置やシステムの可変で数的優位を作るモダンなサッカーとは対照的に攻守で個人の質を重視することが多いことが特徴です。

・ノーガード
柏はレッズのビルドアップに対して4-4-2の陣形で守りました。柏の守備に対してレッズは左右でアンバランスな形でビルドアップすることが多かったです。左サイドでは山中が内側に絞り、汰木が幅を取ります。右サイドでは宇賀神が山中に比べるとやや低めのポジションを取り2-4-4もしくは3-3-4の形でビルドアップしました。しかし、この形では柏の守備とのズレがなく、噛み合う形になるのでなかなかフリーでボールを受けられず、柏の個の質を重視する守備の前に前半の飲水タイムくらいまで前進することに苦労しました。

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なかなか思うように前進できないレッズは飲水タイム以降ハッキリと修正がありました。ビルドアップ時には3-1-5-1のシステムになり、最終ラインを2CBs+ボランチ(主に伊藤が岩波の左に落ちる形)の3枚で形成し、両SHがハーフスペースに入る形で絞り、両SBがサイドの高い位置を取りました。これによって柏の4-4-2の守備陣形とズレが生まれ、プレスを回避してフリーでボールを受けられるようになりました。

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『ズレ』を作ることができるとレッズのペースになります。柏の守備はこれまでは「人に対して守る守備」だったので、そこにズレが生じると柏の守備に不安定さが出始めました。

特にレッズは左サイドからの攻撃が増え、伊藤(敦)が2トップの脇から持ち運んだ時にクリスティアーノの対し2vs1の状況を作れます。クリスティアーノも迷いながらプレスする形となり山中に良い状態でボールが入る回数が増えました。

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山中に預けてそこからクロスという流れはこの試合で再三見られた形でしたが山中のクロスに対して中の動きが合わないような場面が多くなかなかシュートまではいけませんでした。

柏もハーフタイムで微調整を加えてきました。4-4-1-1の形で守るようになりレッズのボランチ(この状況では柴戸)に対してマークを付けてきました。しかし、レッズにとってはこれまで通り2トップの脇から前進すれば良いだけなので、ビルドアップに特に影響はありませんでした。

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63分に宇賀神のゴールが決まり先制するまではいくつか決定機がありながら決めきれない嫌な流れでした。しかし、ビルドアップは安心して見ていられましたしアタッキングサードに侵入するというところまでは上手くいったと思います。クラシックに4-4-2で対応してくる相手に対してはボールを握るという面ではレッズの「位置や配置で数的優位を作って攻める」モダンなサッカーが上回る面が多かったと思います。


今回は普段出場機会の少ない選手が多く先発起用となりましたが、評価が難しい試合となりました。柏の山下が投入されるまでは柏の守備はほぼ『ノーガード』状態でレッズのビルドアップに対して特別な対策がないように見受けられました。ですので、ボール保持はできましたし試合をコントロールしていたと思います。

個人的に危惧しているのは柏が山下を投入し5-4-1で守るようになってからのレッズのビルドアップです。70分以降はほとんど自陣からビルドアップで前進するというシーンを作れず、ロングボールを蹴らされることが増えました。

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特にデンはこの試合で良いパフォーマンスを見せていて、デンからのサイドチェンジなどはチャンスを作っていましたが、プレスを受けるようになるとなかなか相手のプレスを3CBs+ボランチで剥がしてから前進するプレーがなくなりました。

フリーでボールを持っている選手が安定したプレーを見せることはもちろん大切で評価できますが、プレスを受けた時や相手の守備とズレがない時にボールを保持している選手が落ち着いてボールを繋げなくなったことは評価を難しくする要素でした。

・データ
ポゼッション率も前半の飲水タイムまではほぼ五分五分でしたがそれ以降はレッズがボールを握り、シュートも増えました。またヒートマップを見ても飲水タイムの配置変更で左サイドで数的優位を作り攻めていたことがわかります。

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また後半もレッズがボールを握る展開が続いた中でレッズの得点後から徐々にポゼッション率が下がっていることがわかります。これは柏が5バックに変更してきたことで、レッズのシステムと噛み合う形となり前進することに苦労したことがわかります。

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・戦術オルンガ
柏のサッカーは良くも悪くもクラシックなので、DFから中盤をスキップしたロングボールを送り込み、前線の選手のクオリティー任せという攻撃が目立ちました。

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昨シーズンまでいたオルンガがいればこの攻撃はとても脅威になりますが、オルンガほどのクオリティーを出せる選手がいなかったのでレッズとしては楽にボールを回収することができました。

特にレッズのボランチには柴戸と伊藤(敦)というセカンドボールへの反応が速い選手が揃っていたのでしっかりとロングボールのこぼれ球を回収することができました。


興梠の苦悩

レッズサポーターが今か今かと待ち侘びていることが興梠の復活だと思います。ですが、ここまでリーグ戦に13試合出場して僅かに1点のみと活躍しているとは言えないのが現状です。

興梠が活躍できてない原因にはコンディション面や試合感というようなことが考えられますが、興梠のタスクも不調の原因だと思います。

去年までのレッズは興梠に依存したサッカーを行っていて、興梠が前線から下りて起点としてゲームを作り、そしてゴール前で仕事をする『攻撃の全権を担うタスク』を行っていました。特に「下りて起点となるプレー」は昨シーズンなかなかボール保持できないレッズにとっては欠かせないものでした。

しかし、今のレッズは選手の配置や立ち位置にある程度決まり事があり、前線の選手が下りてこなくてもビルドアップができるように設計されています。そこに興梠が昨シーズンのように下りてきてプレーに関わることで逆に上手くいかないということが起きてしまっていることが現状です。

