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「須藤蓮との出会い③」(須藤蓮①)~【連載/逆光の乱反射vol.3】

『逆光の乱反射』は映画『逆光』の配給活動が巻き起こす波紋をレポートする、ドキュメント連載企画です。広島在住のライター・小説家の清水浩司が不定期に書いていきます。
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興行収入の数字とニラメッコしていたときは、尾道から公開をスタートさせることがすごく不安だったんです。去年公開された『ワンダーウォール劇場版』を引き合いに出すと、尾道と広島の上映に来てくれたお客さんを足しても数百人で、そこであがる利益を考えてもスタッフ数人が東京~広島を移動したらなくなってしまうような金額で。そこから逆算するとプロジェクトが小さくなっていくのが当然なんだけど、でもそれって今の映画業界が陥ってる問題でもあると思うんです。東京にいて数字だけで見ると、尾道・広島にはそれだけの価値しかないかもしれない。だけど実際に尾道・広島に来て、そこにいる人たちと会ってコミュニケーションをとってみたら、そこで生まれる熱量や拡がっていく可能性はそんな数字の中にはなかったんです。

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今回たくさんの方々とお会いして、やっぱりすごく面白かったんですよ。最初は不安で、「この映画のことわかってくれるのか?」って思うような人でも、実際会ってコミュニケーションをとってみたら作品を好きになってくれて、「何か手伝いたい」って熱く言ってくれる方がたくさんいる。
そこには悔しい想いを抱えてる人がたくさんいたんです。たとえば僕は東京を出たことがなかったから、地方に住む人たちの気持ちがわからなくて。こうして「地方」って言われることにもウッとなるとか、映画の中であるキャラクターが自分のことを「田舎の女」って卑下するところがあるんですけど、そこもすごく「わかる」って言われて。そういう地方の人たちの悔しい想いって、今の映画業界が切り捨ててきた部分だと思うんです。でも僕はそこにこそ、本当の可能性が残ってるような気がするんです。
今回の6日間の旅で、僕は机上の空論の中身が見えたと思ってます。批判もたくさん受けたけど、批判してる人も僕らがやろうとしている試み自体はウェルカムだったりするんです。「この映画、クソ面白くない」って言った同世代の男の子が、「でも尾道から発信していくことは応援したい」って1,000円カンパしてくれたり。それってすごく多様で豊かな反応だと思いません? 僕は「映画が好きだからカンパする」みたいな空気を思い描いてたけど、でも世の中はそんな単純ではないというか、もっといろんな見方がある。それが知れたのがよかったし、もしかしてそれが一番やりたかったことかなとも思うんです。

取材は時間にしてわずか30分。そこから須藤は広島駅へと急ぎ、新幹線に飛び乗って消えていった。本当に一瞬の嵐のようなファースト・コンタクトだった。

まず、尾道・広島で種は蒔かれた。その後、映画『逆光』のシネマ尾道での公開が7月17日(土)、広島・横川シネマでの公開が7月22日(木)と決まった。

この時点で公開まで、あと4ヶ月。『逆光』という強い光を浴びて、さまざまな場所で乱反射がはじまった。

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映画『逆光』は現在、配給活動を支援するためのクラウドファンディングを行っています。↓ ↓ ↓ ↓ ↓


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