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音楽教育を守る会とJASRACの裁判における7つの争点について

JASRACと音楽教育を守る会の裁判について、東京地裁の判決が出ましたのでそちらの所見を述べる動画です。

7つの争点についてですが1から3についてはまだ意義があったように思います。ただ、4から7については勝つつもりが全く感じられない内容で、主張の幼稚さそのものに違和感を覚えます。

音楽教育を守る会によってアップロードされた判決文と共にご視聴いただけましたら幸いです。
https://music-growth.org/common/pdf/200228_02.pdf?fbclid=IwAR08alUhLuLvu7dICD-W-qiSJXVIzb68VwUF5zqwhgHK4U66Fd633Kb9vuA


・争点1 確認の利益の有無

 音楽教育を守る会の一部参加者は徴収の対象ではないからこの裁判自体を起こして得られる「確認の利益」は無く裁判は無効とするJASRACの主張が取り下げられました。

 まぁこれは判決にある通り、今の所徴収としない方針について法的な効果はなくJASRACのさじ加減の問題なので、確認の利益は個人の教室にも存在すると言ってよいと思います。

・争点2 生徒は公衆か否か

 まず公衆か否かを判断する前に前提条件として音楽教室の利用主体は誰なのかについての確認が必要です。が、これはカラオケ法理で明らかなように商売を営む音楽教室側です。
 
 著作権法においては場合によっては一人でも公衆扱いとなるため当然これは公衆です。興行が不評な結果お客さんが一人しか入らなかった場合など、結果として一人となるケースもありますので。
 
 音楽教育を守る会は22条の立法経緯で「教室という閉鎖空間~」を持ち出していましたがここで言う教室はざっくり言えば学校教育における教室です。自称教室と学校の教室は全くの別物で詭弁と言わざるをえません。

・争点3 聞かせることを目的とした演奏か否か

 本裁判の目玉となる争点です。まず裁判所側は「お手本を示す」という事実をもって聞かせる目的があるのは明白としています。
 
 さらに音楽教室側が主張した「聞き手に官能的な感動を与えることを目的とする演奏」は公衆が居ない事を前提とした一文で、生徒は公衆であるという結論がある以上音楽教室側の主張は認められません。22条とも齟齬が出るため却下されました。
 
 仮にこの意見が採用されたとしてもヤマハ、カワイ共にパンフレットに「官能的な感動を与えることを目的とする演奏」に該当するキャッチコピーを掲載しており、そもそも勝ち目が無かった主張と言えます。

 とはいえ、一応ここまでは法律を読んだだけでは解らない部分でもあったのは事実かと思いますので、意義のある争点だと思います。問題はここから先……。

・争点4 二小節以内の演奏には演奏権が及ぶのか否か

 見た瞬間我が目を疑ったんですが、音楽教室における二小節以内の演奏は短いので何の楽曲を演奏しているか特定はできない。と言う主張です。
 
 そもそも最初からこの曲をやりますとやっている時点で商業的な利用であることは明らかです。さらにカラオケ法理が適用される問題ですから、教師が弾こうが生徒が弾こうが演奏主体は音楽教室です。生徒が二小節しか弾かないという事はあり得ません。
 
 二小節で短いから解らないという様な事もなく、ドレミの歌なんて二小節で十分にわかりますし著作権は切れていません。1曲で簡単に反証が出来ます。
 
 何よりも二小節以下の楽曲はどうするのか。ゲームを触る人にはおなじみだと思いますが、二小節未満のジングルだって立派に楽曲です。ドラクエの宿屋に止まった時の音などは一小節です。二小節が短いから曲が解らないなどと言う主張は以上2つの事実からしても認める余地はありません。

・争点5 教材には演奏権が含まれているか否か

 音楽洋室側の主張としては「譲渡される際に、複製権のみならず演奏権の対価も含めて使用料を徴収する機会が有る」とのことですが、当然の話ですが、含まれていません。もうこれは素直に法律を読めばわかる話です。演奏の権利と複製の権利は別に定められているんですから。
 
 楽譜購入時に支払い済みという根強いデマの一つですが、見直せばわかるような話でかつ、勝ち目のない話をなぜわざわざ争点にするのか……。

・争点6 録音物の再生の権利はレッスン参加者が有する

 という主張です。購入したモノの再生の権利を有するのは所有者と言う話と、演奏権の話を意図的に混在させてますよねと。
 
 さらには演奏権と複製権は全く別の権利であるという点については争点5で示されている通りですし、これも普通に法律を読んだら解る話です。わざと負けようとしてないかを疑うレベル。

・争点7 教材作成時や発表会で著作権料を支払い済み

 要すればボりすぎということなんですが、こんなもの食券やガソリン、レンタカーなどと同じなんですよ。前買ったんだから今回は無料にしろなんてまず通りません。
 
 制作に必要な部品と燃料の供給元が同じで、部品代を支払い済みなのだから燃料代をタダにしろと同じ意見で、常識的に考えて認められない主張です。
 
 知的財産の利用はいわばライセンス契約です。異なるライセンス内容については都度契約が当然で、発表会、レッスン、教材制作はそれぞれ別のライセンスなんですから、他のライセンスで支払っているのに請求してくるのは権利の濫用とする主張はあまりにも世間知らずと言うか……。

・総括

 前々から主張していますが、これは値上げ交渉です。で、争点4以下を見るに本当にわざと負けようとしていないかと疑うレベルの内容で頭を抱えました。
 
 特にヤマハは今までいくつ楽譜を作って来たのか、コンサートを開いてきたのか。演奏権と複製権の支分権が異なることぐらい実務レベルで嫌と言うほど理解しているはずですし、負けると解り切ったものをわざわざ争点に追加してくる時点で別の目的があるでしょうと。もちろん値上げ交渉は自分の個人的な見方にすぎないので事実かどうかは不明ですが。
 
 控訴し高裁になるという事は、今音楽教育を守る会に賛同し名を連ねている方々は、この争点に対する主張へ賛同したという事になります。1審までは良く解っていなかったで言い訳もききますが、これ以降は著作権が本気で解ってない音楽家が運営していますと主張するに等しい裁判です。その宣言は自らの手で看板に大きな傷を入れる行為に他なりません。
 
 早めに手を引いた方が良いのではないかと、個人的には考えます。

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