この試合でも伊藤(敦)がボールを持った時に興梠がハーフスペースに下りてきて受けるような場面がありました。

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このプレーに対して柏の高橋(裕)が食いついてくれれば背後が空くので、武藤や汰木が走り込むスペースを作る意味で効果的です。

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しかし、高橋(裕)は食いついてこなかったので背後にスペースはできませんでした。そして興梠が下りることで汰木が使いたかったハーフスペースを潰してしまう形となり、中盤で選手の渋滞が起きてしまいます。

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リカルド監督に指示を受けたのか前半30分以降からは興梠が下りてボールを受ける回数が減り、最前線でDFラインと駆け引きすることが多くなり、レッズの攻撃が上手くいき始めました。

今のレッズサッカーではCFに求められることは最前線で起点となることであり、昨シーズンの興梠が行ってきたタスクとは異なります。ユンカーのプレーを思い浮かべばわかりやすいと思いますが、あまり中盤に下がらずに常に相手のCBと駆け引きするようなタスクです。簡潔に言えば去年のFWよりもタスクが少なく、CFのタスク(最前線でプレー)に専念することが求められます。

また、興梠とユンカーのプレー比率とプレー回数を見てみるとユンカーはアタッキングサードや敵陣30m以内、PA内でのプレー数が興梠よりも多くなっていることがわかります。出場時間から考えてもユンカーはより最前線に留まり、興梠は広範囲に動いてプレーしていることがわかります。

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この求められるプレーの違いが興梠の苦悩を生み出しているのかなと感じました。

ただこの試合でも背後への抜け出しの上手さは目立っていました。22:42の汰木のスルーパスに反応した場面や49:32のデンからのスルーパスに抜け出して決定機を迎えたシーンなど、あとは決めるだけというような場面も作っていたので徐々にですが求められていることの整理ができてきたように思えます。


レッズのCK

・攻撃
80分にCKから柴戸のゴールが決まり試合を決定付けました。レッズは毎試合左と右のそれぞれ最初のCKは必ずデザインされたCKを用意していることが特徴です。またそれ以外のCKも狙いを持って取り組んでいます。

この試合で言えばレッズはニアを執拗に狙っていました。山中から鋭いボールをニアに送り、ニアで変化させてゴールに押し込むような狙いがこの試合では顕著に表れていました。柴戸のゴールもニアに飛び込んだ金子がボールをスルーしてファーサイドでフリーになっていた柴戸が押し込みました。

今シーズンのレッズのCKは相手を分析した上でしっかりとデザインした攻撃を用意しているので非常に期待が持てるCKになっていると思います。ぜひ毎試合の最初の左右のCKに注目してみると面白いと思います。


・守備
レッズはCKの守備時は全員が戻ってゾーンディフェンスで守ります。そして配置が決まっていてニアポストに1人、ゴールエリア上に5人が並び、その1列前のファーサイドに2人、残りは相手の攻撃を見てマークを決めます。

そしてレッズがCKでピンチになることが多いのが「ニアで相手にボールをすらされて変化したボールがゴール前に入ってきた場合」「ファーサイドへのボール(特にアウトスイングでゴールから離れていくボール)」です。

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この試合でも76:55のCKで大南にヘディングシュートを受けました。幸い失点にはなりませんでしたがゴールになってもおかしくない場面でした。

シーズン開幕当初はゴールエリアに4人が並び、その1列前には3人または4人が並ぶ形をとっていたと思いますが、どの試合からかは不明ですがより危険なエリアに人数を増やした形に変更していました。ゾーンディフェンスを採用している以上、勢い良く飛び込まれるとどうしても競り負けることが多くなるのは仕方がないのですが、先にニアサイドでボールを触られてしまったり、ファーサイドで競り負けてヘディングされることが多いのが現状です。今後この2つの場所へのボールを送り込んでくる相手はいると思いますし、レッズが注意しなければならないポイントだと思います。


最後に

個人的にこの試合で「恐さ」みたいなものを感じました。決定機を決めれない恐さやレッズの選手から漂う油断みたいなものを多少感じました。試合内容でもレッズが上回った試合だと思いますがサッカーではそういった試合でも勝点を落とすことがあります。前節の湘南戦ではまさにそのような展開でした。この試合でも得点を奪った後に76:25ではデンのクリアミスから瀬川の決定機がありました。失点はどこから生まれるかわからないので、いま一度ハングリー精神を忘れずに戦ってほしいなと感じました。

それと同時にしっかりと勝ちに相応しい内容で勝ち切れたことの意味も大きいと感じました。この試合では思い切ってターンオーバーしましたが、まさに全員で戦い勝ち取った勝利だと思います。勝利に値する試合でしっかりと勝つ、全員で勝点3を手に入れたという点ではとても素晴らしい結果になったと思いました。

また試合内容、結果でも柏を上回れたのではないかなと思います。柏の守備に対してレッズの選手達が適切な立ち位置を取れていたので、潤滑にボールが回っていましたし決定機も作りました。特にダブルボランチの攻守での貢献度は素晴らしかったと思います。柴戸はもちろん安定したプレーをしていましたが、伊藤(敦)が攻撃ではテンポ良く繋ぎリズムを作り、守備では相手の芽を摘む働きをしていて充実したプレーでした。普段出場機会の少ない選手たちも安定した戦いぶりで試合の流れを作っていましたしトータルで見てもポジティブな要素が多かったと思います。

次節は前回負けているアビスパ福岡との一戦です。レッズが前回からどれだけ成長しているかが伺える試合になると思います。

ここまで読んで頂きありがとうございました。


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